▽国内唯一のデイリーサッカーニュースであるJ SPORTSの人気番組『Foot!』。超ワールドサッカーでは、今週の月曜から金曜にわたってFoot!×超WSコラボ企画を実施。最終日となる今回は、『Foot! FRIDAY』のMCを務める倉敷保雄氏のインタビューをお届けする。(※インタビューは11月10日に実施。成績は第11節終了時点)
▽第11節を終えて上位4チームが2ポイント差にひしめく今シーズンのプレミアリーグの覇権争いを倉敷氏が予想。抜けたチームがないとみる倉敷氏は、ヨーロッパでの戦いが排除されているチェルシーとリバプールがタイトル争いの上で有利になると主張し、その中でもアントニオ・コンテ監督率いるブルーズを本命に推した。
――本命◎は現在2位のチェルシーとのことですが、その要因を教えてください
「まず、今シーズンは抜けたチームがない。実力が拮抗しているのであれば、消去法です。何か有利な材料があるチームが優勝するのではないかと考えました。たくさんの材料を抱えているチームが脱落するだろうと考えると、負担が大きいのはチャンピオンズリーグ。CL出場クラブは、2月ぐらいは諦められない状況が続くため、戦力を走らせる必要があるので苦しい。そこで、まず僕はCL組を本命候補から排除しました」
「次に厳しいのはヨーロッパリーグ組。次はFAカップだけれども、この大会はまだ始まっていないので除きます。リーグカップも外すとなると、もうチェルシーしか残らないんですよ(リバプールはEFLカップを勝ち抜いており、チェルシーは既に敗退)。それがチェルシーを本命に推した1つ目の理由ですね」
「では、チェルシーとリバプールを別の角度で比較しましょう。(来年1月から開催される)アフリカ・ネイションズカップです。各チーム、アフリカ・ネイションズカップでは主力を削られて厳しくなります。その点で言えば、チェルシーはネイションズカップでの離脱がありません」
「モーゼスとミケルはナイジェリアですけど、あり得ないことにナイジェリアが出場権を逃しているんです。こんなことは滅多にない! 僕は目を疑いました。3回、確認しましたよ(笑)。ナイジェリアは出てないです。これは大きいですね。一方のリバプールは、セネガルのサディオ・マネが離脱します。マネが離脱するのは結構、厳しい。じゃあ、ここはチェルシーの方かなと思いました」
「直接対決では、チェルシーがホーム戦を1-2で落としていますが、でもプレミアリーグは1月までが大事。そこまでで何位で折り返すかで、あとの負担が決まってきますよね。ここまでで上位に食い込んでいれば優勝の芽がある」
「ただし、ヨーロッパの大会に出ているチームはディスアドバンテージがあるはず。昨シーズンのレスターがそうでした。レスターの優勝の大きな要因は、1週間にほぼ1度しか試合がなかったこと。それだけに向けてチームは集中して練習し、ラニエリのプランを実行することができた。その点を考えると、コンテもクロップもヨーロッパのカップ戦は得意ですけど、そこに出てないということは、その情熱をリーグ戦に注ぐ可能性が高い」
「マイナス面は何か。2人ともイングランド人ではなく、母国語が英語ではない。これはかなりハンデだと思います。特にユーロ後の合流となったコンテはチームを見る余裕がほとんどなかった。チームを把握するのに時間がかかる。ユベントスに落とし込んできた戦術を伝えたくても、始めは伝えられないのではないかと思っていた。だから僕、失速したときに彼らを本命からはずそうと思ったんです」
「しかし、ここ数試合を見ていると、3バックに変更。現メンバーはユベントスと同じシステムをある程度のところまで、できるということが分かりました。それにより、特にアザールがここまで生きてくるのであれば、チェルシー本命でもおかしくないと思いましたね」
――現在首位のリバプールもチェルシーと差のない対抗○扱いですが、要因を教えてください
「まず、前線のフィリペ・コウチーニョ。そして、ホベルト・フィルミーノですね。この2人は、チッチ監督のセレソンに入っても本当に楽しそうにプレーしている。アタッカーは、新しい刺激を受けて別のモチベーションをもったとき、クラブチームにも間違いなく反映されると、僕は思っているんですよね」
「この2人は違った役割でチームに大きなプラスをもたらすことができるタイプの選手だと思うので、これがクロップのやり方にハマってくるだろうと思います。前線にフレッシュでモチベーションに溢れた代表クラスの選手がいるときは“買い”だというのが僕の考えです。僕はこの2チームで優勝を争うんじゃないかと思います」
――現在3位のマンチェスター・シティは3番手▲ですが、チェルシー&リバプールと比べると評価は落ちますか
「シティは少し落ちます。今季、プレミアリーグを制覇するのは難しいのではないかと、ペップ自身が感じていると思います。となると、1年目で何をしなければならないか。バイエルンで、できたこととできなかったこと。バイエルンでは国内で完全に圧倒していた。しかし、あれだけのチームでもCLは獲れなかったですよね」
「彼の評価は、ヨーロッパにおいて、少し下がり気味の印象です。彼が自分のサイクルを続けたいのであれば、CLの方にベクトルが向くのではないか。シティのオーナーたちも、国内タイトルを獲っているのであれば、CLにプライオリティを置くことをリクエストしたとしてもおかしくない」
「そうすると、やはり二兎を追うことはできないと思います。選手たちに関して、長く中途半端に勝ち続けている状態の選手たちというのは、モチベーションを保ち続けるのが難しいと思います。シティというチームは、どうしても飽きっぽい。強いときは強いけど、とんでもない負け方をすることもある。国内よりも集中がしやすいCLの方にペップが絞ってくるのではないでしょうか。あるいは、リーグ戦よりもFAカップを狙う可能性もある。その点で評価を落としました」
――抑え△に評価した6位のマンチェスター・ユナイテッド。彼らが優勝争いに食い込むためには、何が必要でしょうか
「特にユナイテッドは冬のマーケットでしょうね。モウリーニョという監督は、今、自身のサイクルが終わるのではないかという評価に立たされている監督。『良い監督だった』という過去形になりつつあります。これだけのステータスと選手と資金を与えられても、勝てない。“守る”戦術はあるので、リバプール戦(0-0)のような戦い方で(勝ち点を獲得)できる。だが、その次の試合(vsチェルシー0-4の敗戦)であっさり負けて、どうなんだという状況になりますよね」
「モウリーニョが立ち直れるとしたら、新しい力です。彼のために全てを忘れて、走り回れる選手。例えば、エンゴロ・カンテのような選手がユナイテッドの中盤に入れば、一気に解決すると思いますよ。ユナイテッドは、もともとポテンシャルはあるし個人の力もある。下から上がってきた若い選手もいる」
「イブラヒモビッチが気持ちよく仕事ができる環境にしたいですよね。あとはルーニー。今は数字にこだわって規律を乱している印象です。『イングランドの中で、ユナイテッドの中で記録をつくりたい。もう少しで達成だから、僕のためにみんな協力してくれ』みたいな。真のリーダーではなくなっているというところがあるかもしれません」
「でもこれはメッシに関しても言えることですよね。彼が記念の大きな数字に近づいたときって、バルセロナは停滞する。ルーニーを早く気持ちよくさせてってことを考えれば、彼に多くのパスを供給してあげること。今のユナイテッドは、ボールを取られると、みんな守備にゾロゾロと戻ってくる。ここに働き者で、最後の汗の一滴までピッチに捧げるようなモウリーニョ好みの選手を冬のマーケットで獲ることができれば、優勝争いに食い込んでも、まったくおかしくないと思います。選手は揃っているが、モウリーニョのために働く選手が、実はいない。そこが弱点だと思います」
――抑え△評価にとどまった4位のアーセナルについて、懸念点をお聞かせください
「ムラがあるということですね。バイオリズムの大きな波が毎シーズンある。強いときは世界で1番かもしれない。だけど、そのピークから落ちてケガ人をつくってしまうタイプの練習もするため、そうなると格下のチームでもイーブンの試合になってしまう。そこが好きか嫌いかという話になるんですけど(笑)」
「ヴェンゲルは、帳尻は合わせてきますよね。だけど、彼に対してフロントが見切りをつけて契約延長しないんじゃないかという噂もあります。華を咲かせる可能性があって、それが達成できれば、クラブは彼を手放さないと思います。それをヴェンゲルも分かっているから、今までどおりにバトンを渡そうと考えるんじゃないかと僕は思いますね」
「良いも悪いも、また2位から4位の間。3位か4位ぐらいでCLは外さないけど、優勝するのであればケガ人のことやピーキングがしっかりと成功するぐらいではないと、アーセナルは信用できませんね(笑)。良いチームであることに疑いはないけど、ムラがあるチームということも断言できますよ」