★【編集部コラム】英国のEU離脱が生み出すプレミアリーグへの影響は?

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▽23日、英国で行われた国民投票の結果、EU(欧州連合)からの離脱派が残留派を上回る結果となった。今後、英国はEU離脱への動きを見せることになる。

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▽23日、英国で行われた国民投票の結果、EU(欧州連合)からの離脱派が残留派を上回る結果となった。今後、英国はEU離脱への動きを見せることになる。欧州のみならず世界経済に大きな影響を及ぼす大きな決定となった今回の英国国民投票の結果だが、EU離脱となればサッカー界にとっても他人事ではなく、大きな影響を受けることになるだろう。

◆世界最大のマーケットとなっているプレミアリーグ
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▽御存知の通り、英国はイングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズで成り立っている。イングランド、ウェールズのクラブで構成されているプレミアリーグは、欧州各国リーグの中でも、大きなマーケットとなっている。

▽選手の移籍金の高騰、放映権の高騰は近年の動きを見ても明らかであり、リーグ全体として見れば、リーガエスパニョーラ(スペイン)、ブンデスリーガ(ドイツ)、セリエA(イタリア)などとも、ビジネス面では一線を画している。さらに、アジアやアメリカの投資家がクラブのオーナーになったり、または買収に動いていることからも、経済的な側面で大きな注目を集めている。

◆厳しいビザの条件がネックに?
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▽EU離脱となった場合、最も影響を受けるのは選手となるだろう。プレミアリーグでは、EU加盟国の選手は外国人選手とみなしていない。一方で、レスター・シティの日本代表FW岡崎慎司やサウサンプトンのDF吉田麻也などのアジア人やEUのパスポートを持たないアフリカ人など、EU圏外の選手がプレーするには大きな障壁がある。

▽外国人選手は労働ビザが求められ、その条件として「直近2年間の国際Aマッチに75%以上出場」というものがある。さらに、自国がFIFAランキング70位以内の国でなければならないという条件がついている。

◆外国人だらけのプレミアリーグ
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▽また、現在のプレミアリーグは外国人選手で溢れている。イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドと英国の選手を除いた場合、2015-16シーズンのプレミアリーグには595人の選手が登録されていたが、そのうちの384名が英国以外の選手となっている。実に65.2%を占めることとなる。

▽今回のEU離脱により、これらの選手が全て外国人選手となるのであれば、現状の規則では上記のビザの条件をクリアしなければならなくなる。各国の代表選手として活躍している選手であれば問題ないが、代表招集経験がない若手の有望株や、代表歴が浅い外国人選手は、プレミアリーグでのプレーが難しくなる。

◆移籍市場でも苦しむ可能性が
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▽もう1つの懸念は、移籍市場でのお金の動きだ。EUに加盟していながら、英国ではポンド通貨を使用し、その他のEU加盟国はユーロ通貨を使用している。6月26日時点で、1ユーロをポンドに換算すると0.81ポンドとなる。ちなみに、1年前であれば1ユーロは0.71ポンドであったため、0.1ポンドあがったことになる。

▽つまり、1000万ユーロの移籍金が必要な選手を獲得する場合、昨夏の移籍市場であれば、710万ポンドの支払いだったが、現時点では810万ポンドが必要となり、100万ポンドの差が生まれている。EU離脱となれば、今後はこの動きが加速する可能性があるため、選手獲得の動きが鈍る可能性も出てくるだろう。また、これまでは少なかった英国人の海外流出も増えるかもしれない。

◆デメリットだけではない?
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▽ここまでは、EU離脱に対するデメリットを挙げてきた。サッカー界に限らず、今回の意思決定は大きなデメリットを生むことは間違いないだろう。ただし、考え方を変えれば、プラスに転じる可能性もある。

▽例えば、ビザの条件が厳しいということは、獲得する選手は各国の代表チームでの主力選手となる。現在のプレミアリーグに外国人枠は存在していないため、この先はより実力のある選手だけが集まるリーグになる可能性がある。

▽また、英国選手の底上げも期待できるだろう。有望な若手選手が、英国以外の選手にポジションを奪われ、出場機会が減っている現状を嘆く声は数年前から聞こえている。しかし、英国以外の選手が淘汰されていけば、若手にもチャンスが生まれ、ホームグロウン制度を満たすための飼い殺し状態も減るだろう。

▽今回のユーロでも出場した英国の3チームが全てベスト16に進出している。出場枠が拡大された影響もあるが、それでもオランダは出場していない。つまり、英国人のレベルが上がりつつある傾向と捉えても良いだろう。彼らが今以上にプレミアリーグで活躍する可能性も考えられる。

◆協会やリーグの対応が待たれる
▽今回の国民投票の結果を受け、プレミアリーグやサッカー協会は特別な動きを見せていない。しかし、数年後にEU離脱が実現するとなれば、現行のレギュレーションが変更される可能性は高い。

▽国民が選択した結果に対し、時間が経つにつれて新たな考えが生まれ、他国にも影響がではじめようとしている。いみじくも、EU離脱派が多かったウェールズと、残留派が多かった北アイルランドがユーロ2016の決勝トーナメント1回戦で相見え、国民投票と同様に離脱派のウェールズが1-0で北アイルランドを下した。今後のリーグや協会、さらにはUEFA(欧州サッカー連盟)がどのような動きを見せるのか、見守る必要がありそうだ。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

2016年6月26日(日)20:30

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