★【原ゆみこのマドリッド】大事な試合に勝った…

▽「今季絶望じゃなかったんだ」そんな風に私がホッとしていたのは月曜。セビージャ戦の開始2分でピッチを去ったアトレティコのヴルサリコの診断結果が出て、痛めた左ヒザの前十字靭帯は切れておらず、内側と後ろの部分断裂だったため、3、4週間で戻って来られることがわかった時のことでした。

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▽「今季絶望じゃなかったんだ」そんな風に私がホッとしていたのは月曜。セビージャ戦の開始2分でピッチを去ったアトレティコのヴルサリコの診断結果が出て、痛めた左ヒザの前十字靭帯は切れておらず、内側と後ろの部分断裂だったため、3、4週間で戻って来られることがわかった時のことでした。いやあ、最近はファンフランに代わって先発することも増え、デポルティボ戦でフェルナンド・トーレスが頭部を挫傷して意識を失った際にはガビと一緒に適切な緊急措置を実施。おかげで一気に知名度も高まり、最近のホームゲームはとうとうサポーターにカンティコ(節のついたシュプレヒコール)も作ってもらえたのを先日のAS(スポーツ紙)のインタビューで大層、喜んでいた当人だったんですけどね。

▽日曜の試合ではエスクデロと接触した後、負傷して交代を要請。自分の足で歩いてロッカールームへ続く階段を降りて行ったため、そんなに重傷ではないんだろうとその時は私も比較的楽観視。ただ後々、ちょっと昔のことですが、アルゼンチン代表としてスペインとの親善試合に出たマキシ・ロドリゲスがその試合で靭帯を断裂。ところがすぐにはコトの重大さに本人も気づかず、バレンシアだか、アリカンテだかから車でマドリッドに戻った後、ケガが発覚したなんて、信じられない例がアトレティコの選手にはあるのを思い出したため、ヴルサリコも正式な検査が終わるまでちょっとドキドキしていたものの、大丈夫。これなら、4月8日のマドリーダービーと12日のCL準々決勝レスター戦1stレグはきつくても、18日の2ndレグには間に合うってことじゃないですか。

▽加えて今週から、リーガはparon(パロン/休止期間)に入るため、クロアチア代表の先輩、モドリッチや後輩のコバチッチと旧交を温める機会は逸してしまう彼ですが、2週間は試合のことを考えずにリハビリに専念できますからね。もちろんその間、右SB担当がファンフラン1人になってしまうのは、もしもの時に不安ではありますが、アレイクス・ビダルが足首を脱臼し、今季は戻って来られず。おかげでセルジ・ロベルトしか、そのポジションにいなくなってしまい、最近ではSBを置かない3人CB制をもっぱら採用しているバルサを思えば、次のCLの相手がユベントスやバイエルンではなく、レスターだったなんて辺りも含め、最近のアトレティコって結構、ツイているのでは?

▽まあ、私がついつい浮かれてしまうのは先週末のリーガ戦の結果のせいもあるんですが…。とりあえず順を追って話していくと、一足早く、土曜にキックオフしたのはレアル・マドリー。サン・マメスでのアスレティック戦だったんですが、さすが相手は今季、ホームで負けたのがバルサだけとあって、序盤から拮抗した展開に。それでも前半24分にはカゼミロのパスを受けたクリスチアーノ・ロナウドがベンゼマに絶妙のアシストを送り、マドリーは1点をリードしてハーフタイムに入ります。とはいえ、64分にはアスレティクのエース、36歳のアドゥリスのヘッドが炸裂。自分で撃つシュートにはあまり精度がなかったウィリアウスのクロスをラウール・ガルシアが頭で折り返し、ゴール前からGKケイロル・ナバスが破られてしまったから、一時、試合の行方はわからなくなったものの…。

▽やっぱりキッカーにクロースを持つマドリーのセットプレーは最強です。何とその3分後にはCKからロナウドがヘッドで流し、ファーポスト側にフリーでいたカゼミロが決めて再び勝ち越してしまうのですから、楽なもんじゃないですか。うーん、その試合は前日、急性胃腸炎で夜中に病院に駆けつけ、点滴を受けていたせいか、ヘッドは決まらなかったものの、このところゴールを量産していたセルヒオ・ラモスをバルベルデ監督も事前に警戒。「CKの守備時のマークを変えて、ニアポストに2人でなく、3人置いた」ものの、「Cuando hay una peinada generalmente todo el mundo se descoloca/クアンドー・アイ・ウナ・ペイナーダ・ヘネラルメンテテ・トードー・エル・ムンド・セ・デスコロカ(誰かにヘッドされると大概、皆バラバラになってしまう)」って、いや、そこをしっかりケアするのがプロなのでは?

▽まあ、その辺が攻める方も守る方も難しいところなんでしょうが、意外だったのはその後、点差は増えなかったにも関わらず、ジダン監督が15分を残してロナウドをイスコに代えてしまったこと。その理由はまたしても「Al final buscamos mas equilibrio con el 4-4-2/アル・フィナル・ブスカモス・マス・エキリブリオ・コン・エル・クアトロ・クアトロ・ドス(最後は4-4-2のシステムでバランスを求めた)」(ジダン監督)と、BBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)先発時に露見する守備の欠点を補うためだったようですが、今回選ばれてベンチに戻る時の当人が、「Por que a mi? Fodase!/ポル・ケ・ア・ミー?フォダセ(何でオレが?ファックユー)」と悪態をついていたこともTVの映像で発覚しています。

▽それでもジダン監督は、「En el cambio de Cristiano no pasa nada, el puede salir de vez en cuando/エン・エル・カンビオ・デ・クリスティアーノ・ノー・パサ・ナーダ、エル・プエデ・サリール・デ・ベス・エン・クアンドー(クリスチアーノが交代したからって何も起こらない。彼も時々、代わることがある)」と平然。「試合に勝ったから、満足していた」そうなので、あまり気にしないでもいいかと。ええ、結局、そのまま1-2でアスレティックを下したマドリーはこの2週間、暫定とは言えど、バルサに首位を奪われて過ごす憂鬱から解放された上、残り試合で一番厳しいと言われていたアウェイ戦で取りこぼしせずに済みましたからね。となれば、もう6年ぶりのリーガ優勝までの道筋もかなり見えて来た?

▽一方、他のマドリッド勢は日曜試合となったんですが、正午にミチェル新監督が率いるマラガをブタルケに迎えた新弟分のレガネスはゴールを奪うことができず、スコアレスドローで終了。順位も降格圏ギリギリの17位は変わらず、すぐ下のスポルティングとの勝ち点差5と、まだ危うい状態で、残留確定目安の勝ち点40まで、残り10試合であと14ポイント溜めないといけないのはいささか不安かと。いえ、下のチームとの兼ね合いですから、必ずしもそこまで達しなくてもいいんですけどね。来季には現在、2部でプレーオフ出場圏の6位にいるヘタフェも戻って来て、マドリッド1部4チーム体制が復活するのを望んでいる、私のようなファンもいるため、レガネスもこの2週間を最大限に活用して、リーガ再開後の頑張りを期待したいところです。

▽そしてお昼ご飯を済ました後、私はビセンテ・カルデロンへ向かったんですが、その日がスペインでは“El Dia de Padre/エル・ディア・デ・パドレ(父の日)"だったのと、ここ数日、急に春めいてきた気候のおかげもあったんでしょうかね。後でシメオネ監督も「No parecia un partido de Liga, sino de Champions/ノー・パレシア・ウン・パルティードー・デ・リーガ、シノ・デ・チャンピオンズ(リーガ戦ではなく、CLのようだった)」と驚いていましたが…。いやあ、水曜にあったCL16強対決レバークーゼン戦2ndレグとはスタンドの熱気が雲泥の差。それもそのはず、相手は3位のセビージャで、ええ、今シーズン終了後にお別れOB試合の予定も決まっているスタジアムで8月にCLプレーオフを戦うなんて、間抜けな事態を避けるための“final(フィナル/決勝)"と、誰もが思っていた試合だったから。

▽それがいきなりヴルサリコの負傷でケチがついた時には少々、暗雲が立ち込めなかった訳ではありませんが、やはり向こうに先週、レスターに予想外の逆転負けをして、CL敗退となったショックが残っていたのがラッキーだったんでしょうかね。大した攻撃は受けず、序盤にはガメイロのシュートが枠を直撃するなど、惜しい場面はあったんですが、その日は何とも喜ばしいことに今季、リーガ20チーム中下から2番目に低いセットプレーからの得点率を記録しているアトレティコが往年の特技を思い出してくれたんですよ。そう、35分、エリア前右側でFKをもらったところ、珍しくキッカーをグリーズマンが務めたんですが、いやあ、プライベートでも仲がいいだけにあうんの呼吸なんですかね。見事にゴディンの頭にヒットして、先制点を挙げてくれたから、サポーターもどんなに盛り上がったことか。

▽おまけに60分にもグリーズマンはレアル・ソシエダ時代から、当時の同僚、GKクラウディオ・ブラボ(現マンチャスター・シティ)相手にセッション終了後も居残り特訓していたという直接FKの妙技を披露。これがゴールバーに当たって入り、2点目となってくれたとなれば、毎試合、GKとの1対1で失敗したり、絶好のチャンスで外したりしてしまうことがあるとて、やっぱり凄い才能の持ち主と認めるしかないかと。ええ、これにはサンパオリ監督も「cuando empezamos a controlarlos vino el gol a pelota parada/クアンドー・エンペサモス・ア・コントロラールロス、ビノ・エル・ゴル・ア・ペロータ・パラダ(ウチが試合をコントロールしだした時にセットプレーでゴールを奪われた)。後半も同じだった」と、悔やんでも悔やみきれないようでしたっけ。

▽その直後、シメオネ監督はガメイロと交代でトーレスをピッチに入れ、レバークーゼン戦の時、45分間アップをしながら、出場機会を与えなかったため、世間で取り沙汰された不仲説を払拭。うーん、これで彼が復活ゴールを決めてくれれば、この試合の結末として最高だったんですけどね。71分、カウンターからガイタン、カラスコと繋ぎ、ファンフランがエリア内右奥から撃ったシュートがGKセルヒオ・リコに弾かれた時、無人のゴール前にいたのは現在のチームで最多の4得点、セビージャキラーとして君臨しているコケ。さすがにこの状態で的を外すことはなく、チームの3点目を決めてくれます。

▽結果的にそのゴールで助かったのは85分、トーレスのvaselina(バセリーナ/ループシュート)が失敗したのに気を取られているうちに、セビージャの方のFWコレアが単独でGKオブラクを襲い、名誉の1点を取られてしまったせいで、何せ、シーズン前半戦では1-0で負けているアトレティコですからね。2-1だと、直接対決における得失点差がなくなってしまうところ、3-1であれば、最後に同じ勝ち点で並んだとしても相手を上回れるため、コケの3点目の功績は大きかったと言えましょう。

▽え、それより何より、重要なのは3節前には9ポイントまで開いていた3位との差が2ポイントに縮まったことじゃないかって? その通りで、「素晴らしいシーズンを送って、世間やマスコミから賞賛されているセビージャ相手だけに、el resultado ensalza aun mas el partido que hizo el Atletico/エル・レスルタードー・エンサルサ・アウン・マス・エル・パルティードー・ケ・イソ・アル・アトレティコ(この結果はアトレティコのやった試合を尚更、褒め称えるものになる)」とプレーには満足しつつも、「残り試合数から考えてまだ差は大きい」とシメオネ監督はあくまで慎重でしたけどね。チーム内には状況の急変にしれっと態度を翻す選手もなきにしもあらず。

▽何せ、一番最初に4位死守を口にしていたキャプテンのガビからして、この節、レアル・ソシエダとビジャレアルが負けていたせいもあるんですが、「El cuarto puesto ya queda lejos, ahora vamos a por el tercero/エル・クアルト・プエストー・ジャー・ケダ・レホス、アオラ・バモス・ア・ポル・エル・テルセーロ(4位はもうかなり遠のいた。今は3位を取りにいく)」ですもの。となれば、カンテラーノ(アトレティコB出身の選手)の後輩、コケが「Hemos dado un golpe en la mesa/エモス・ダードー・ウン・ゴルペ・エン・ラ・メサ(ボクらは机をガツンと叩いてやった/衝撃を与えるの意)」と、やたら大きく出ていたのもムリはなかった?

▽いえ、同じ後輩でも「チームのイメージ、一体感は凄く良かったけど、調子に乗っちゃいけない。Hay que pensar partido a partido, no perder la filosofia/アイ・ケ・ペンサル・パルティードー・ア・パルティードー、ノー・ペルデル・ラ・フィロソフィア(1試合1試合と考えて、フィロソフィを忘れてはいけない)」というサウルのように堅実な選手もいるんですけどね。実際、離れたと言っても5位との差は、アトレティコもセビージャとたったの2試合で詰めた5ポイントだけ。この先、後続との直接対決やマドリーダービーだってあるんですから、その時に泣きを見ないよう、選手たちが今の調子をキープしてくれるといいのですが。

▽ただ、今週からは16人招集されているお隣さんと同様、アトレティコも13人が各国代表に出向。バルデベバス(バラハス空港の近く)同様、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場でも活動は最小限になってしまうんですが、逆に大賑わいだったのは月曜のラス・ロサスのサッカー協会施設でした。ええ、スペイン代表の合宿が始まり、丁度、前日の父の日が祝日だったための代休で、子供たちに学校がなかったのが良かったんでしょうね。午後6時半からの公開練習ではスタンドに人が鈴なりになっていましたが、トレーニング自体は前日に試合をした選手が過半数だったため、比較的軽いものだったよう。

▽ちなみに今回、マドリーからの参加はラモス、カルバハル、ナチョ、イスコ、モラタの5人で、アトレティコからはコケの1名だけ。いえ、同日、同じ施設で合宿を始めたU21代表の方にはサウールが呼ばれ、再びアセンシオとの友情を深めていますけどね。若い子たちは夏のユーロ大会に向けたデンマークとイタリアの親善試合を2つこなすだけなのに比べ、大人の代表にはこの金曜日、2018年W杯予選のイスラエル戦が入っている分、ちょっと大変でしょうか。

▽その他、A代表で目新しいのはマドリーからソシエダに戻って、復調著しいイジャラメンディが初招集されたことと、これまでU21で活躍していたデウロフェウ(ミラン)の昇格。また、2016年のユーロ以来、ご無沙汰していたペドロ(チェルシー)が戻って来たことですが、何せ総勢25名と、ロペテギ監督のリストはいつも人が多いですからねえ。ヒホン(スペイン北部のビーチリゾート都市、スポルティングのホーム)での予選と、来週火曜にスタッド・ド・フランスで行われるフランスとの親善試合の2つで全員がプレーできるかは疑問。まあ、スペイン代表の情報はこれから追々伝えていきますが、彼らも同グループで現在、勝ち点が同じイタリアと10月マッチレースが続くため、楽な試合でも決して油断はできませんよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

2017年3月21日(火)11:25

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