★【日本サッカー見聞録】会長選でのシーズン移行の公約

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▽原川の劇的ゴールでリオ五輪の出場権を獲得したU-23日本。残すは韓国との決勝戦だが、ここ1~2年、日本は男女を問わず「優勝」の2文字から遠ざかっているだけに、韓国を撃破して勝利の美酒を味わいたいものだ。

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▽原川の劇的ゴールでリオ五輪の出場権を獲得したU-23日本。残すは韓国との決勝戦だが、ここ1~2年、日本は男女を問わず「優勝」の2文字から遠ざかっているだけに、韓国を撃破して勝利の美酒を味わいたいものだ。

▽それにしても決勝は日韓のライバル対決、そしてリオ五輪の残り1枠を争う3位決定戦はイラクvsカタールという対戦カードとなった。決勝戦以上に痺れる争いが繰り広げられることは間違いないので、明日の試合が楽しみでならない。

▽さて今週のコラムは先週に引き続き、JFA(日本サッカー協会)の会長選についてレポートしよう。田嶋JFA副会長と原JFA専務理事の2人が立候補した会長選は、31日に75名の評議員による投票で決まる。2人のマニフェストで大きな違いがあったのは、Jリーグの開催時期だった。

▽ただ、21日のシンポジウムでは、両者ともトーンダウン。田嶋JFA副会長は「選挙のための公約ではない。10年前から考えていた」とし、「あくまで議論をスタートさせましょうということ」と説明。一方の原JFA専務理事も「シーズン移行は常に(Jリーグの)将来構想委員会でやっている。移行を検討していないわけではない」と反論した。

▽田嶋JFA副会長は、8月に開幕して5月に終了するシーズン移行のメリットを次のように訴えた。

「FIFAは9~11月の各月に必ず2試合、インターナショナルAマッチデーを組み、5~6月は試合がない。W杯予選の盛り上がりが秋に来てJリーグの優勝争いと重なる。(移行すれば)日本代表の活動がない4~5月にリーグの終盤戦を迎えられる。ACLは中東勢にシーズンを変えてくれと言っているが、2018年までは変えられない。2017年から2019年の3ステージを経て2020年に移行する。2020年の東京五輪も6月開催なので、学校やACLも考えて(移行の)議論を始めるべきだ」と改革を提言した。

▽これに対し、Jリーグの監督や技術委員長を歴任して現場を知る原JFA専務理事は移行の難しさを次のように説明した。

「FIFAのカレンダーは決まっている。問題はACLのカレンダーが決まらないこと。移行したら、リーグ終盤の4月にACLのグループリーグが入ってくる。一番の問題は12月で、クラブW杯と天皇杯がある。(移行しても)12月のカレンダーをどうするかが問題になる。さらにホームスタジアムが自前でないクラブは、(8月開幕の5月終了では)翌年J1かJ2かも分からないため、(スタジアムを貸し出す行政の新年度が始まっているので)スタジアムの予約も難しい」と訴えた。

▽両者のマニフェストを聞いて感じたのは、現場でカレンダー作りに苦慮している原JFA専務理事が「言い訳」めいて聞こえるのに対し、直接Jリーグに関与していない田嶋JFA副会長は「提言」をしているため、新鮮な印象を与えることだ。理事会の投票でも田嶋JFA副会長は19票を集めたのに対し、原JFA専務理事は9票にとどまった。副会長と専務理事という立場の違いもあったのだろうが、「攻め」の田嶋JFA副会長に対し、原JFA専務理事は「守勢」だったことは否めない。

▽ただ、2人のマニフェストは強化・育成にしてもシーズン移行にしても、目新しいものではない。2人ともJFAの役員で、技術委員長を歴任しただけに、似て来てしまうのは仕方のないことだろう。その2人に共通していたのは、今回の会長選のシステム改革だった。

▽75人の評議員の投票で決まるのは理解できる。だが、その前に28人の理事よる投票で会長候補を選ぶ必要があったのかどうか。事前の投票で優劣がつけば、それが評議員の投票にも影響を与えかねない。評議員7名以上の推薦で立候補の資格を得て、あとは評議員の投票で決めた方がすっきりしている。

▽果たして31日の投票ではどちらが新会長に選ばれるのか。手倉森ジャパンの快進撃で影の薄い会長選だが、こちらも日本のサッカー界にとっては重要な出来事だ。


【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

2016年1月28日(木)13:50

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