★【日本サッカー見聞録】ACL敗退と日本代表の小粒感

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▽ACL(アジアチャンピオンズ・リーグ)は24日のFC東京に続き、25日は浦和もアウェイでFCソウルにPK戦で敗れ、日本勢はラウンド16で全滅した。ベスト8には山東と上海の中国勢2チーム、FCソウルと全北現代の韓国勢2チーム、そして中東勢はアルアイン(UAE)、アルジャイシュ(カタール)、アルナスル(サウジアラビア)に、中央アジアからタシケント(ウズベキスタン)が勝ち進んだ。

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▽ACL(アジアチャンピオンズ・リーグ)は24日のFC東京に続き、25日は浦和もアウェイでFCソウルにPK戦で敗れ、日本勢はラウンド16で全滅した。ベスト8には山東と上海の中国勢2チーム、FCソウルと全北現代の韓国勢2チーム、そして中東勢はアルアイン(UAE)、アルジャイシュ(カタール)、アルナスル(サウジアラビア)に、中央アジアからタシケント(ウズベキスタン)が勝ち進んだ。

▽全滅した地域は日本勢とオーストラリア勢で、26日にキリンカップサッカーに臨む日本代表メンバーを発表したハリルホジッチ監督も、Jリーグ勢の不甲斐なさに、すぐにでも敗因分析をしないと取り残されると警鐘を鳴らしていた。どのチームもリトリートして守備を固めるスタイルにも苦言を呈し、前線からアグレッシブにプレスをかける川崎Fのサッカーを高く評価していたが、果たして川崎Fがアジアでベスト8に入れるかどうかは正直言って疑問だ。

▽なぜなら、この日発表された代表メンバーの“国内組”で攻撃的なポジションの柏木(浦和)、小林(磐田)、大島(川崎F)、小林(川崎F)、宇佐美(G大阪)、浅野(広島)らは、ハリルホジッチ監督の求める“デュエル”で見劣りしてしまう。辛うじて対抗できそうなのが遠藤(浦和)と金崎(鹿島)くらい。それ以外の選手はいずれも“海外組”だ。

▽選手の海外流出により国内リーグの空洞化を指摘されて久しい。さらにコストダウンにより中国Cリーグのような“大物助っ人”も獲得できていないのが現状だ。川崎Fのサッカーは美しいものの、韓国や中国の激しさに対抗できるレベルのスキルかと問われれば、即答できないのが正直なところだ

▽JリーグはACLでの躍進を後押しするため金銭的な支援と人的支援を強化、さらには日程調整で協力したものの、基本的なチーム力向上には結びついていない。まだ“焼け石に水”という範囲にとどまっているということなのだろう。今年は広州恒大(中国)がグループステージで敗退したように、巨額の資金を投じれば結果が出るとは限らないものの、Jリーグの“じり貧”感は否めない。ここらあたりが、Jリーグのプレミア化によりJ1のチーム数を限定し、有力選手と資金を集中させ、「強くて魅力あるチーム作り」で結果を残し、ファンをスタジアムに呼ぼうという意見が出て来る所以だろう。

▽代表メンバーの発表では小林(磐田)と大島(川崎F)が初招集され、小林(川崎F)と浅野(広島)も復帰した。とはいえビッグサプライズの選出とは言えず、ここでも“小粒感”は否めない。それだけ急成長した選手がいない裏返しだ。大久保(川崎F)を呼ばない理由をハリルホジッチ監督は「16㍍(ペナルティエリア内)」で躍動する選手であり、ビルドアップや守備で貢献できないと想定し、過去の日本代表でも結果を残していないと指摘したが、その通りだと思う。大久保は川崎Fのポゼッション・サッカーで復活、もしくは覚醒したストライカーだからだ。

▽ハリルホジッチ監督は将来を見据えて浅野を高く評価し、宮市(ザンクトパウリ)についても注目していることを明かしたが、「ゴールゲッターがいない国は高い位置には行けない。だから今はゴールゲッターを探している。ビッグクラブだけでなく、小さなクラブでも探している」と話していた。これこそが、日本代表の課題であり、Jリーグ勢がアジアで勝てない理由であることは明白だろう。

▽ACLでJリーグ勢が優勝争いを演じるには、Jリーグがスポンサーを見つけて出場4チームに強力助っ人をレンタルで加入させるのが手っ取り早いと思うが、それはそれで根本的な問題の解決につながらないのが悩ましいところでもある。

▽昨夜はU-23日本代表がやっと初勝利をあげたが、FC東京と浦和の悔しい敗退により、フラストレーションの溜まった1週間の始まりだった。

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。

2016年5月26日(木)21:38

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