★【東本貢司のFCUK!】悩ましきは「ジョゼとライアン」

Getty Images
▽26日午後、UKのメディアは一斉に「ジョゼ・モウリーニョ、マン・ユナイテッド監督就任確定」を報じた。正式な契約調印と記者会見発表は本日(27日)に行われる模様。

記事全文

▽26日午後、UKのメディアは一斉に「ジョゼ・モウリーニョ、マン・ユナイテッド監督就任確定」を報じた。正式な契約調印と記者会見発表は本日(27日)に行われる模様。ファン・ハール解任で「規定事項」とされながら、イメージライト(肖像権)云々の“些末”な確認交渉などもあって若干気を持たせた「モウリーニョ=ユナイテッド・サーガ」は結局「3日間」で決着した。もっとも、事情通の間ではチャンピオンズ・グループリーグ敗退の時点で(ファン・ハール解任/モウリーニョ招聘は)決まっていたも同然とされ、ちょうどその頃、モウリーニョがマンチェスター近郊に不動産を物色しているとの報道もあった。一説には、ライバルのシティーが早々と表明したグアルディオラ獲得が事実上の引き金だったともいう。いずれにせよ“波乱”は起きなかった。では「もう一つ」の方は?

▽言うまでもなく、それはズラタン問題。こちらの方の“引き金”は、イブラヒモヴィッチがパリSGとの契約更新を拒否し、エッフェル塔を揶揄するジョークをかました時点にまで遡る(とされている)が、モウリーニョの不動産探しがそれとほぼ同時期にキャッチされたことで、この二人のユナイテッド入り交渉はほぼ同時進行していたと勘ぐる向きもある。ただし、現時点でイブラヒモヴィッチは明らかに“焦らし戦略”を取るがごとく「さあ、どうなるかね」と涼しい顔だ。が、一方では「とっくの昔に腹は決めてある。あとは自分でボタンを押すだけ」ともうぞぶく。つまりは「あんたらの予想通りかも」という謎かけらしい。アヤックス、ユヴェントス、インテル、バルセロナ、ミラン、PSGと渡り歩いてきた現代きっての悪童も今や34歳、年貢の収めどころはプレミア、そして「一番やりやすかった」モウリーニョの下、というストーリーはごく自然な成り行きと言えそうだ。

▽イブラヒモヴィッチが入ってラシュフォードやマーシアルの使われ方はいかに、ルーニーは本当にアンカーポジションに下がるのか、マタやシュヴァインシュタイガーはどうなる・・・・など不確定要素への興味は尽きないが(そういえば、チェルシー時代のマタはモウリーニョの信用を失った結果ユナイテッドに来たんだっけ)、最大の関心事と言えばやはり「モウリーニョ流」と「ユナイテッド・スタイル」の相性。個人的な“希望”については前回に触れた通りだが、シュマイケル、スコールズらのレジェンドクラスから聞こえてくる声のほとんどは「モウリーニョこそ、ユナイテッドの復興に最適な男」である。明確に“反旗”を翻しているのはエリック・カントナのみ(「モウリーニョはむしろシティー向きじゃないのか?」)。テイエリー・アンリは「向き不向きじゃない。要は栄光(タイトル)をもたらしてくれるかどうか。それにグアルディオラとのライバル意識も正に働く」。

▽そう、誰一人として「ギグスでよかったのでは?」と言わない。あるいは「口にするのを恐れて」いるようだ。それどころか、ギグスが今度こそ居場所を失って(例えば、カーディフ辺りに)出奔するのではないかと(幾分ため息交じりのいたわり気味に)囁きを交わす。おそらく、ギグスにはモウリーニョほどの「主張」やアクの強さが感じられないからだろう。名プレーヤー必ずしも名将ならず、の“ことわざ”もチラついたりするのかもしれない。ただ、元キャプテンのスティーヴ・ブルースら少数派はこう述べている。「今はモウリーニョで最善だが、多分3年がいいところ。もっても5年。その後を引き継ぐのはライアンしかいるまい。つまり、ちょうどいい充電期間ってことじゃないか? しばらくはユナイテッド・スタイルが新機軸を打ち出すのも、この際プラスだろう」と。ウェールズ代表監督も「しばらくユナイテッドを離れるのは必ずや将来の大きな糧になるはずだ」。

▽ユナイテッド側はもちろん、ギグスの残留を望んでいる。モウリーニョが第一次チェルシー時代に片腕と頼んだスティーヴ・クラークの役割をギグスが果たすと見ているからだ。つまり、モウリーニョ自身も異存はないはずだ、と(無論、契約交渉時にどんなやり取りがあったかは不明だが)。さもなくば、アンダー21クラスの監督“兼任”という線も有力視される可能性がある。2008年から同職に就いているウォレン・ジョイスが、空席のブラックバーン監督になる見込みが浮上しているからだ。アカデミーを預かっているバットとの連携の意味でも好ましい。そしてこれは、現レアル監督のジネディーン・ジダンがたどった道でもある。だが、気がかりなのはギグス本人が「失望」していると伝えられている点。プロライセンスも取得済みで、すでに自分が“その役目”に値する経験を積んだと一部で漏らしているとも。一方、クラブはPR効果の意味でもギグスを手放したくない。さあ、どうするギグス。ユナイテッドファンが今何よりも気をもんでいるのがそこなのだ。

【東本 貢司(ひがしもと こうじ)】
1953年大阪府生まれ
青春期をイングランド、バースのパブリックスクールで送る。作家、翻訳家、コメンテイター。勝ち負け度外視、ひたすらフットボール(と音楽とミステリー)への熱いハートにこだわる。

2016年5月27日(金)11:00

mixiチェック
LINEで送る
【関連ニュース】
【東本貢司のFCUK!】新版・カンプノウの奇跡
【東本貢司のFCUK!】ピュエルとサッリ、去り際の“顔”
【東本貢司のFCUK!】復活の記憶と「ウーラ」の誓い
【東本貢司のFCUK!】チャンピオンズこそ伏兵に期待
【東本貢司のFCUK!】エヴァートンから始まるドラマ
戻る
(C) SEESAW GAME, Inc.