★【原ゆみこのマドリッド】ゴールを決めれば問題ない…

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▽「まだPK戦がないだけいいわね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、夜のニュースでバイアレナで練習するアトレティコの選手たちを見た時のことでした。いやあ、もちろん1stレグとはいえ、プレー中にPKが発生する可能性はあるんですけどね。

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▽「まだPK戦がないだけいいわね」そんな風に私がホッとしていたのは月曜日、夜のニュースでバイアレナで練習するアトレティコの選手たちを見た時のことでした。いやあ、もちろん1stレグとはいえ、プレー中にPKが発生する可能性はあるんですけどね。データを見たところ、今季9本中6本を失敗しているアトレティコに負けず劣らず、このCLベスト16で当たるレバークーゼンもPKが苦手。ここまで6本中成功したのがたったの1本しかなく、その時のキッカーだったチャノハノールはFIFA処分で4カ月の出場停止中と聞きますし、2年前のCL準々決勝の時にはレアル・マドリーにいて、2ndレグでアトレティコの敗退を決める2試合中唯一のゴールを挙げたチチャリートもすでに2度失敗しているとか。

▽更に振り返ってみれば、そのシーズンもアトレティコは同じラウンドでレバークーゼンと対戦。それぞれホームで1-0と勝った後、もつれ込んだPK戦を制して、かろうじて勝ち抜けたんですが、そのスコアが3-2って、どちらのチームもかなり低水準じゃない?いえ、昨季のアトレティコはPSVとのベスト16でまたしてもPK戦に突入し、その時はサドンデスまで行ったものの、8人全員が成功したという実績は作りましたけどね。結局、決勝では5人目のファンフランがシュートをポストに当て、再びお隣さんの前に涙を呑んでいることを考えれば、火曜は肩の脱臼がようやく治ったオブラクになるか、継続路線でモヤとなるか、先発GKはまだわからないものの、やっぱりPK絡みで勝つのは計算に入れない方がいいかと。

▽え、先週末の彼らの試合を見る限り、1stレグからPK戦突入を心配するような景気の悪い展開にはならないんじゃないかって?うーん、それはちょっと微妙なところで、土曜のスポルティング戦は最終スコアこそ、1-4と大勝ですが、正直、前半など、何もなかったんですよ。それどころか、ハーフタイム直前にはこの冬の移籍市場で加わった、2メートル3センチの長身FWラシナ・トラオレの一撃がゴールポストに当たったりと、さすが2000年代に入ってからの7試合でアトレティコが1勝しかしていないのは理由があるのかと納得させられたんですが、この日はロッカールームで”モノ”・ブルゴス第2監督がjugada de estrategia/フガダ・デ・エストラテヒア(戦術プレー)の復習をしてくれたんでしょうかね。

▽それは後半開始直後のことでした。グリースマンが1人キックオフで自陣に蹴ったボールをガビが狙いを定めてロングパス。フェルナンド・トーレスの頭を経由してボールが落ち、カラスコが敵エリア内に持ち込んでシュートしたところ、GKクエジェルも一応、止めようとはしたんですけどね。手に当たったボールが彼の背後に転がって、それをすかさず回り込んだカラスコがダメ押ししてゴールラインを割ってくれたから、ビックリしたの何のって!うーん、最近はリーガ優勝した2年前など、面白いように入ったCKからのセットプレーもあまり成功していませんでしたからね。折しもヘッドに強いゴディンが負傷で休場中ということあり、レパートリーを少し広げてみたのが成功した?

▽でも、その後がダメだったんです。というのも3分には守備陣の隙を突かれ、ブルギのクロスをセルヒオ・アルバレスにフリーでエリア内から決められ、あっという間にスコアは同点に。これでまたしても停滞状態に陥ってしまったため、シメオネ監督も考えたんでしょうね。15分にはトーレスとコレアをガメイロとサウルに、続いてカラスコをトマスに代えて、「podiamos lastimar con menos gente arriba y ganando el medio/ポディアモス・ラスティマール・コン・メノス・ヘンテ・アリバ・イ・ガナンドー・エル・メディオ(前線の人数を減らして、中盤を支配することで打撃を与えられる)」(シメオネ監督)体制にシフトしたところ…。

▽「Los espacios iban a estar/ロス・エスパシオス・イバン・ア・エスタル(スペースは生まれるはずだった)。スポルティングは勝つために上がる必要があったからね」という監督の読みが当たり、ガメイロの1人舞台が始まったのは、もう私など、「またムダなところで勝ち点落として、本当にワンダ・メトロポリターノでヨーロッパリーグをプレーすることになっても知らないから」とプンプンしていた34分のことでした。そう、まずはグリースマンがエリア前から繋いだスルーパスから、GKをかわして勝ち越し点を決めると、その1分後にはCBメレが自陣エリア近くにいたトマスに誤ってぶつけてしまったボールを拾って再びゴール。更に39分にも今度はセンターライン前からグリースマンが放ったロングパスを追って抜群の決定力を披露と、おやおや、この人、5分もしないうちにハットトリックじゃないですか!

▽いやあ、リーガ2番目に短い時間での3得点のおかげで、無事に勝ち点3を獲得した後、「Estos goles son para mi abuela, que ha fallecido esta semana/エストス・ゴーレス・ソン・パラ・ミ・アブエラ、ケ・ア・ファジェシードー・エスタ・セマーナ(このゴールは今週、帰らぬ人となったボクの祖母に捧げる)」とガメイロが言っていたため、翌朝、私がいつも新聞を買う売店のアトレティコファンのお兄さんが、「それなら毎週、誰か親戚に死んでもらわないと」と言っていたのは、あくまでブラックジョークのつもりだったと思いますけどね。先日のコパ・デル・レイ準決勝バルサ戦2ndレグでは痛恨のPK失敗、その後ゴールを入れたものの、アトレティコが逆転突破できなかったため、翌日は1人、PK練習に励むぐらい、ガメイロも頑張っていますからね。

▽丁度CL決勝トーナメントという、今季まだ優勝の可能性がある大事な試合も始まりますし、このハットトリックが、2014年夏にレアル・ソシエダから加入して、12月までは泣かず飛ばずだったグリースマンがアスレティック戦で決めた3ゴールをキッカケに、チームの中心アタッカーに成長したような効果をガメイロにもたらしてくれることを今は祈るばかり。ちなみに火曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのレバークーゼン戦でシメオネ監督は先発CFをトーレスにするか、ガメイロにするか明言せず。あとは当日、午前11時に彼女との相互DV訴訟で出廷するCBルカスがプライベートジェットを使い、恙なくキックオフ前にバイアレナに着いてくれるといいんですが、さて。

▽何にしろ、前日記者会見でシメオネ監督も「Muchas veces el talento es importante, pero el corazón y la ilusión a veces tienen más lugar en el fútbol/ムーチャス・ベセス・エル・タレントー・エス・インポルタンテ、ペロ・エル・コラソン・イ・ラ・イルシオン・ア・エセス・ティエネン・マス・ルガール・エン・エル・フトボル(サッカーでは多くの機会で才能が重要だか、時にハートと夢見る気持ちがより大きく影響することがある)」と言っていましたしね。2年前のリベンジに燃えている相手に憶することなく立ち向かい、とにかくアウェイゴールを決められるといいですね。

▽そしてまたリーガに戻ると、土曜はアトレティコ戦の後、サンティアゴ・ベルナベウへ向かった私でしたが、マドリーvsエスパニョール戦の見せ場も後半まで待たされることに。いえ、先週ミッドウィークのCLナポリ戦から先発を6人変更したジダン監督だったものの、ベンゼマの代わりにCFとして先発したモラタが気を吐いて、前半33分にはイスコのクロスからヘッドで先制点を挙げていたんですけどね。リードされてもエスパニョールがgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)さえ、避けられれば御の字という戦術を貫いていたため、どうにも盛り上がりに欠けてしまった感は否めません。

▽そんな中、何がクライマックスになったかというと、昨年11月のCLスポルティングCP戦で足首を痛め、戦列を離れていたベイルが88日ぶりに復帰。しかも後半25分にピッチに入ったと思いきや、38分にはカウンターからイスコのスルーパス目掛けて全力疾走、あれよあれよという間にGKディエゴ・ロペスに迫り、ゴールを決めているのですから、ジダン監督が「No hay otro como Bale, es especial/ノー・アイ・オトロ・コモ・ベイル、エス・エスペシアル(ベイルのような選手は他にいない。特別だ)」と褒めていたのも当然だった?

▽それでも本人よると、「100%に回復するにはあと2、3週間必要」らしいんですけどね。近頃ではクリスチアーノ・ロナウドがアシスト役に目覚めたせいか、数年前のような驚くばかりのスピードを見せてくれる機会も減ってきていますしね。脚力自慢のベイルが戻ってきてくれたことで、マドリーのプレーが速くなるのは私も大歓迎。ただ、一方のエスパニョールも本来なら、決してカウンターで負けているチームじゃなかったんですが、まだ1点差だった時、交代となったアトレティコ時代からキケ・サンチェス・フローレス監督の下にいたフラードーなど、テレテレ歩いてピッチを出て行ったりと、不可思議な行動が散見。よって、最後は2-0でマドリーの勝利と、「El equipo fue conformista y el resultado es logico/エル・エキポ・フエ・コンフォルミスタ・イ・エル・エル・レスルタードー・エス・ロヒコ(チームは現状に安穏としてしまったのだから、この結果は論理的)」(ディエゴ・ロペス)というのも仕方なかったでしょうね。

▽そんなマドリーはこの試合で珍しく途中交代したナチョもただ、横っ腹が痛くなっただけとわかり、月曜にはナポリ戦での打撲でお休みしていたセルヒオ・ラモスも全体練習に戻ったため、ジダン監督はチーム24人全員をこの水曜のバレンシア戦で使えることに。ええ、これは昨年12月、彼らがクラブW杯参加のため延期されていた分の試合なんですけどね。CL開催週に割り込ませたため、セビージャがレスターシテイを迎える午後8時45分前に終わるよう、平日にも関わらず、午後6時30分(日本時間翌午前2時30分)という早い時間にキックオフというのは、メスタジャ(バレンシアのホーム)の客の入りに関係するかも。

▽加えてバレンシアは今週末、木曜に迫るアポエルとのEL32強戦2ndレグに備え、36歳のエース、アドゥリスを先発に使わず、途中出場してもらった途端、ケガで退場となったアスレティックに2-0と勝利して、自信を高めていますしね。ただ本職、チーム付き役員のボロ氏が正式に監督になってからも成績は安定していないチームのため、マドリー優位は揺るがないかと思いますが、この冬、セルタから加入したオレジャナには要注意。早くも頼りになる戦力になっているため、折り合いが悪くて放出を決めたベリッソ監督も、0-1でシャフタールに負けた1stレグを逆転しないといけない木曜のウクライナ遠征を前にちょっと後悔しているかも。

▽そしてマドリッド勢のリーガ戦、最後は日曜に新弟分のレガネスがカンプ・ノウでバルサに挑んだんですが、ええ、一応私も近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)に行って観戦していたんですよ。それでも前半3分にはルイス・スアレスのラストパスからメッシに先制点を決められて、早くも家に帰りたくなったのも事実ですけどね。その先はミッドウィークの試合がないにも関わらず、もしやこの日曜にリーガでアトレティコと当たるのを警戒したんでしょうか。ルイス・エンリケ監督が先週、ベストメンバーで挑んで4-0で大敗したCL、PSG戦から4人スタメンを変えたところ、どうやらマドリーの控え選手とバルサのそれは少々レベルが違うよう。

▽実際、序盤は大舞台に足がすくんだか、目も当てられなかったレガネスですが、時間が経つにつれ、MSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)の消極性も手伝ってか、むしろより多く攻撃している側に。それでも前半、新戦力のエル・ザール(この冬、ラス・パルマスから移籍)が2回連続で放ったシュートがGKテア・シュテーゲンにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまうなど、なかなか得点はできなかったものの、とうとう後半25分には敵陣エリア付近でセルジ・ロベルトからボールを奪い、マチスのアシストでウナイ・ロペスが同点ゴールをゲット!その瞬間、お店にいたお客さんたちから歓声が沸き上がったため、1部の新参者でもやっぱりマドリッド市民はレガネスを応援しているんだと、私も嬉しくなったんですが…。

▽44分、マントバーニがエリア内でネイマールを倒し、PK献上はないですよね。いえ、当人は後で「No veo lo que hace el/ノー・ベオ・ロ・ケ・アセン・エル(彼が何をしたのか、自分は見てない)けど、チームメートはまるで殺されでもしたかのように宙を舞ったと言っていた」と、相手のオーバーリアクションを非難していましたけどね。そのキャプテン自身、AS(スポーツ紙)などには「イエローカード2枚で退場になる危険があった。もし退場になっていれば、ペナルティは犯さなかっただろうに」なんて翌日、評価されていたため、こればっかりはねえ。おまけにこの日はメッシがPKをしっかり決めてしまい、あと数分だったレガネスの勝ち点1は雲散霧消してしまいましたっけ(最終スコア2-1)。

▽でもまだ大丈夫。兄貴分がスポルティングに勝ってくれたおかげで、今週も彼らは降格圏から勝ち点2上の17位をキープしています。ただし、だんだん残り試合は減ってきていますけどね。PSG戦以来、イタリアの元名監督で一時、マドリーのスポーツディレクターも務めたサッキ氏などにも「王は死んだ。バルサはしばらく前から、昔の彼らではなくなっている」と言われ、低空飛行状態にあるとはいえ、強豪相手にあれだけ善戦したんですから、とりあえず土曜のデポルティボ戦で心機一転、残留確定への戦いを再開できるといいんですが。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

2017年2月21日(火)21:08

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