★【原ゆみこのマドリッド】熱いプレーで勝つのが最高だけど…

▽「そうか、もうコパがないのは楽よね」そんな風に私が納得していたのは月曜日。週末のリーガが終わった後、世間がこぞって優勝候補に祭り上げていたセビージャの先の予定を見ていた時のことでした。

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▽「そうか、もうコパがないのは楽よね」そんな風に私が納得していたのは月曜日。週末のリーガが終わった後、世間がこぞって優勝候補に祭り上げていたセビージャの先の予定を見ていた時のことでした。いやあ、確かに順位表の上では首位と勝ち点1差になったとて、レアル・マドリーはクラブW杯参加で延期したバレンシア戦が未消化のため、実質4ポイントあるようなものなんですけどね。この2週間~4週間もリーガの上位4チーム中、セビージャだけがミッドウィークを休めることに。その上次は最下位のオサスナと対戦となれば、今週末の日曜日からの7日間で3度もバスク(スペイン北部)遠征に駆り出されるアトレティコなど、どんどん差をつけられてしまう危険すらある?

▽ファン心理では、ビルバオ近辺でミニキャンプでも張って、アウェイへの移動時間を節約し、最近のパッとしない試合内容を改善する練習をしてほしいのですが…。選手たちだって、1週間も家族の待つ自宅に帰れないのは辛いだろうと、シメオネ監督は2日おきに3往復、計2344キロメートルを走破することを決定。おまけに良いんだか、悪いんだか、このところ勝つだけは勝っているため、今以上の努力は必要ないと思ってしまうのも人情なんですが…。ただ、このままセビージャに突っ走られたら、目標の3位フィニッシュが危うくなってしまうかも。

▽まあ、その辺はまだ心配するには早いので今は置いておいて。先週末のマドリッド勢がどうだったかをお伝えしないといけません。土曜日は午後1時からの早い時間帯でマドリッドの新弟分、レガネスがブタルケにアスレティックを迎えたんですが、ベネズエラ人MFのマチスが4回程、GKイライソスと1対1のチャンスを掴みながら、その全てに失敗。おかげで最後まで点を取ることはできなかったのですが、相手も水曜日のコパ16強2ndレグでバルサに逆転負けを喫したショックがあったかのか、そのまま最後はスコアレスドローで終わることに。

▽いえ、それでもアスレティックのエース、アドゥリスと司令塔のベニャトにイエローカードを出させて、次のアトレティコ戦に累積警告で出場停止という貢献はしてくれたんですけどね。結局、これで昇格1年目の今季前半はレガネスのホームで1勝止まり。降格圏との差は勝ち点5差になったものの、すぐ下の17位につけているバレンシアとはたったの1差になっていまいましたっけ。

▽そして同日の夕方にはビセンテ・カルデロンに向かった私でしたが、その間にバルサがラス・パルマスに5-0と大勝。それだけに、8分にこぼれ球を拾ったガイタンの足から先制点が生まれた時には場内のファンも大いに沸いたんですけどね。以降はただただ、気温の低下に合わせるように冷え込んでいくばかり。だって、アトレティコはほとんどチャンスを作れないどころか、時間が経つにつれてパスさえまっとうに繋がらなくなっていくんですよ。後半など、もうほとんど最初から1点差での逃げ切りを考えているように、プレーのリズムが落ちていく一方で、シュートなど、ガイタンと交代したカラスコがGKアダンの正面を突いた1本ぐらいだったかと。

▽幸い相手のベティスに決定力がなく、数日前に髪をプラチナブロンドに染めたセバージョスは活発だったものの、ルーベン・カストロの数度に渡るシュートはGKモヤが処理して失点は免れていました。ただ、どんどん消極的になっていくホームチームには、とうとうpito(ピト/ブーイング)もスタンドからチラホラ聞こえるように。その件に関してシメオネ監督は、「とりわけ89分のコケのプレーだろう。敵エリア前でゴールに向かわず、クロスを上げないでボールをキープすることを選んだ。Me parecio fantastico/メ・パレシオ・ファンタスティコ(私には素晴らしく思えたね)」と言っていましたけどね。時間稼ぎのため、アディショナルタイムにグリーズマンをヒメネスに代えていた辺りからも、今のアトレティコは上位ではないチームが相手でさえ、なりふり構わずいかないと勝てないというのはちょっと悲しかったかと。

▽そのおかげもあって1-0で試合は終了。リーガ3連勝とした彼らでしたが、どうやら開き直ってしまったようで、アトレティコの不遇時代にも詳しいキャプテンのガビなど、「A la gente le gusta que juguemos bien, pero sobre todo que ganemos/ア・ラ・ヘンテ・レ・グスタ・ケ・フゲモス・ビエン、ペロ・ソブレ・トードー・ケ・ガネモス(ファンはボクらがいいプレーをするのが好きだが、何より勝つのが好きなんだ)。2回続けてパスをミスると、イライラしたファンからブーイングも受けるけど、自分たちは慣れているよ」とコメント。

▽いや、そこはパスミスに慣れたらダメでしょと、私も突っ込みたくなったんですけどね。「Lo más importante es ganar, el fútbol lindo ya llegará/ロ・マス・インポルタンテ・エス・ガナール、エル・フトボル・リンドー・ジャー・ジェガラ(一番大事なのは勝つこと。美しいサッカーもそのうちできるさ)」と言う、すでにアトレティコ2年目でスペイン語がペラペラになったモンテネグロ人のサビッチのように、楽観的に考えることも必要ですよね。

▽そして翌日、シメオネ監督の「Alguna duda de que lo que importan son los resultados? Mira quién gana el Balón de Oro/アルグーナ・ドゥーダ・デ・ケ・ロ・ケ・インポルタン・ソン・ロス・レスルタードス?ミラ・キエン・ガナ・エル・バロン・デ・オロ(結果が大事だということに何か疑問があるかい? 誰がバロンドールを獲ったか、見てみればいい)」という言葉ももっともだなという思いに駆られました。というのも、この1月にコパ16強の2試合に続いての同カードとなったお隣さんのセビージャ戦を見たせいで…。最初は「Nos sorprendió la línea de tres de ellos/ノス・ソルプレンディオ・ラ・リネア・デ・トレス・デ・エジョス(相手の3人のラインにウチは驚かされた)」というサンパオリ監督同様、私もスタメンを知って、呆気に取られたんですけどね。

▽そう、ジダン監督は「Había que cambiar después de jugar tres partidos en 10 días/アビア・ケ・カンビアール・デスプエス・デ・フガール・トレス・パルティードス・エン・ディエス・ディアス(10日間で3度目の対戦だから、変える必要があった)」と、今季はリーガでも多くのチームで見られるCB3人プラスSBのDF5人体制を採用。うーん、そこまで4人DFでコパ1stレグ3-0、2ndレグ3-3と負けていないのですから、素人目には別にヴァラン、セルヒオ・ラモス、ナチョを並べるまでもないかと思ったんですけどね。それにも関わらず、前半のマドリーの動きは美しかったことと言ったらもう。

▽どの選手もワンタッチでスムースにボールを繋いでいくのに、私が前日の誰かさんのお寒いサッカーとは雲泥の差を感じてしまったのはともかく…。逆に「CBを1人減らし、ボランチを増やして、中盤の人数的優位を狙った」サンパオリ監督のセビージャも、「Increíble. En mitad de la cancha fue un pulpo tanto para recuperar como para jugar/インクレイブレ。エン・ミタッド・デ・ラ・カンチャ・フエ・ウンプウポ・タントー・パラ・レウペラール・コモ・パラ・フガール(信じられないほどだ。ピッチの真ん中ではボールを取り戻すのにもプレーを組み立てるにもタコのようだった)」とお褒めの言葉を賜ったエンゾンジを中心に、レベル的に負けていなかったのは凄いんですが。どちらも得点チャンスにはあまり結び付けられずにハーフタイムを迎えることに。そういう意味では、マドリーにはルーカス・バスケスが、セビージャにはCFがいないのが響いていたのかもしれません。

▽後半もしばらくは同じ展開だったのですが、形勢がマドリーに傾いたのは65分のこと。エスクデーロのミスからボールを奪ったカルバハルがエリア内に突入したところ、GKセルヒオ・リコが彼を倒してPKを宣告されてしまったから、セビージャの選手はもとより、サンチェス・ピスファンのスタンドがどんなに抗議したことか…。そのPKをラモスではなく、その日はもちろんクリスチアーノ・ロナウドが蹴る前に、「ちょっとバランスを崩してやろうと思って」と、ビトロがPKマークの辺りの芝を足で荒らしていたため、怒ったロナウドがボールを相手の背中にぶつけるという珍しい光景もあったんですが、当人への心理的に影響はまったくなし。キックはしっかり決まって、マドリーが先制点を奪ったんです…。

▽でも、本当にこの試合は“逆”という言葉が相応しい出来事が多かったんですよ。木曜日のコパでは3-1にされても諦めなかったのはマドリーでしたが、その日の彼らは「después del gol nos hemos relajado/デスプエス・デル・ゴル・ノス・エモス・レラハードー(ゴールの後、ウチは気を緩めてしまった)」(マルセロ)ようで。中には「no hemos sabido menejar los tiempos del partido/ノー・エモス・サビードー・マネハル・ロス・ティエンポス・デル・パルティードー(ボクらは試合の時間をコントロールすることを知らなかった)」(ラモス)という意見もありますけどね。そこは天下のマドリーですから、恥ずかし気もなく1点を守り倒すお隣さんとは心構えが違っていても仕方ない?

▽実際、それ以上に失点にも気落ちせず、ヨベティッチ、サラビアとアタッカーをつぎ込んだサンパオリ監督のチームの熱意が勝ったとも言えますが、85分には先日の試合で同じような時間帯に物議を醸すPKゴールを決めたラモスが再び得点。ただし、この日は方向が逆で、サラビアのFKを小柄なイェデルに先んじてヒットしようと、ヴァランを押しのけてジャンプした弾みにGKケイロル・ナバスを破ってしまったから、さあ大変! いやもう、キックオフ前から悪口のカンティコ(節のついたシュプレヒコール)やブーイングを彼に浴びせるのに余念のなかったセビージャファンたちも、これには拍手喝采するしかなかったかと。

▽そしてさらにマドリーの専売特許である奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)はアディショナルタイム2分のことですよ。今度はカルバハルからスローインを受け取ったベンゼマが、ビトロにボールを奪われそのパスがヨベティッチの下へ。するとエリア外から撃ったシュートがナバスの手を弾いてネットに突き刺さり、土壇場でセビージャに決勝点が入るなんて!! いや、マドリーがそれをやるのは私も見慣れているんですけどね。まさか、逆に敵にやられる日が来るなんて、思ってもみませんでしたっけ。

▽うーん、確かに2-1で負けてしまえば、せっかくの無敗試合もスペイン新記録となった40となった途端に終わりですし、あれだけいいプレーをしたのも意味なく思えてしまえなくはないんですけどね。マドリーに「Le ha faltado cinco minutos/レ・エ・ファルタードー・シンコ・ミヌートス(足りなかったのは5分間)」というジダン監督は、「Sabíamos que iba a pasar un día de estos/サビアモス・ケ・イバ・ア・パサール・ウン・ディア・デ・エストス(こういう日の1つでは起こるだろうことはわかっていた)」と、記録が途絶えたことには達観していたものの、せっかくベンチにはルーカス・バスケス、モラタ、アセンシオ、マリアーノと強力なアタッカーが揃っていながら、クロースをコバチッチに代えただけで、交代枠を使い切らなかったのにはちょっと後悔が残るかと。

▽まあ、彼らにはあまり悔やんでいる時間もないんですけどね。というのもこの水曜日午後9時15分(日本時間翌午前5時15分)にはコパ準々決勝1stレグのセルタ戦が控えているからで、相手もこの週末はアラベスを1-0で破り、コパ16強対決のバレンシア戦含め、今年になっての4試合全勝中と好調を維持。昨季など、うっかり者のマドリッドのライバルが同じ準々決勝で後れを取ったなんて前例もあるため、絶対的に彼らの方が格上だとしても油断は禁物です。ただ、月曜日のバルデベバス(バラハス空港の近く)での練習では、前節のグラナダ戦で打撲を受けてこのセビージャ2連戦にはお休みしたイスコも合流していたようですし、ローテーション好きのジダン監督はまた前線のメンバーを変えてくるかもしれませんね。

▽一方、木曜日午後7時15分(日本時間翌午前3時15分)から、同じコパでエイバルをカルデロンに迎えるアトレティコも日曜日を休養日にした後、月曜日の夕方から練習を再開。しかしセッション開始から20分でマハダオンダ(マドリッド近郊)の施設がapagon(アパゴン/停電)に見舞われるという逆境が…。その後、数分だけ復旧したようですが、またグラウンドの灯りが消え、ジムも同様だったため、選手たちは真っ暗なロッカールームで着替えて、家路をたどることになったとか。うーん、これでまた、火曜日と水曜日の練習だけでやはり、前節はスポルティングに2-3と勝利。セルタに続く9位と、そこそこのところに付けているチームを相手にするのは気が重いんですが、今は辛抱の時。いくら寒いスタンドで彼らのプレーを見るとますます寒くなっても、何とか勝ってくれれば、応援する甲斐はあるってもんですよ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2017年1月17日(火)13:20

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