★【原ゆみこのマドリッド】この気候は辛い…

▽「来週はもうあんな思いしなくていいのね」そんな風に私がホッとしていたのは金曜日。コパ・デル・レイが行われる水曜日にはこの大寒波も和らぎ、気温が少しは上がっているのを週間天気予報で確認した時のことでした。

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▽「来週はもうあんな思いしなくていいのね」そんな風に私がホッとしていたのは金曜日。コパ・デル・レイが行われる水曜日にはこの大寒波も和らぎ、気温が少しは上がっているのを週間天気予報で確認した時のことでした。マドリッドの両雄、ついでに言えば、火曜日に試合となる弟分のアルコルコンも揃って準々決勝2ndレグはアウェイ戦。自分は近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でぬくぬくして見ていればいいんですけどね。3チームとも北方面に行くという懸念はあるものの、とりわけremontada(レモンターダ/逆転劇)が必要とされるアトレティコ以外の2チームは、少しでも暖かい方がプレーしやすいんじゃないかと思ったから。

▽水曜日に行われた準々決勝1stレグでアルコルコンが0-2と負けてしまったのは悔しいものの、リーガ2部では18位と降格圏のすぐ上。もうコパなどで道草をしないで、早々に順位を上げることに専念するべきじゃないかって? まあ、その通りですが、奇しくも相手のアラベスはこの土曜日に、すでにミッドウィークはフリーとなっているレガネスと対戦。

▽ここでコパをプレーしたツケが出て、マドリッドの兄弟分に7試合ぶりのリーガ勝利をプレゼント。さらにその疲れから、アルコルコンに逆転勝ち抜けを許してしまうなんていうのは、私が勝手に書いた都合のいいシナリオなんですが…。後者はともかく、なかなか16位から上昇できないレガネスにはようやくルビン・カザニから、以前はマラガで活躍していたFWサム・ガルシアも到着しましたしね。シーズン前半戦ラストとなるこの試合、何とか勝ち点3を獲得して、後半戦での残留確定に弾みをつけてほしいところです…。

▽一方、気温零度近辺という極寒の中、私がこの水曜日、木曜日と、上下でヒートテックを重ね着してスタジアムに行ったレアル・マドリーとアトレティコのコパの試合はどうだったかというと。結果から言うと、両者の明暗は分かれてしまったんですが、天井に暖房があるため、幾分、寒さがマシだったサンティアゴ・ベルナベウにセルタを迎えたマドリーは、後でカゼミロも「La derrota de Sevilla nos ha hecho daño/ラ・デロータ・デ・セビージャ・ノス・ア・エッチョー・ダーニョ(セビージャでの敗北がボクらに打撃を与えた)」と言っていたように、日曜日のリーガ戦で40試合連続無敗が途切れたショックから抜け切れていなかった様子。

▽ええ、キックオフからバライドスでの2ndレグを考えていたセルタはずっとスローなテンポでプレーしていたんですけどね。それに対してマドリーも「ウチは準備していたようにやらなかった。とりわけスタート時に激しいプレーをすることをね」とジダン監督も言っていましたが、相手に合わせてしまったのか、その日の彼らは目が回りそうになったセビージャ戦とはまるでスピードが別物。ベンゼマやモラタをベンチに置き、2015年1月にアトレティコに敗退して以来のコパ出場となったクリスチアーノ・ロナウドをCFにした布陣も当たらなかったか、前半は両チームとも無得点に終わることに。

▽ゲームが動いたのは後半の半ばで、最初の45分は相手のボール回しに苦しんだというセルタが「en la segunda ajustamos el marcaje/エン・ラ・セグンダ・アフスタモス・エル・マルカヘ(後半はマークを調整した)」(ベリッソ監督)が良かったんでしょうかね。64分、左サイドを疾走したボンゴンダがクロスを入れたところ、マルセロが踵でクリアしたボールがPKマーク付近にいたイアゴ・アスパスの正面へ。ここ12試合で12得点を決めている絶好調のFWがそんなおいしいチャンスを失敗するはずもなく、そのシュートで易々セルタに先制されたとなれば、スタンドで寒さに耐えていた観客の体感温度が一気にマイナスまで下がったのは間違いない?

▽でもそんなのは序の口です。いえ、70分にはモドリッチのクロスがマジョに跳ね返されたのをマルセロがvolea(ボレア/ボレーシュート)。ボールがロンカリアの背中に当たり、汚名返上の同点ゴールとなったんですけどね。その直後、セルタのキックオフからほとんど間を置かず、ルーカス・バスケスがアスパスにボールを奪われてしまったから、さあ大変!「Era una contra, tenía que elegir entre seguir o dársela a Jonny, y vi que Ramos dudó/エラ・ウナ・コントラ、テニア・ケ・エレヒル・エントレ・セギール・オ・ダールセラ・ア・ジョニー、イ・ビ・ケ・ラモス・ドゥド(カウンターで、自分はそのまま行くか、ジョニーにパスするか選ばないといけなかったんだけど、ラモスが迷うのを見てね)」という当人は後者を選択。小柄な左SBの一撃が勝ち越しゴールとなってしまった日には、勇気を振り絞って、家から出て来たファンも後悔していたかも。

▽いやあ、その後も同点ゴールを求めてジダン監督がダニーロをベンゼマと交代したところ、ブラジル人右SBの働きに不満だったスタンドからpito(ピト/ブーイング)は飛ぶわ、セビージャ戦で相手の決勝点のキッカケとなるボールロストをしたFWはゴール前からのシュートを天高く撃ち上げてしまうわ、もう散々だったんですけどね。結局、引き分けることもできずに1-2で負けて、マドリーが2連敗とはまったく珍しいこともあるじゃないですか。

▽ただ問題は、セビージャに負けてもリーガ首位の座に影響はなかった彼らですが、コパの2試合制の対戦で1stレグにホームでこのスコアで負けた場合、これまで逆転勝ち抜けしたことがないということで、いえ、ベリッソ監督も「Tendremos que jugar en Vigo mejor que hoy/テンドレモス・ケ・フガール・エン・ビーゴ・メホール・ケ・オイ(ビーゴでは今日よりいいプレーをしないといけないだろう)。どんな大差の結果でもマドリー相手には落ち着いてはいられないのだから」と、あまり強気ではありませんでしたけどね。

▽その上、昨季もセルタはアトレティコを準々決勝で破り、久々の快挙に沸いたものの、準決勝ではセビージャにあっさり負けてしまったなんてこともあったため、「Si eliminamos al Madrid, pensaremos en el título/シー・エリミナモス・アル・マドリッド、ペンサレモス・エン・エル・ティトゥロ(マドリーを敗退させたら、タイトルのことを考えるよ)」(ボンゴンダ)という訳にもいかないのは百も承知でしょうが、ここに来て、マドリーにはカルバハルが太ももの負傷で3、4週間の離脱という逆境も発覚。ジダン監督は「ベルナベウのファンは誰でもブーイングするが、マスコミの書いていることは公平じゃない。No estoy al 100%, sino al 1.000% con Danilo/ノー・エストイ・アル・シエン・ポル・シエントー、シノ・アル・ミル・ポル・シエントー・コン・ダニーロ(自分は100%でなく、1000%ダニーロの味方)」と言っていましたけど、現実的には辛い面もありそうな。

▽とはいえ、すぐ次の試合はリーガのマラガ戦ですからね。昨年最後の日程が終わった後、ファンデ・ラモス監督を解任、“ガトー”・ロメロ監督が率いて2戦目となる彼らはデミチェリスが出戻りでエスパニョールから加入したものの、まだ調子が上向いてきた兆しは感じられず。順当ならば、土曜日午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)からのベルナベウでは、キックオフ時間がコパより早い恩恵もあって、ファンもずっと気分良く過ごせるのでは? 幸い、セルタ戦で右手をロンカリアに踏まれ、痛みで途中交代したアセンシオも骨折はなく、無事回復したようですし、ロナウドだってそうそう、不調が続く訳でもないでしょうから、水曜日のレモンターダに向けて、勢いがつくゲームができればいいですね。

▽そして翌木曜日、ビセンテ・カルデロンに暖房がないことを鑑みて、裏起毛160デニールタイツをボトムに追加した私が観戦したエイバル戦は、プレー的には決してアトレティコが上手になったとは言えないんですけどね。凍えるピッチで足がかじかんでいたか、またしてもパスミスは多かったんですが、どうやら相性のいいチームだったのが良かったよう。そう、エイバルのメンディリバル監督も「アトレティコは敵のミスを誘い、それを利用する。En Liga pasó lo mismo/エン・リーガ・パソ・ロ・ミスモ(リーガでも同じことが起きた)」と言っていましたが、リーガ2節前の対戦同様、最後は快勝のスコアになってしまったから、何ともありがたいじゃないですか。

▽いえ、私も19分まで、fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)の応援団が来季からのクラブ紋章のデザイン変更に反対する抗議行動で、ただでさえ、観客の少なかったスタジアム中に静けさが漂っていた時はどうなることやらと気が気ではなかったですけどね。24分にコケのFKから入ったサビッチのゴールがオフサイドで取り消された3分後、今度は同様のFKからヒメネスがヘッド。これに飛び出したGKジョエルのミスを突いて、グリーズマンが頭でゴールをゲットしてくれます。後半は後半で、第2FWとして先発したカラスコが59分に疾走、ゴール左前まで来ていざシュートとなった時、ガルベスとピニャに軌道を塞がれて、2度も失敗していたのには呆れましたが、こぼれ球をコレアが素早く押し込んでくれたため、無事に2点目もゲットすることに。

▽さらに67分にはまたしてもセットプレーが成功したんですが、この時はコケのCKをヒメネス、グリーズマンと頭で繋いで、最後はコレアから代わったガメイロがやはりヘッドでフィニッシュ。これでもう3-0ですからね。ヒメネスなどは「No está cerrado, cualquier equipo en LaLiga te puede hacer tres goles/ノー・エスタ・セラードー、クアルキエル・エキポ・エン・ラ・リーガ・テ・プエデ・アセール・トレス・ゴーレス(まだ勝負はついていない。リーガのどのチームでもウチから3点取れるんだから)」なんて、ちょっと情けないことを言っていましたが、シメオネ監督はもう十分と踏んだんでしょう。

▽その後はカラスコやガイタンに代え、ガビやゴディンをピッチに入れて、通常以上に攻撃的だった布陣を引き締めていましたが、アウェイゴールを与えなかったのは大正解。おかげで乾貴士選手は出ていたものの、負傷者が多く、あまり反撃に人員をかけられなかったメンディリバル監督も「Es muy difícil hacerles un gol, más, tres/エス・ムイ・デフィシル・アセールレス・ウン・ゴル、マス、トレス(彼らから1点を取るのは大変、まして3点なら)」とどこか、諦めモードになってくれていましたし、彼らには週末にバルサ戦も控えていますからね。イプルア(エイバルのホーム)での2ndレグは、あまりアトレティコが体力を使う必要ない試合になってくれる?

▽だって、この日曜日にはサン・マメスでアスレティックに挑まないといけないシメオネ監督のチームなんですよ。しかもミッドウィーク中は努めて忘れるようにしてはいますが、現状は首位のお隣さんと、消化試合が1つ多い状態で勝ち点差6の4位。2位のバルサとも5差、3位のセビージャとも4差、その上、5位には2差でレアル・ソシエダ、6位には3差でビジャレアルが迫っているとなれば、決して落ち着いていられる事態ではないのは明白でしょう。うーん、木曜日にコパ1stレグでバルサに0-1で負けたソシエダはメッシに2枚目のイエローカードが出なかったことなどもあって、2ndレグでのリベンジに燃えているでしょうから、セルタと当たる今節は気にしなくてもいいかもしれませんけどね。

▽プランデッリ監督が昨年末、いきなり辞めてしまった後、再び暫定監督を務めていた、本職、チーム付き役員のボロ氏が正式にシーズン末まで引き継ぐと決まったバレンシアと対戦するビジャレアルは勝つかもしれませんし、それより何より、アスレティックは今週、試合をしていませんからね。たとえ、エースのアドゥリスと司令塔のベニャトが出場停止でも、決して軽視していい相手ではないかと。そんなアスレティックvsアトレティコ戦は日曜日午後4時15分キックオフ。金曜日のレサマ(アスレティックの練習場)は雪に覆われて、チームも室内トレーニングしかしていませんでしたが、この週末もまだ寒波が続くスペイン。積雪で延期になる試合がないといいのですが。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2017年1月21日(土)12:55

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