★【原ゆみこのマドリッド】後れを取ってしまった…

▽「これじゃ先輩面はできないわね」そんな風に私が呟いていたのは月曜日、クラブ創設から苦節88年、念願のリーガ1部デビューを果たしたマドリッドの新弟分チーム、レガネスが初勝利。それもアウェイで、今季はヨーロッパリーグに出場するセルタから後半29分、CKを起点にビクトル・ディアスが先制ゴールを挙げ、その1点をしっかり守り切って0-1と勝利したのを見た時のことでした。

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▽「これじゃ先輩面はできないわね」そんな風に私が呟いていたのは月曜日、クラブ創設から苦節88年、念願のリーガ1部デビューを果たしたマドリッドの新弟分チーム、レガネスが初勝利。それもアウェイで、今季はヨーロッパリーグに出場するセルタから後半29分、CKを起点にビクトル・ディアスが先制ゴールを挙げ、その1点をしっかり守り切って0-1と勝利したのを見た時のことでした。いやあ、もちろん、プレシーズンの試合では入れ替わりで2部に落ちたラージョにあっさり負けていた彼らが、この日は5人DF体制で一生懸命守り、見事に勝ち点3を手に入れたことは喜ばしかったんですけどね。

▽エスタディオ・デ・バジェカス(ラージョのホーム)で私が初めて、ここ3年でアシエル・ガリターノ監督が2部Bから引き上げたチームを見た時から気になっていた、髪の毛を青く染めたDFが32歳のキャプテン、マントバーニで、アルゼンチン人ながら、実はアトレティコのカンテラーノ(下部組織出身)だったなんてこともおいおい、わかってはきたんですが、まるで先輩のお株を奪うように堅守とセットプレーで開幕戦を白星で飾るなんて、まったく予想もしていなかったから、驚いたの何のって。うーん、こうなると次節、初戦では目論見が外れ、手負いの兄貴分をブタルケに迎えるホームデビュー戦、新マドリーミニダービーも結果がどうなるか、わかりませんが、ここはレガネスが負けても貯金がある分、私の胸が痛まなくて済むってことでしょうかね。

▽え、ということは今季のリーガ開幕戦、マドリッドの3チーム中、勝ったのは2チームだけだったのかって? その通りで、日曜には私も両雄の試合を続けて見ることになったんですが、先に始まったレアル・マドリーはアウェイだったため、早めにビセンテ・カルデロン近くまで行って、バル(スペインの喫茶店兼バー)でTV観戦することに。キックオフまでに余裕を持ってお店に入ったため、椅子の確保もできた上、開始1分でカルバハルが上げたクロスをベイルが頭で叩き込み、先日のサンティアゴ・ベルナベウ杯ではモラタに先を越されたリベンジをしていたのも目撃することができたんですが、これでは0-1で始まったも同然。ホームのレアル・ソシエダもいきなり窮地に立たされたものです。

▽しかもマドリーはルーカス・バスケスやイスコ、ハメス・ロドリゲスらを差し置いて、先発に抜擢された弱冠20歳のアセンシオも前半40分にその才能をアピール。ええ、バランが自陣から放ったロングボールに反応して敵エリア内に1人侵入すると、センスの光るvaselina(バセリーナ/ループシュート)でGKルリの頭上を破ってチームの2点目をゲットしているとなれば、クリスチアーノ・ロナウドやベンゼマもそんなにしゃかりきにリハビリをする必要はない?

▽ただ実際、その2人が戻って来たら、どうなるかはわからないんですけどね。アセンシオ自身も後で、「No me ha sorprendido ser titular/ノー・メ・ア・ソルプレンディードー・セル・ティトゥラル(スタメン入りには驚かなかったよ)。そのために練習で努力しているんだから」と言っていましたが、彼はセビージャとのUEFAスーパーカップでもgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めていますし、今のところ、マドリーに残留したのは間違っていなかったかと。

▽そして後半になってもソシエダの反撃はほとんどなく、もう0-2で決まりだろうと、試合が終わる前にビセンテ・カルデロンへ向かった私ですが、油断大敵とはまさにこのこと。ロスタイムには今度はハメスからボールをもらったベイルがGKルリをかわし、再びゴールを挙げているんですから、これじゃ、ちっとも目を離せないじゃないですか。

▽うーん、この夏のユーロ大会では初出場で準決勝まで進出したウェールズをキャプテンとして引っ張って、大いに目立っていた彼ですが、今季はマドリーでも主役を張りたいんでしょうかね。まだ「todavia fisicamente esta un poco detras de los demas/トダビア・フィシカメンテ・エスタ・ウン・ポコ・デトラス・デ・ロス・デマス(フィジカル的にはまだ他より遅れている)」(ジダン監督)というのにこれだけ活躍ぶりって、やっぱりBBCの残りはブラジルのリオ五輪優勝に貢献したネイマールのように、9月の代表戦週間が終わってからのチーム復帰でも全然、問題ない?

▽そう、マドリーも前日にネイマール、イニエスタ、マスチェラーノらレギュラー3人を欠きながらベティスに6-2と大勝したバルサ同様、ソシエダに0-3と快勝するのにロナウド、ベンゼマ、モドリッチ、ペペ、ケイロル・ナバスの5人がいなくても平気なんですよ。ジダン監督が、「Cuando hago el equipo me duele la cabeza porque todos tienen mucha calidad/クアンドー・アゴエル・エキポ・メ・ドゥエレ・ラ・カベッサ・ポルケ・ティエネン・ムーチャ・カリダッド(メンバーを決めるのに頭が痛い。皆、質が高い選手だからね)」と贅沢な悩みを持ってしまうのも当然ですが、彼らの次節はサンティアゴ・ベルナベウでのセルタ戦。前述のレガネス戦を見る限り、相手はノリトのマンチェスター・シティ移籍でかなり攻撃力も弱っているようでしたし、きっとあまり苦労しないで勝てるんでしょうね。

▽そんなスペイン2強とは対照的だったのはアトレティコで、うーん、こちらのレギュラーでパルコ(貴賓席)見学だったのは出場停止のグリースマンだけだったんですけどね。昇格組のアラベスということで、相手を甘く見た訳でもないんでしょうけど、とにかく点が取れないから困ったもの。しかも向こうは開始10分でCBフェダルがケガをしてラグアルディアに交代と、いきなりプラン変更を迫られていながら、ガメイロはゴール前で押し込むだけのシュートを天高く撃ち上げてしまうわ、カラスコの一撃はゴールポストに阻まれてしまうわと、とにかくツキもなかったとしか言えません。

▽それでも後半は敵がほとんど攻めてこないのをいいことに、チアゴの代わりにフェルナンド・トーレス、更にガビをガイタンに、最後はカラスコをコレアに代え、どんどん攻勢を強めていったシメオネ監督だったんですが、チャンスはあってもゴールと縁がないのは変わらず。結局、90分間でシュート27本、CK20本と凄いことになっていたんですが、ロスタイムに入って最大のチャンスが巡ってきます。それはトーレスがラグアルディアに倒されてゲットしたPKで、すでに午前零時を回っていたスタンドで辛抱強く応援していたファンが祈る中、とうとうガメイロが移籍後初ゴールを決めてくれたから、どんなにホッとしたことか。残り時間はあと僅か、もう勝利は確実と誰もが思っていたんですが…。

▽恐ろしいことに、あの間抜けなアトレティコが戻って来てしまったんです! それはロスタイム4分、別にガイタンが自陣でファールを犯し、GKパチェコが最後の望みを託してFKをエリア前にボールを上げようと、普通は何も起きやしませんよ。それが“pupa(プパ/ツイてない奴)”のアトレティコだと、マヌ・ガルシアにトラップされ、その弾丸シュートにGKオブラクが破られてしまうなんてことがありうるんです。これで1-1の同点、天国から地獄へ急降下とはまさにこのことかと。


▽そしてそのリスタートから何秒もしないうちに試合終了の笛が鳴り、「Me queda el mal sabor de boca por tenerlo ganado/メ・ケア・エル・マル・サボール・デ・ボカ・ポル・テネールロ・ガナードー(勝利を手にしていたから、口の中にイヤな味が残った)」シメオネ監督を筆頭にファンも肩を落として家路をたどることに。いやあ、思わぬ勝ち点1を拾ったアラベスのペジェグリーノ監督も「Por los meritos que hemos hecho, no hemos merecido empatar/ポル・ロス・メリトス・ケ・エモス・エッチョー、ノー・エモス・メレシードー・エンパタール(ウチが試合でやったことからは、引き分けるのには値しなかった)」と素直に認めていたんですけどね。「pero el futbol es eficacia, no es merecimiento/ペロ・エル・フトボル・エス・エフィカシア、ノー・エス・メレシミエント(だが、サッカーは効率だ。値するかしないかではない)」というのも真実。

▽それでもって、その日のアラベスはともかく、大抵、効率のいいチームは才能と運に恵まれているものですが、もしや今季のアトレティコはどちらにも不自由している? いえ、この夏はゴール数を増やすべく、ジエゴ・コスタ(チェルシー)は無理でしたが、ガメイロやガイタンを獲得。シメオネ監督もメンバー選びに苦労するほど優秀な選手が揃ったはずだったんですけどね。カランサ杯(カディス主催の伝統的な夏の親善トーナメント)の2試合から、らしくもなく終盤に失点して、守備の詰めの甘さが見られていたのも予兆だったのか、何とも残念な開幕戦になってしまいましたっけ。

▽え、でも2節のレガネス戦にはシメオネ監督が「delantero titular es, abusolutamente Griezmann/デランテーロ・ティトゥラル・エス、アブソルータメンテ・グリースマン(レギュラーのFWは絶対的にグリースマン)」と言い切っていたゴールゲッターが戻って来るじゃないかって? まあ、そうなんですけどね。「ボクが2回のチャンスにゴールを入れていたら、試合は上手くいっただろうに」とミックスゾーンで後悔していたガメイロだって、昨季までいたセビージャでの働きぶりを考えれば、あんな失敗は珍しいんでしょうが、どんなに泣いても悔しがっても失った勝ち点2は取り戻せず。これが先々、リーガの戦いに響いてこないといいんですが、果たしてどうなることになりますか。


▽そうそう、今週は木曜にCLグループリーグの抽選会があるんですが、残念ながらビジャレアルは火曜のプレーオフ2ndレグでもせっかく現地まで行きながら、1-0でモナコに負け、総合スコア3-1で敗退。金曜のヨーロッパリーグのグループリーフ抽選に回ることになったのはさておき、スペインからはマドリー、バルサ、アトレティコが参加するCL抽選のセレモニー前には昨季の欧州最優秀選手賞の表彰式も。そのため、ロナウド、ベイルと並んで最終候補になっているグリースマンも開催地のモナコまで遠征する可能性がありますが、残念ながら今回はガーディアン(イギリスの一般紙)のインタビューで語っていた「クリスチアーノとメッシと同じ席で食事したい」という夢は叶わず。

▽いえ、もちろん当人が言いたかったのは、「できるだけ彼らのレベルに近づいて、タイトルも獲りたい」ということだったんですけどね。でもどちらにしても、今回はレガネス戦の1日前と時間的に余裕がありませんしね。CL決勝でもユーロ大会決勝でも自分がゴールを決められていたら、doblete(ドブレテ/2冠優勝)もできていたし、胸を張って、最有力候補として表彰式に臨めたはずだったということを忘れず、この経験を今後の糧にしてもらいたいもの。そんなCL抽選会は木曜午後6時(日本時間翌午前1時)から。ポット1のマドリーとバルサと違って、ポット2のアトレティコは強敵のいるグループになることもありますから、クジ運ぐらいはいいと有難いですよね。【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2016年8月24日(水)9:42

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