★【原ゆみこのマドリッド】ラジオでは皆、よく喋る…

▽「これじゃ罰ゲームみたい」そんな風に私が同情していたのは木曜。雪が降りしきるマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で各国代表に招集されなかったアトレティコの選手たちがトレーニングしている風景をTVのニュースで見た時のことでした。

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▽「これじゃ罰ゲームみたい」そんな風に私が同情していたのは木曜。雪が降りしきるマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場で各国代表に招集されなかったアトレティコの選手たちがトレーニングしている風景をTVのニュースで見た時のことでした。前日から真冬に逆戻りしたスペインでは国内各地が悪天候に見舞われ、私も午前中はみぞれが絶え間なく落ちてくるため、マドリッドのセントロ(中央部)にあるピソ(マンション)から、外に出る気も起きなかったんですけどね。

▽同じぐらいの時刻、アトレティコBの選手を呼んで数を水増ししたお隣さんと同様に、RMカスティージャの選手たちと一緒にセッションをしていたバルデベバス(バラハス空港の近く)のレアル・マドリー練習場では、まったく降っていなかったようなのは不思議ではありますが、前者はシメオネ監督までアルゼンチンに里帰りしていなかったとか。うーん、当人は旅行前日に受けたインタビューで「Mis futbolistas son mis hijos/ミス・フトボリスタス・ソン・ミス・イホス(選手たちは私の息子のようなもの)」と言っていましたけどね。これって、どこか見捨てられた感があったかも。

▽まあ、それでも居残り組はこの週末、リーガのparon(パロン/休止期間)で試合がなく、練習もお休み。ちょっとぐらいの逆境があった方が体を鍛えられていいのかもしれませんが、おかげで時間の余裕があったせいか、数社の取材を受けたシメオネ監督から、アトレティコのすでに今季も準々決勝にまで進出したCLでの強さの秘密が明かされたなんてことも。曰く、「El dolor es la fuerza más grande que tiene el Atlético en esta Champions/エル・ドロール・エス・ラ・フエルサ・マス・グランデ・ケ・ティエネ・エル・アトレティコ・エン・エスタ・チャンピオンズ(このCLでのアトレティコの一番大きい力は痛みだ)。大会のアンセムを聞くたび、自分は痛みを覚える」そうで、その理由はもちろん、昨季CL決勝での敗北。

▽さらにサン・シーロでの試合後会見の時、アトレティコの監督続投を疑問視されるような返答をしたことに対して、「Para mí lo de Milán fue un fracaso/パラ・ミー・ロ・デ・ミラン・フエ・ウン・フラカソ(自分にとってミラノでのことは失敗だった)。CLに優勝するという目標を持っていて、それが達成できなかったのは物凄く辛かった。その次のシーズンが大変になることがわかっていたから、PK戦で負けた後、チームを率いていく力が出るのか確信がなかった」と説明していましたけどね。「どんなチームだって、ほとんど連続してCL決勝に敗れた後、回復するのは不可能なのに、nosotros estamos otra vez ahí, peleando/(ノソトロス・エスアモス・オトラ・ベス・アイー、ペレアンドー(ウチはまたここにいて、戦っている))」というのは確かに、誇れることなのかもしれません。

▽え、その件に関しては、キャプテンのガビも「Perder dos finales fue duro, levantarse aún más duro/ペルデル・ドス・フィナレス・フエ・ドゥーロ、レバンタールセ・アウン・マス・ドゥーロ(2度の決勝に負けて辛かったし、そこから立ち上がるのはもっと辛かった)。今季は6カ月ぐらいかかった」と、リーガの前半戦で残念な試合が多かったことの理由付けをしていなかったかって? そうですね、これがカンテラーノ(ユース組織出身の選手)の後輩、コケになると、「Somos el Atlético y siempre nos levantamos/ソモス・エル・アトレティコ・イ・シエンプレ・ノス・レバンタモス(ボクらはアトレティコだから、いつも立ち上がるのさ)」と至極、単純明快でいいんですけどね。

▽何はともあれ、前節の彼らはセビージャに快勝して、リーガ3位フィニッシュへの道もようやく見えてきたようですし、4月のCL準々決勝レスター戦でもこの勢いを維持して、同じぐらい立ち直るのに苦労したアトレティコのファンたちにまた希望を与えてほしいもの。ちなみにこのコケは今週、スペイン代表合宿にアトレティコから1人参加しているんです。私もまだ寒波が襲来する前の火曜午前中、練習見学時間は15分しかなかったものの、チームの様子を見にラス・ロサス(マドリッドの近郊)まで足を伸ばしたんですけどね。定例記者会見では、昨年のユーロ大会当時、代表での先発機会が少ないのに「チームワークを高めるためだけに代表に来るのもどうかと」と、不満をマスコミに告白して以来の招集となったペドロ(チェルシー)と大人代表初参加だったイジャラメンディ(レアル・ソシエダ)が登場。

▽いやあ、ペドロもそれはそれでアトレティコやマドリー同様、クラブでの居残り練習メンバーとなるのは肩身が狭いことがわかったんですかね。「creo que aquello se malinterpretó/クレオ・ケ・アケージョ・セ・マルインテルプレト(あれは曲解されたんだと思う)」と、全てをなかったことに…。2年前に古巣に出戻って復活したイジャラメンディが、「マドリーが自分に分不相応だったとは思わない。Me faltó confianza y valentía/メ・ファルトー・コンフィアンサ・イ・バレンティア(自信と勇気が欠けていたんだ)」なんて言っているのを聞いていたんですが、どうやらその頃には選手たちのロビー行為が着々と成果を挙げていたよう。

▽私は、その後にあった保険会社のスポンサー契約延長を祝って行われた、グラウンドでの記念撮影時、キャプテンのセルヒオ・ラモス(マドリー)がロペテギ監督とずっと何か話しているのには気づいたんですけどね。どうやらそれは、月曜に合宿入りした時、W杯予選イスラエル戦のため、木曜にヒホン(スペイン北部のビーチリゾート、スポルティングのホームタウン)入りしてから、金曜の試合後も同地に滞在。土曜日曜とあちらで練習して、次のフランスとの親善試合のため、直接パリに飛ぶという代表の今回の予定が気に入らなかったからのようで、初日からラモスが監督と交渉を始めていたんだとか。

▽そう、それから間もなく、イスラエル戦の後、マドリッドに帰京することになったとサッカー協会から公式発表されたんですが、火曜の午後に山のようにあった選手のラジオインタビューではブスケツ(バルサ)も「一番いいのはここの宿舎で休むことで、土曜に自由行動の午後があったら、最高にいいね」と言っていたように、選手たちの多くはヒホンでの合宿を望まず。いえ、もちろんロペテギ監督は「La decisión de volvernos es mía/ラ・デシシオン・デ・ボルベルノス・エス・ミア(戻って来るという決定は私がした)。こういうことを変えることは何度もあった」と主張していましたが、何かそんな話を聞くと、昔からよく、マドリーの選手たちがホームでの試合前日は合宿を止めてくれるよう、歴代監督に働きかけていた事例を思い出してしまうのは私だけ?

▽実際、ルイス・アラゴネス監督やデル・ボスケ監督時代のスペイン代表で選手たちの願望による予定変更があったか、ちょっと私も思い出せないんですが、ラモスなど、もうマドリーのキャプテン歴も長いですし、そういった交渉はお手のもの。こんなケースでは普段、「nos gusta tirarnos alguna piedrecita/ノス・グスタ・ティラールノス・アルグーナ・ピエドレシータ(ボクは小石を飛ばし合うのが好きなんだ)」(ラモス)という、マスコミへの発言やツィートで対立関係にされるピケ(バルサ)とも結託できるのか、どうやら今回はベテラン選手たちで共同戦線を張ったようです。でもねえ、せっかく代表チームを招いてのイベントを盛り沢山、企画していたアストゥリアス(ヒホンのある地方)のサッカー協会長はアテが外れて、かなり怒っていましたよ。

▽そんなことはともかく、木曜にアラブ諸国と根深い問題を抱えるイスラエルの代表チームを迎えるのと、現地の市議会がイスラエル製品ボイコット政策を取っており、市民のデモが予定されているため、厳戒態勢が敷かれているヒホン入りしたスペインはエル・モリロン(スポルティングのホーム)で前日練習を実施。前日は風邪による発熱でセッションをお休みしたカルバハル(マドリー)も無事回復し、どうやらロペテギ監督もGKデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)、DFカルバハル、ピケ、ラモス、ジョルディ・アルバ(バルサ)、中盤はブスケツ、イニエスタ(バルサ)、コケもしくはチアゴ・アルカンタラ(バイエルン)、前線をシルバ(マンチェスター・シティ)、ジエゴ・コスタ(チェルシー)、ビトロ(セビージャ)という、思い描いていたベストメンバーで挑めるようです。

▽え、相手は予選グループGでたったの勝ち点1差で3位につけるチームなのだから、実は試合も結構、厳しいものになるんじゃないかって? うーん、そうですね。前日記者会見でロペテギ監督などは、「Le queremos un poquito enfadado/レ・ケレモス・ウン・ポキート・エンファダードー(ちょっと怒っている彼がいい)。でもちょっとだよ、いつものようなサッカーをしてもらうためにね」とコスタに期待していましたが、「No salgo enfadado al campo, me enfado durante los partidos/ノー・サルゴ・エンファダードー・アル・カンポ、メ・エンファド・ドゥランテ・ロス・パルティードス(ボクは怒ってピッチに出るんじゃない。試合中に怒るんだ)」と答える当人も相変わらず。

▽それでも今シーズン始めは、「La relación con Conte no empezó bien/ラ・レラシオン・コン・コンテ・ノー・エンペソ・ビエン(コンテ監督との関係はいい始まり方じゃなかった)。着任した時に自分はアトレティコに戻りたいと言ったんだから。結局、アトレティコに待ってもらえなくて、尻尾を巻いた犬のようにボクが話しに行ったら、こっちを見てももらえなかったよ」と苦労した経験もある彼ですからね。そのせいで「アトレティコに移籍できるよう、できること全部をやったけど、クラブは待ってくれなかった。Ya no me pelearía igual para volver/ジャー・ノー・メ・ペレアリア・イグアル・パラ・ボルベル(もう戻るために同じようには戦わないよ)」と、ラス・ロサスでのインタビューで宣言していたのにはちょっとビックリさせられたかも。

▽おかげでセレソ会長に「Hay cosas que son imposibles y son imposibles/アイ・コーサス・ケ・ソン・インポシーブレス・イ・ソン・インポシーブレス(不可能なことはあって、それは不可能だった)」とたしなめられたりもしていましたが、現在のコスタがチェルシーで絶好調なのは紛れもない事実。金曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)からのイスラエル戦では勝利に貢献するゴールを決めてくれることを期待しています。いえ、万が一、彼が不発でもベンチにはモラタ(マドリー)やイアゴ・アスパス(セルタ)、ペドロも控えていますし、いざとなれば、伝家の宝刀、ラモスの頭もありますしね。多分、勝って、今節はアルバニアと戦う、同じ勝ち点で2位のイタリアにリードを許すことはないと思うんですが…。

▽そうそう、最後に、木曜にデンマークと親善試合をしたU21スペイン代表のことも伝えておくと、いやあ、一緒に合宿していたラス・ロサスで、後輩チームにこちらもアトレティコから1人参加だったサウールがラモスと火曜の写真撮影に行く時、やたら仲良くしていたおかげですかね。ムルシア(スペイン南西部)のヌエボ・コンドミナでの試合では、ふくらはぎのケガで離脱したレイナ(ナポリ)の代わりにケパ(アスレティック)がA代表の第3GKとして狩り出されたため、その試合はパウ(トッテナム)がゴールを守ることに。だからって、別に彼に罪はないとは思いますが、意表を突かれて、序盤に相手に先制されてしまったところ、22分にはミケル・メリーノ(ドルトムント)が、クロース役を務めたアセンシオ(マドリー)のCKから強烈なヘッドを決めて同点にしてくれます。

▽さらに75分には途中出場したサウールが、これまたラモスを彷彿させるゴールを頭で叩き込み、スペインが勝ち越してくれたから、嬉しかったの何のって。いえ、3点目を決めたデニス・スアレス(バルサ)は、さすがに足で決めていましたけどね。最後は3-1で勝利と、若いスペインにも強さが戻ってきたのには大満足。これなら月曜のイタリアとの親善試合もいい勝負になるかもしれません。うーん、何せ、この夏はスペインがコンフェデレーションズカップに参加しないため、オフシーズンに楽しめる大会が6月16日から30日までポーランドで開催されるU21ユーロ大会しかありませんからね。

▽その後、7月には各クラブのプレシーズンキャンプもだんだん始まって、7月23日にはサンフランシスコでマドリーvsマンチェスター・ユナイテッド、29日にはマイアミでマドリーvsバルサといった、チャンピオンズ・カップ(夏の親善大会)などもあるんですが、それまでをどう過ごすかが私の当面の課題。あ、でもマドリーやアトレティコが6月3日のCL決勝まで行けなかったら、その前もヒマになってしまう可能性もあるし…。となると、まずはスペイン勢がヨーロッパの大会で長く健闘してくるのを祈るのが先でしょうか。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

2017年3月24日(金)12:30

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