★【原ゆみこのマドリッド】祝うものがあって羨ましい…

▽「他人事だと思って勝手なこと言ってる」そんな風に私が呟いていたのは月曜日。ユーロ大会用合宿メンバー第1陣8人の1人として、ラス・ロサス(マドリッド郊外)のスペイン・サッカー協会施設に着いたセスク(チェルシー)が今週土曜のCL決勝の予想を訊かれ、「Veo una final de Champions con prórroga y penaltis/ベオ・ウナ・フィナル・デ・チャンピオンズ・コン・プロロガ・イ・ペナツティス(延長戦、そしてPK戦になるCL決勝だと思う)」と意見していたのを聞いた時のことでした。

記事全文

▽「他人事だと思って勝手なこと言ってる」そんな風に私が呟いていたのは月曜日。ユーロ大会用合宿メンバー第1陣8人の1人として、ラス・ロサス(マドリッド郊外)のスペイン・サッカー協会施設に着いたセスク(チェルシー)が今週土曜のCL決勝の予想を訊かれ、「Veo una final de Champions con prórroga y penaltis/ベオ・ウナ・フィナル・デ・チャンピオンズ・コン・プロロガ・イ・ペナツティス(延長戦、そしてPK戦になるCL決勝だと思う)」と意見していたのを聞いた時のことでした。いやあ、自分のチームはベスト16でPSGに負け、古巣のアーセナルをベスト16で破った古巣のバルサも準決勝でアトレティコに負けたため、当人は、今季の決勝はまったく関係ない話と割り切っているからかもしれませんけどね。

▽実際、アトレティコも2013年のコパ・デル・レイ決勝では延長戦でお隣さんを下しているため、とりわけ今シーズンのように試合までの準備期間が2週間とたっぷりあるのであれば、何はなくとも体力自慢のチームにだけに延長戦上等、といったところなのかもしれませんが…。ただでさえ、見る方も緊張する決勝。バルサとの最終節の死闘を経て、1週間後に臨んだ2年前のリスボンでは悲劇が試合終了直前の同点ゴールから始まり、延長30分間にボロボロにされた悪夢だって、まだ忘れられないのですから、やっぱりそういう展開はファンとしても避けてもらいたいかと。とはいえ、先日のアトレティコの練習を見る限り、0-0、延長戦はありうるかなと、私もこっそり思ってしまったんですが…。

▽そう、それは土曜日のことで、アトレティコがCL決勝前の恒例、オープン・メディア・ディをやるというので、週末ダイヤで1時間に1本しかバスがないため、行くのが大変困難になるマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に午前9時半という、私にとっては非常に辛い時間に駆けつけることに。セッション前に記者会見に出て来たシメオネ監督が、「マンチェスター・シティ戦のようなマドリーを想像している。Esperando y jugando de contragolpe, como hace en Champions/エスペランドー・イ・フガンドー・デ・コントラゴルペ、コモ・アセン・エン・チャンピオンズ(今季のCLでやっているように、敵を待ってカウンターで攻撃する)」と言っていたのには、日々のニュースで鬼のように彼らがゴールネットを揺らしているのを見ているのもあって、少々、首を傾げさせられたのは別にいいんですけどね。

▽滅多にないことに、それから始まったグラウンドでのトレーニングをその日は全部見学できたんですが、問題は最後にあったpartidillo(パルティディージョ/ミニゲーム)。前後半20分ずつという短いものでしたが、世間一般で決勝の仮想先発組と言われているグループとカンテラーノ(アトレティコBの選手)混成のグループの対戦では何故か、1本もゴールが入らなかったから、不安になったの何って。いえ、これもシメオネ監督の指示なんでしょうか、速攻カウンターをかけた控え組のFWが一対一で放ったシュートをGKオブラクがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で弾いてくれたのは心強かったですよ。その一方で、もうすぐクラブと2年間の契約を結ぶというフェルナンド・トーレスの一撃は惜しくもポストの横へ。グリースマンなどに至っては、自分で勝ち取ったPKを思いっきり外しているとなれば、PK戦の部分まで怪しくなってこない?

▽ただ当人はまったく気にしていないようで、いえ、セッション後に始まった選手たちの記者会見でコケの番の時、こっそり裏から回って、いつの間にやら、記者席に出現。ちゃっかり手を挙げてマイクを握ると、「アトレティコのアントワーヌ・グリースマンだけど、サッカーから離れて質問していい? Quien tiene mas clase vistiendo en el vestuario y quien menos?/キエン・ティエネ・マス・クラセ・ベスティエンドー・エン・エル・ベストゥアリオ・イ・キエン・メノス(チームで一番、イケてる服装をしているのは誰? 最悪なのは?)」って、もしや練習が終わるやいなや、シメオネ監督がタクシーでバラハス空港へ直行、ミラノへの視察旅行へ出発したのを知っていて、誰にも怒られないとわかっていた?

▽まあ、そんな乱入行為にもコケは「El que mas tu, y el que menos, no puedo decirlo que me mata/エル・ケ・マス・トゥ、イ・エル・ケ・メノス、ノー・プエド・デシールロ・ケ・メ・マタ(一番イケているのは君だよ。最悪なのは、後でボクがやられちゃうから言えない)」と、いつものおふざけの延長なのか、ニコニコして応えていましたけどね。それでも決勝については、「Nunca sabes cuando vas a volver a jugar/ヌンカ・サベス・クアンドー・バス・ア・ボルベル・ア・フガール(もう1度プレーすることがあるか、誰にもわからない)。だから、人生最後のつもりで頑張らないと」(コケ)という決意を露わにしてくれたため、まあいいことにしましょうか。

▽え、日曜日には「次にいつ、ウチがコパ・デル・レイ決勝を戦える?」(エメリ監督)と、似たような決意で挑みながら、負けてしまったチームもなかったかって? いやあ、その通りで、その日の昼間には私の家の近所(別にビセンテ・カルデロンが近い訳ではない)にもcamiseta(カミセタ/ユニフォーム)やbufannda(ブファンダ/マフラー)をまとったセビジスタ(セビージャファン)が闊歩していたため、いっそ2冠を獲るなら、珍しいチームの方がいいかもなんて考えていたんですけどね。どうにもその結末は、別にそのホームが会場となったからではないでしょうが、2010年のアトレティコの姿を彷彿させることに。

▽そう、当時のアトレティコもヨーロッパリーグ優勝を決めた後、セビージャとカンプ・ノウでコパ・デル・レイ決勝を戦ったんですが、フルアムとセビージャでは雲泥の差だったように、リバプールとバルサも雲泥の差? もしくは「Tras la Europa League, el equipo ha estado de pie/トラス・ラ・エウロッパ・リーグ、エル・エキポ・ア・エスタードー・デ・ピエ(ヨーロッパリーグの後、チームは立ったままだった)」と、後でエメリ監督が言っていたように、お祭りムードが選手たちから抜けていなかった? それより何より、信じられないのは36分、マスチェラーノが一発レッドで退場し、バルサに対して人数的優位という、アトレティコが何度、逆のケースだったらと夢見たシチュエーションになりながら、それを利用できないのでは困ってしまうじゃないですか。

▽おまけにその後もセビージャの幸運は続き、56分にはルイス・スアレスが負傷でラフィーニャに交代せざるを得なくなってもいたのに、彼らは一向にゴールを決められず。ええ、それどころか、0-0で延長に入る直前には司令塔のバネガがレッドカードを受けるファールを犯したため、その時点から人数的には両者イーブンに。となると、やはり才能がモノを言いますよね。

▽ええ、その試合のMVPとなったイニエスタがずっと達人としか言えない動きを見せていたのに加え、延長戦前半6分にはメッシが中盤から放ったボールにジョルディ・アルバが追いつき、GKセルヒオ・リコを破ってしまったから、ビックリしたの何のって。うーん、水曜日にバーゼルで戦ったメンバーが「Faltó frescura/ファルト・フレスクラ(フレッシュさに欠けていた)」(エメリ監督)と知りながら、リードされてから、ようやくFWジョレンテを投入。他は後半に右SBのマリアーノをコノプリャンカに代えただけというのは、セビージャも実は使える選手がいなかったのかもしれませんけどね。延長戦後半のアディショナルタイムにも再び、メッシのアシストでネイマールが2点目を決めて、最後は2-0でバルサの勝利が決まってしまいましたっけ。

▽ただ、それでも立派だったのはセビージャのファンたちで、いえ、キックオフ前、カタルーニャ(バルサのある地方、スペインから独立したがっている人も多い)から来たバルサのサポーターがスペイン国歌吹奏時にお決まりのpito(ピト/ブーイング)を飛ばすのに対抗するのには、歌詞のない国歌のため、やはりハミングでは無理がありましたけどね。試合後は有利な条件を生かせず、負けてしまった選手たちをhimno de centenrio(イムノ・デ・センテナリオ/クラブ創設百周年記念歌)やカンティコ(節のついたシュプレヒコール)で力づけることをずっと止めず。

▽何か、そんなシーンを見ると、かつてアトレティコファンも負けたチームをカンプ・ノウで同じように励ましていたのを思い出して、私もホロリとしてしまったんですが、大丈夫。コパ・デル・レイのトロフィーは持ち帰れずとも、2冠達成をスタジアムで盛大に祝ったバルサ同様、セビージャも月曜日にはEL優勝祝賀行事を決行。大勢のファンが喝采する中、オープンデッキバスで市内を練り歩き、夜半過ぎにはサンチェス・ピスファンでのイベントで仕上げをした上、相手はリーガ勢というのはネックながら、8月9日のトロンハイム(ノルウェー)でのUEFAスーパーカップ応援旅行計画を練られますしね。バルサがリーガ優勝しているため、その翌週にはスペイン・スーパーカップも控えているとなれば、この夏もまったく退屈している暇はない?

▽そして、最後にそのUEFAスーパーカップの対戦相手となるかもしれないマドリーについてもお伝えしておかないといけないんですが、いやあ、何せ土曜日にはカンテラ(下部組織)との練習試合をやった後、選手たちの家族も参加してのバーベーキューパーティをバルデベバス(バラハス空港の近く)の施設で開いたそうなんですけどね。クラブの方針で、その日は構内の映像や写真がまったく外へ流れず。おかげでヴァランがその練習試合で負傷、左太ももに肉離れを起こし、今週土曜日のCL決勝どころか、ユーロ大会参加まで危うくなってしまったことも、日曜にオフィシャルウェブにparte medico(パルテ・メディコ/ケガ人情報)が出るまで、世間はまったく知らないことに。

▽その他、先週の練習ではハメス・ロドリゲスが筋肉痛で、アルベロアがヒザを捻ってリハビリ、クリスチアーノ・ロナウドはシーズン終盤にトラブルがあった太もも裏の痛みを再発させないため、個別メニューを折り混ぜながら調整しているといった報はあったんですけどね。やはり敵によっては芝の状態を悪くするのもいとわないアトレティコが、一度、UEFAにダメ出しされたからって、サン・シーロのピッチを視察しても意味があまりないとシメオネ監督も思っていたんでしょうかね。同行したオルテガ・フィジカルコーチだけ先に帰し、日曜日午後には最近、妊娠が判明したという彼女、カリヤ・ペレイラさんとミランの休日を満喫してきてから、練習を再開した月曜日もマドリーは連休だったんですよ。

▽おかげでハンモックに揺られて日光浴を楽しむロナウドとか、自宅にケイロル・ナバス、モドリッチ、ルーカス・バスケスらを招いてプール三昧のセルヒオ・ラモスといった、どちらかというと、バケーションシーズンにふさわしい海パン写真ばかり見せられることになったんですが、まあそれはそれ。きっと残り4日間のセッション、マドリーもアトレティコに負けないぐらい一生懸命練習して、Undecima(ウンデシマ/11回目のCL優勝のこと)をゲットできる体勢を整えてくると思います。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2016年5月24日(火)12:55

mixiチェック
LINEで送る
【関連ニュース】
誰もゴールを入れてくれなかった…/原ゆみこのマドリッド
ただでさえ、親善試合は力が入らないのに…/原ゆみこのマドリッド
喜びは長続きしなかった…/原ゆみこのマドリッド
奇跡はホームでしか起きない…/原ゆみこのマドリッド
過ちから学ばないチームもある…/原ゆみこのマドリッド
戻る
(C) SEESAW GAME, Inc.