★【全文】原専務理事が4年間を総括

▽JFA(日本サッカー協会)は24日、2014年度の第8回理事会記者報告会を開催し、原博実専務理事がブラジル・ワールドカップに臨んだ日本代表を総括した。

▽原専務理事は、日本代表の総括を、南アフリカからの4年間、ブラジル・ワールドカップ、ロシアまでの方針、新監督人事の4項目に分けて説明。

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▽JFA(日本サッカー協会)は24日、2014年度の第8回理事会記者報告会を開催し、原博実専務理事がブラジル・ワールドカップに臨んだ日本代表を総括した。

▽原専務理事は、日本代表の総括を、南アフリカからの4年間、ブラジル・ワールドカップ、ロシアまでの方針、新監督人事の4項目に分けて説明。また、ハビエル・アギーレ氏を新監督に招へいした理由も明らかにした。以下、総括の全文。

◆原博実専務理事
「7月1日に技術委員会を開き、色々な検証を行った。また、その後もBSGグループといって、日本以外のグループを見ていた人たちとも、ある程度の発表ができる部分まで(意見を)すり合わせている。それは、技術委員会や強化担当者会議、Jリーグに対しても口頭で説明した。また、今日の理事会ではプロジェクターなどを使って説明している」

「この場でも簡単に説明するが、南アフリカワールドカップ以降の4年間、それから準備期間も含めたブラジル・ワールドカップ、そして今後のロシアに向けてどのようにやっていくかの3つに加え、それを踏まえて次の日本代表をどのように考えて、どのようにやっていくのかという4つを大きなテーマに据えて総括している」

「まず2010年の南アフリカ。ご存知のように、日本はカメルーンとデンマークに勝って2勝1敗で決勝トーナメントに進出し、パラグアイにPK負け。当時のコンディションなど、その時の状況を鑑みると、あの戦い方やスタイルは仕方ない。それを否定するものではないと思っている。ただ、あの時はチームとしての課題と共に、個人技術も上げなければいけないと感じた」

「優勝したスペインや、ベスト4に入ったオランダ、ドイツ、ウルグアイと比べると、明らかに個人技術、狭いスペースにおける止める、蹴る、判断力、ボールを奪う能力などが足りなかった。そして、奪ったボールを素早く展開し、奪い返されないで攻めきる。そのチャンスを逃がさない。そういった課題が出た」

「その他にも、前回の反省点に、アタッキングエリアで仕掛ける回数が少ないというものがあった。もっとアタッキングエリアで仕掛ける回数を増やさないと上にはいけないという結論に至った。加えて、シュートを含めたキックの精度をもっともっと上げる必要があるというのが、当時の技術委員会の検証で出てきた」

「今後、日本代表がどうやっていくべきかといったときに、あの(南アフリカ)ワールドカップの戦い方を継続していくことが良いとは思わない。ベスト4に入った強豪国というのは、その国のスタイルといったものを持っている。ということで、当時の戦い方を育成年代からやりますか? といったときに、もっと日本の技術や瞬発力や持久力を生かしたサッカーをやっていくべきだという結論に達した。たとえ時間がかかったとしても、次の4年間はそういうサッカーをやるとなったなかで、次の指導者は、日本よりもレベルの高い国の代表監督を経験しているか、クラブレベルならヨーロッパのトップレベルでやっているか、南米ならリベルタドーレスカップなど、高いレベルを経験している監督を連れてこようという話になった」

「また、日本の良さなどを十分に理解したうえでやってくれる監督ということで、数名の監督と話をして、ご存知の通りザッケローニ監督と合意した。その中で、彼と話し合ってやってきたのは、日本人の良さを生かすということ。それを全面に打ち出すなかで、多くの日本人が海外に出て行き、海外のチームでも活躍するようになった。そういった選手たちを生かしながら、自分たちが主導権を握るサッカーをやっていこうという方針でやってきた」

「2011年のアジアカップはぶっつけ本番に近い状況だったが、苦しみながらも優勝し、(ワールドカップの)アジア予選ではホームであってもアウェイであっても、ある程度は自分たちの形、スタイルを出し、ボールを保持ながら戦うことはできた。例えば、北海道で韓国に3-0で勝った試合などを見ても、日本の良さが出ているなと感じた」

「また、ヨーロッパでプレーする選手が増えことで逞しさが出てきたことは事実だと思う。その一方で、コンフェデではブラジルに敗れ、イタリア戦では良い試合を演じながら、結果的には勝てない勝負弱さがあった。そして、メキシコにも勝てなかった。それは事実だ」

「その後、ヨーロッパの中でもビッグクラブでプレーする選手が増えてきたが、同時にレギュラーとしてプレーする機会も少なくなった。あるいは、激しいシーズンを送る中で負傷した選手が増えてきた。それは、海外でプレーするメリットとデメリットが同居する選手が増えたということ。その中で上手くやりながら東アジアカップを迎え、そこから柿谷や青山、山口、森重、齋藤といった新しいメンバーが入ってきたというのが、最初の4年間になる」

「そこからワールドカップに向けた期間がスタートした。我々も皆さんと同じく、もっとできたという思いはあったが、結局はあのような結果(1分2敗でグループステージ敗退)に終わってしまった。なぜ、あのような結果になったのかというと、色々な要素が重なり合っていたと思う」

「まず、イトゥにベースキャンプ地を置いたことに関しては、(完成が)間に合うのかという心配はあったが、環境に関しては良かったと思っている。距離が遠くて移動が大変だったというのは事実だが、抽選の前にベースキャンプ地を決める必要があった。抽選が終わってからになると、他の国が決めたあとに残ったところから選ばなければならない。場所は悪くなかった。涼しく、回復にも適していた。あるとすれば、試合開催地への入りが前日だったこと。移動には約5時間を要したが、できるだけイトゥにいる時間を長くしたいということで、前日入りになった。そういったことも影響したとは思うが、それだけが理由だとは思っていない」

「先ほども触れたように、大きな負傷を負った選手が3人いた。ヨーロッパでプレーしていない選手もいた。それと、コンディションの面では、指宿でかなり追い込んだが、1シーズンをフルに戦ってきた選手たちは、もう少し休ませた方が良かったかもしれない。先ほども触れたが、大きな負傷から復帰し、数カ月間プレーしていない選手たちは、ある程度良いコンディションになったと思う。その反面、ずっとやってきた選手には負荷が強すぎたかもしれない。Jリーグもワールドカップで2カ月中断するため、その前のスケジュールは非常にタイトだった。ACLの移動もタイトで、それぞれがコートジボワール戦を100%に近い状態で迎えることが難しかった部分はある」

「走行距離など色々なデータを集めてみると、それほど悪い数字ではないが、実際に生で見ている感じでは、良いコンディションで入れなかったなという印象。それから、自分たちのサッカーをやろうとしたが、それは相手に合わせないでやろうとした。ただ、冷静に判断すると、コートジボワールの前線などは個の能力が非常に高かった。自分たちのサッカーをやろうという部分と、相手をリスクペクトして合わせるところのバランスが、もしかすると崩れたのかもしれない。そういった中で、雨が降ってきてピッチ状態が悪くなり、相手との力関係、悪くなかったとは思うが、1点とって変わるかなという部分が、それほど変わらなかった。そのままドログバが出てきて1点を取られ、そのまま2点目も奪われてしまうところ。自分たちのサッカーをやろうと思ってできないときに、アルゼンチンやオランダ、ドイツといったチームは、悪いなりに踏ん張れて、相手のリズムでも耐えていた。その中でリスタートやカウンターなど、戦い方を変えて流れを変えていた。そういった部分が足りなかったと思う」

「これだけがいけなかったという理由はないと思っている。2戦目のギリシャ戦でも、10人になってからの方が難しい状況になった。なんとなくボールを回しているだけで、前にボールが入らないという部分もあったと思う。あそこで思い切った仕掛けや、これまでやってきた外で2対1で崩すといったことを徹底的にやりたかったというのが正直なところ」

「コロンビア戦には、あそこまで来たので自分たちの力を出し切ろうという気持ちで臨んだと思う。PKをとられながらも追いつき、ギリシャが1-0で勝っている状況で、ハメス・ロドリゲスが出てきた。もう少し経験があれば、中心選手である彼が出てきたときに、点をとらなければいけない中でも1-1で80分くらいまで抑えつつ、状況を見ながら戦うこともできたと思う。そういった力が足りなかった。結局、ハメス・ロドリゲスが出てきて10分ほどで点を取られてしまった。そこで勝たなければいけないので前に出ると、やられる形になる。そういった駆け引きも含めてまだまだだった。それはコロンビア戦だけではなく、そこまでの流れも含めて言えること。まだまだ力が足りないとは思っている。そういったことも含め、ロシアに向けてどうするのか」

「この4年間、ザッケローニ監督を招へいし、自らアクションを起こして戦っていくというなかで、できた部分もある。アウェイでフランスに勝ったときも、良い試合ではなかったが、受身にならずにやれた部分もあった。オランダやベルギーとの試合では、ピッチもコンディションも良く、そういった状況であれば、親善試合とはいえ強豪国と張り合うこともできた。日本人のストロングポイントであるテクニックを、スピードに乗った中で出せるときは良かったと思う。ワールドカップでは力を発揮できなかったが、香川がスピードに乗りながら仕掛けていったときや、長友がそこに絡んだり、その流れの中で岡崎が飛び出したり、あるいは本田がゴール前に絡んだときは良い形ができていたし、そういった形は続けていくべきだと思う」

「すぐにアルゼンチン人やドイツ人のような体型になれるかといったら、それは不可能。その中で、日本人の良さを継続して出していきたい。ただ、先ほども言ったように勝負強さや駆け引きといった部分が足りないことは確か。コンディションが良くて色々整えばベスト16に入ることはできるかもしれない。しかし、現状のままではベスト8やベスト4に常時入っていく力はない。(本大会で)アジアが結果を残せなかったのは、アジアのレベルがヨーロッパや南米やアフリカに比べると、環境が甘い部分はあるのだと思う。それをどうするかといっても簡単にはいかないので、日本は日常の中で、普段のリーグ戦の中で色々なことを変えていかなければいけないと思う」

「例えば、今大会で優勝したドイツは代表も強いが、ブンデスリーガも盛ん。例えばプレミアリーグは世界最高のリーグだと思うし、お金も凄い額が動いているが、イングランド代表はなかなか強くならない。ドイツにはバイエルン・ミュンヘンのようなチームもあるけれど、代表とブンデスリーガ、そして育成、指導者養成のバランスが上手くいっているのだと思う。代表だけを強くすることは難しい。今回のワールドカップで思ったのは、代表だけを強くするのではなく、協会も成長し、プロクラブも強くなり、育成にも力を入れる必要があるということ。ヨーロッパは、トップチームと同じカレンダーでアンダー世代の代表も試合を行うし、クラブもチャンピオンズリーグのところで育成のチームも試合をする。育成や指導者養成をどうやって行っていくかが今後の課題」

「今回のワールドカップは今までのワールドカップよりもレベルが高かったと思う。ただ、戦術的というよりは、4年に1度の大会ということで、国を背負った中でのプレッシャーや、一つひとつの競り合いが激しかったという印象。そういった部分が日本は足りない。選手に聞いても、普段のリーグ戦よりも当たりが激しく、普段は抜ける部分も抜けないと言っていた。それに耐えられる選手を増やさないといけない。メンタル面も含め、ワールドカップはその国のサッカーの総合力が問われる。マスコミも含め、サポーター、育成、リーグの力など、どこか弱いところがあると、ガタガタっと崩れてしまう。それは今回のブラジルにも言えることかもしれない」

「日本がこれからどうするかというと、私は今回の経験をカンファレンスやテクニカルニュースで発信し、いかにJリーグに伝えていくか。あるいは審判と一緒になって、育成年代からフェアプレーの中で激しい試合をやっていくか。指導者もポゼッションだけでなく、ゴールにシンプルに向かっていくようなプレーを増やしていく必要がある」

「今回の結果に関しては、本当に申し訳ないという思いでいっぱい。色々なところで今回のような説明をしながら、次につなげていきたい。色々とまとめてはあるが、もっともっと細かくやらなければいけないし、来年もカンファレンスがあり、指導者養成の部分にも還元していきたいと思う。同時に、新しい監督も決めなければいけない。その中で、日本人の五輪代表監督をコーチに入れてもらいたいということは絶対条件にした。それは五輪のアジア予選の方式が変更したこともある」

「監督に関しては、日本人がダメだとは思っていないが、海外でプレーする選手が多い状況のなかで、彼らにも色々なアドバイスができて、Jリーグもしっかりと見てもらえる。ザッケローニ監督のときと同じように、クラブや代表での経験が豊富な人のなかで、日本の良さを理解してくれる人に当たってきた。情報は常に持っていて、日本に興味を持っていて、なおかつフリーな人と交渉してきた」

「その中でハビエル・アギーレと合意に達し、理事会でも説明した。ワールドカップは選手として一度、コーチとして一度、監督として二度、計四回ワールドカップを経験している。気持ちが強い人なので、日本の良さも引き出してくれると思う。その中で、粘り強く、たくましいチームにしてくれると思う」

「オサスナをチャンピオンズリーグ圏内に持っていったり、サラゴサやエスパニョールを残留に導いた。そして、チームから選手が引き抜かれても立て直せる。日本に適した監督だと思っている」

2014年7月24日(木)23:45

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