★【原ゆみこのマドリッド】決勝が続いている…

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▽「向こうはバーベキューで、こっちは社会科見学?」そんな風に私が驚いていたのは金曜日。お昼のニュースで先週末にリーガが終わってから、28日のCL決勝に向け、ずっと練習を続けてきたマドリッドの両雄の近況を知った時のことでした。

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▽「向こうはバーベキューで、こっちは社会科見学?」そんな風に私が驚いていたのは金曜日。お昼のニュースで先週末にリーガが終わってから、28日のCL決勝に向け、ずっと練習を続けてきたマドリッドの両雄の近況を知った時のことでした。いやあ、レアル・マドリーはモウリーニョ監督時代もアンチェロッティ監督時代にも、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場施設のテラスでバーベキューをやっていましたし、週が変わってからは天気も好転。春をすっ飛ばしてもう初夏と言っていい感じになってきたため、ジダン監督が土曜日に予定されているカンテラ(下部組織)との練習試合の後、選手たちの家族も招待して、決戦に挑むチームを慰労しようと思ったのは別に不思議ではないんですけどね。

▽そのミラノでの対戦相手となるアトレティコの方は、うーん、これは気質の違いですかね。選手たちがトレーニングだけの毎日に飽きるのを心配して、水曜日、木曜日はマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場ではなく、そこから車で20分ぐらい離れたラス・ロサスのスペイン・サッカー協会の施設でセッションを実施。おかげでスペイン代表の仕事で訪れたデル・ボスケ監督と、シーズン後半の好調ぶりで期待されていながらも代表復帰が叶わなかったフェルナンド・トーレスのニアミスがあったなんていうのはともかく。金曜日には練習後、選手全員がバスに乗ってペイネタを訪問し、まだ改装真っ最中の2017-18シーズンからのホームスタジアムをヘルメット着用して見学って、今の時期に必要なことだった?

▽いえ、キャプテンのガビも「La cicatriz de Lisboa es algo que no se olvida en la vida/ラ・シカトリス・デ・リスボア・エス・アルゴ・ケ・ノー・セ・オルビダ・エン・ラ・ビダ(リスボンでの傷跡は一生忘れられない)と認める2年前のCL決勝では、後半アディショナルタイム3分にセルヒオ・ラモスが起死回生の同点ゴール。「追いつかれた時、ボクらには勝負がかなり厳しくなったとわかっていた。体力的な問題もあって、苦しい思いをするとね」(ガビ)と、そのたった1週間前にバルサとの死闘を制してリーガ優勝を決めたばかりだったアトレティコがフィジカル面でハンデがあったことを反省の糧として、3週間も準備期間がある今回は、彼らも体力強化に余念がないんですけどね。

▽中には、そのラモスのゴールシーンを「No lo he visto, nada. No me gusta verlo, y entonces no lo veo/ノー・オ・エ・ビストー・ナーダ。ノー・メ・グスタ・ベルロ、イ・エントンセス・ノー・ロ・ベオ(全然見てない。見るのがイヤだから、見ないんだ)」と、これって一種の現実逃避でしょうかね。敗戦後、ビデオで守備の問題確認もしていないコケのような選手もいるため、全員が全員、しっかりしている訳ではないんですが…。今週は決勝前に士気を上げようというのか、公式戦終了後は一刻も早く休暇に入りたいとでもいうのでしょうか。

▽水曜日にはサウールが2021年まで契約を延長。違約金に8000万ユーロ(約99億円)という高値をつけて、変な虫がつくのを防いでいましたし、翌日には6カ間の負傷からリーガ最終戦で復活を遂げたチアゴとも来季の契約を結び、更にはガビ、グリーズマン、そしてトーレスと、皆がペイネタに行けるようにしようと、このところ、クラブのフロントは大忙しだとか。

▽おまけにその間を縫って、土曜日のCL決勝前恒例のオープン・メディア・ディ(公開練習、監督や選手の会見、インタビューがある)が終わった後、シメオネ監督はリスボンで良くない経験でもしたんでしょうかね。1泊2日でミラノへ飛び、チームが宿泊するホテル、金曜日に練習する施設、そして会場のサン・シーロを視察してくるって、もしかして一番、今週退屈していたのはシメオネ監督だった?

▽ただ、2月末に負けたリーガダービーの教訓から、今度は「No nos ganarán en intensidad/ノー・ノス・ガナラン・エン・インテンシダッド(プレーの激しさでウチに勝つことはないだろう)」と、ジダン監督が今週ずっと、フィジカル重視で鍛えていたマドリーでもヒマを持て余していた選手はいたようで…。火曜日にはイスコがスポンサーイベントに出演した後、深夜のバラエティ番組を梯子。目隠しサッカーみたいなゲームをしたりして楽しんでいたんですが、訊かれた決勝の結果予想に「La vamos a ganar 2-0 al Atlético/ラ・バモス・ア・ガナール・ドス・セロ(アトレティコに2-0で勝つ)」と答えるとは、先発入りがほとんどありえない身としてはかなり大胆だったかも。

▽うーん、何となく両チームとも体力強化に力を入れている今週の風景を見ると、昨今のダービーはゴールも少ないため、0-0で延長戦、更にPK戦なんて可能性もあるかもしれないと、私なんかは思ってしまうんですけどね。GKオブラクなど、「en los últimos dos años me han tocado tres y creo que ya es bastante/エン・ロス・ウルティモス・ドス・アーニョス・メ・アン・トカードー・トレス・イ・クレオ・ケ・ジャー・エス・バスタンテ(ここ2年で3回もあって、もう十分だと思う)」とPK戦は歓迎してないよう。となると、コケ曰く「引いてカウンターを狙ってくる」はずのマドリーから、トーレスなりグリーズマンなりがゴールを決められるといいのですが。

▽え、CL決勝よりもっと先ではあるものの、今週はユーロ行きのスペイン代表招集リストも発表されたんだろうって? そうなんですよ。最初にちょっと触れたんですが、火曜日にデル・ボスケ監督が選んだ暫定メンバー25人にはトーレス、元アトレティコのジエゴ・コスタ(チェルシー)も入らず。しかも予選で常連だったパコ・アルカサル(バレンシア)まで落選して、CFがアドゥリス(アスレティック)とモラタ(ユベントス)しかいないという、非常に珍しいものに。その他、代表歴の長いマタ(チェルシー)やカソルラ(アーセナル)らの名前が見当たらなかったんですが、今月末の最終リストに残るかどうかはわからないものの、マドリーのルーカス・バスケスとアトレティコのサウールが嬉しいサプライズ招集されています。

▽ただねえ、CLもそうですがELも決勝が今週水曜日でしたし、この週末には各国カップ戦の決勝もあるため、招集された25人が代表合宿初日の来週月曜日に集まれる訳ではなく、木曜日からのオーストリアのシュルンスでのキャンプにもこのリストからはたったの8人しか参加できず。そのため、11人の選手たちがヘルプメンバーとして呼ばれているんですが、最初2つの強化試合(29日ボスニア・ヘルツェゴビナ戦、6月1日韓国戦)では、本大会に行かない選手が中心になってプレーしないといけないとはこれまた如何に。いくら決勝に残るようなクラブに所属する選手ばかりの代表とはいえ、ライバルたちに準備状況で後れを取ってしまうのは3連覇を目指すスペインには不利な要因ですね。

▽そして今週はその決勝ラッシュの最初の1つがあったんですが、いやあ、またセビージャがやってくれました。そう、水曜日のバーゼルでは39分、スタリッジに先制点を奪われ、崩壊寸前までリバプールに追い詰められていたにも関わらず、ハーフタイムにエメリ監督の「Pensad que estais jugando en el Sanchez Pizjuan/ペンサッド・ケ・エスタイス・フガンドー・エン・エル・サンチェス・ピスファン(サンチェス・ピスファンでプレーしていると思え)」というアドバイスが見事に的中。今季、リーガでもELでもアウェイで1勝も挙げてないコンプレックスを忘れた選手たちが発奮すると、後半開始から1分もしないうちにマリアーノのラストパスを受けたガメイロが同点弾を決めてしまったから、オープン放送がなく、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で見ていた私もビックリしたの何のって。

▽それどころか、63分にはビトロと連携した右SBのコケが、その日はMFとして起用されたのを利用。弾丸シュートで見事な勝ち越し点を挙げているんですから、やっぱりこれはヨーロッパリーグではなくてセビージャ・リーグ? 更にコケが69分にも敵DFに当たって自分の前に来たボールでGKミニョレを破り、3点目をゲットすると、オリジ、ベンテケを投入して最後はFW4人で反撃したクロップ監督のチームでしたが、好きこそ物の上手なれとはまさにこのことでしょうか。「ELはセビジスタ(セビージャ関係者やファンのこと)にとって、2人目の妻、2番目の彼女のようなもの」とエメリ監督が断言する程、傾倒している大会で彼らが詰めを誤ることはなく、結局、1-3で前人未到の3連覇を果たすことになりました。

▽おかげでリーガでの順位は7位に終わったものの、ELチャンピオン特権でセビージャは来季も引き続きCLグループリーグからの出場が決定。いえ、彼らだって、今季もできれば、CLで決勝トーナメントに行きたかったんでしょうけどね。これでUEFAカップ/EL通算最多の5回目の戴冠ということで、あの大きくてズッシリ重いトロフィーも手元に置けることになりましたし、やっぱり優勝となるとファンの盛り上がり方も半端じゃなし。

▽逆に決勝に進出するには、アトレティコのコケも「nosotros nos hemos enfrentado a equipos que han sido campeones en sus ligas/ノソトロス・ノス・エモス・エンフレンタードー・ア・エキポス・ケ・アン・シードー・カンペオネス・エン・スス・リーガス(ウチは各国のリーグ優勝チームと対戦した)」と言っていたように、PSV(オランダ)、バルサ(スペイン)、バイエルン(ドイツ)のようなヨーロッパの強豪をCLでは退けないといけないことを考えると、報奨金的にもシーズン前半はCL、後半はELというのはおいしいルートかもしれません。

▽え、そのセビージャは今週日曜日にももう1つ、決勝が控えていないかって? その通りで、バルサとコパ・デル・レイ決勝で戦うんですけどね。ただ、気をつけてほしいのは2010年のアトレティコの轍を踏まないことで、その年、フォルランやアグエロに率いられ、ハンブルクで延長戦の末、フルアムを倒して、EL初優勝した彼らはその後にあったコパ・デル・レイ決勝で、それこそセビージャに敗戦。夢のdoblete(ドブレテ/2冠)を逃すことに。

▽とはいえ、今回も両チームの休養期間の差が激しいですからね。リーガ優勝のパレードは月曜日に済ませ、そのリバプールとの決勝の日には練習場で決起ランチを和気藹々と開いていたバルサとは違い、たった2回しかセッションを持てないセビージャとなれば、スタメンの選手たちが体力回復するのもやっとかと。

▽それでも元キャプテンのラキティッチが言うように、「Ya ganaron un gran título el miércoles, pero ya está bien/ジャー・ガナロン・ウン・グラン・ティトゥロ・エル・ミエルコレス、ペロ・ジャー・エスタ・ビエン(水曜日に偉大なタイトルを獲得したんだから、もういいよ)」なんてことはないと思うので、日曜午後9時半(日本時間翌午前4時半)からのビセンテ・カルデロンでは熱戦を期待。バルサはMSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)を始め、全員が出場可能、セビージャではリーガ最終戦で退場して、4試合の出場停止処分を受けたコロジエチャクが出られず、EL決勝で途中交代したラミも微妙な状態のようです。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2016年5月21日(土)17:48

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