★【日本サッカー見聞録】EUROとJを見比べて感じた疑問

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▽今週10日にポルトガルの初優勝で終わったEUROだが、ポゼッションサッカーで一時代を築いたスペインは、主力の高齢化もあり決勝トーナメント1回戦でイタリアに敗れた。W杯を制し、EUROでも連覇を果たした“無敵艦隊”も、一つの時代が終わったと言える。

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▽今週10日にポルトガルの初優勝で終わったEUROだが、ポゼッションサッカーで一時代を築いたスペインは、主力の高齢化もあり決勝トーナメント1回戦でイタリアに敗れた。W杯を制し、EUROでも連覇を果たした“無敵艦隊”も、一つの時代が終わったと言える。スペイン同様、準決勝ではポゼッションでフランスを圧倒したドイツも敗れ、決勝では終始試合を支配したフランスが延長戦でポルトガルに屈した。

▽W杯やEUROのような長期間に渡る大会でジャイアントキリングを起こすには、アイスランドのような堅守速攻型しか方法がないことは、過去にもギリシャが証明している。世界のトレンドとして、このままポゼッションサッカーは衰退していくのだろうか。

▽と言ったところでJリーグである。第2ステージの第3節を消化したばかりだが、3連勝を飾った川崎F、横浜FM、浦和、そして4位につけるG大阪にはいずれも共通点がある。それは中盤に違いを生み出せるパサーがいることだ。中村憲、中村俊、柏木、遠藤らベテランのプレーメーカーがチームを牽引し、横浜FM以外はポゼッションサッカーで優勝争いを演じている。第1ステージ覇者の鹿島にも小笠原と柴崎というプレーメーカーを擁している。

▽ほんの10年くらい前の日本は、プレーメーカーの宝庫だった。小野、中田英、中村俊、稲本ら中盤にはきらめくようなタレントがいた。しかし現在は香川を筆頭に原口、宇佐美、南野らサイドアタッカーが海外移籍を果たし、リオ五輪日本代表にもプレーメーカーは見当たらない。これはこれでトレンドなのかもしれないが、日本のトップレベルであるJ1リーグで優勝争いを演じているのは、いずれもプレーメーカーを擁したポゼッションサッカーという点にギャップを感じてしまう。そしてACLでのJリーグ勢の凋落が追い打ちを掛ける。Jリーグは世界のトレンドと逆行しているのではないかという疑問である。

▽ただし、やむを得ない事情もある。日本は欧州やアフリカ勢はもちろん、韓国や中国と比較しても190センチ台の巨漢CBやストライカーはいないし、今後も出て来る可能性は低い。このためアジリティとスキルで勝負するしかなく、必然的にポゼッションサッカーにならざるを得ない。そこで気になるのが、プレーメーカーの後継者だ。いまだ中村憲、中村俊が輝きを放っている一方、彼らの系譜を継ぐ選手がすぐに思い浮かばない。可能性を秘めているのは大島くらいだが、前任者に比べると“小粒感”は否めない。

▽大型CBとストライカーの育成は日本サッカーの課題であるが、本田や柏木の後継者の発掘と育成も急務なのではないだろうか。1カ月近く、EUROとJリーグを交互に見比べて感じた素朴な疑問だった。
【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。


2016年7月14日(木)15:30

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