★【原ゆみこのマドリッド】多分、優勝できると思うけど…

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▽「リーガが終わってからが長いわね」カレンダーを見ながら私が溜息をついていたのは金曜日、レアル・マドリーではCL決勝チケットのソシオ(協賛会員)割り当て抽選があったりしたものの、試合まであと2週間も待たないといけないと気づいた時のことでした。いえ、この水曜にラツィオを下し、コッパ・イタリア優勝を果たした相手のユベントスの選手たちなどはロッカールーム内でのお祝いで、「Que vamos a Cardiff/ケ・バモス・ア・カーディフ(カーディフに行くぞ)」と早くも歌っていたようなんですけどね。

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▽「リーガが終わってからが長いわね」カレンダーを見ながら私が溜息をついていたのは金曜日、レアル・マドリーではCL決勝チケットのソシオ(協賛会員)割り当て抽選があったりしたものの、試合まであと2週間も待たないといけないと気づいた時のことでした。いえ、この水曜にラツィオを下し、コッパ・イタリア優勝を果たした相手のユベントスの選手たちなどはロッカールーム内でのお祝いで、「Que vamos a Cardiff/ケ・バモス・ア・カーディフ(カーディフに行くぞ)」と早くも歌っていたようなんですけどね。それがスペイン語だったのはイグアインやディバラらアルゼンチン出身の選手や、リーガ歴の長いダニエウ・アウベスのせいということで納得ですが、実は彼らはまだ、セリエA優勝が決まっておらず。

▽もちろん前節、2位のローマに返り討ちに遭い、せっかくのチャンスを逃したとはいえ、勝ち点差は4もありますから、断然有利なのは間違いないですが、この日曜のクロトーネ戦でも決まらなかった時は要注意。何せ3年前、最終節でバルサと引き分け、ようやくの思いでリーガ優勝を決めたアトレティコなど、その後のお祝い行事疲れも相まって、1週間後のCL決勝はロスタイムにセルヒオ・ラモスに奇跡の同点弾を喰らい、延長戦で3点も取られちゃいましたからね。ユーベも来週末のボローニャ戦まで優勝を持ち越すことになると、カーディフでの決勝が大変なことになりかねませんが、ファン的にはその方が緊張感も持続して楽しかったりする?

▽まあ、その辺は今回、優勝すればリーグ6連勝という恐ろしい記録になるイタリアのチームですから、余裕を持って受け止めているとは思いますが、意外なことにリーガのタイトルからはもう、5年も遠ざかっていたというマドリーの話を今はしないと。このミッドウィークは彼らだけ、2月に順延になったセルタ戦に挑んだんですが、やっぱりローテーションで選手が交代で出ているチームは元気があって本当に羨ましい。いえ、セルタも先週、ヨーロッパリーグ準決勝でマンチェスター・ユナイテッドに負けるまで、平日はベストメンバー、週末は控え中心という起用方針だったんですけどね。

▽片や2月のコパ・デル・レイ準決勝に続き、クラブ史上初の決勝進出の夢破れたばかり、その間にリーガでも5連敗と失速しているチームと、宿命のライバル、バルサが時々、3冠(CL、リーガ、コパ・デル・レイ)を達成しているのと比べると気が引けますが、1958年以来の2冠(CL、リーガ)まであと一歩と迫り、ノリに乗っているチームではああいう結果になったのも当然だったかと。

▽そう、最近では珍しくクリスチアーノ・ロナウドが2試合連続出場したマドリーは、イスコも「Cristiano ha llegado al final de temporada como un avion/クリスティアーノ・ア・ジェガードー・アル・フィナル・デ・テンポラーダ・コノ・ウン・アビオン(クリスチアーノはシーズン終盤にまるで飛行機のような勢いで着いた)。でも、彼だけじゃなく、ボクら皆、飛行機みたいだよ」と言っていた通り、開始9分には後者のパスから前者が左足で決めて早くも先制。前半はその1点止まりでしたが、ハーフタイムで休憩したすぐ後にもカウンターで抜け出したイスコが再びスルーパス。これもロナウドが決めて2点差になった上、後半16分にはセルタのエース、イアゴ・アスパスが2枚目のイエローカードをもらって退場になってしまったから、もう勝負は決まったと思ったところ…。

▽え、前半のアスパスのイエローカードはバランの手にボールが当たったにも関わらず、審判がハンドを取らなかったことに抗議したせいで、2枚目もエリア内でラモスに倒されながら、piscinazo(ピシナソ/ダイブ)と判断されて出されたものって、ちょっとひどくないかって?うーん、確かにその1分後にはロナウドが同じようなプレーでペナルティはもらえず、かといって、当人にカードも出されなかったため、その日、ベリッソ監督が処分でベンチに入れず、セルタの指揮を執っていたマルクッチ第2監督も猛抗議。おかげで彼まで退場になってしまいましたが、何せロナウドが警告を受けていたら、累積で最終節に出られなくなってしまいますからね。

▽そういう意味ではマドリーもラッキーだったんですが、まさか23分にはグィディッティのシュートがラモスに当たってゴールに入り、1点差に迫られてしまうとは!でも大丈夫ですよ。というのも、その1分後にはマルセロのパスをベンゼマがゴール前から押し込んで、スコアが1-3になったからで、終盤にはファールを受けたラモスがパブロ・エルナンデスと揉めていたりもしたんですけどね。後でジダン監督も「un poco cansado porque aunque no juego tengo tension como todos/ウン・ポコ・カンサードー・ポルケ・アウンケ・ノー・フエゴ・テンゴ・テンシオン・コモ・トードス(プレーはしなくても自分も皆同様、緊張していたから、ちょっと疲れた)」と言っていましたが、42分にもクロースが決め、最後は1-4という余裕のあるスコアで勝つことができましたっけ。

▽この結果、いよいよマドリーは順位表でバルサの下に居ることを止め、勝ち点3差をつけて堂々首位に復帰。つまり、日曜午後8時(日本時間翌午前3時)に揃ってキックオフする最終節で、バルサがエイバルに勝ち、マドリーがマラガに負けた場合のみ、シベレス広場でのお祝いが見られないことになります。そんな状況だからでしょうか、ルイス・エンリケ監督は月火水と3日も練習をお休みにして、MSN(メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの頭文字)もバルセロナ市内にオープンした高級ブランドシューズショップのイベントに夫人同伴で駆けつけていた姿の方が今週は印象に残っているんですが、マラガにもバルサ育ちで「Si marco y le doy la Liga... ojala se de/シー・マルコ・イ・レ・ドイ・ラ・リーガ…オハラ・セ・デ(もし自分がゴールを決めて、リーガ優勝を贈ってあげられたら…そうなってくれますように)」なんて言っているサンドロのような選手もいますからね。マドリーも油断は大敵かと。

▽ただその一方で、ここ4勝1分けとマラガのシーズン終盤の快進撃を演出したものの、ミチェル監督はマドリーのカンテラ(ユース組織)育ち、1980~90年代に活躍した古巣だけに手心を加えるんじゃないかなんて言う、口の悪い人もいますが、こういうのはプロとしてのプライドの問題ですからね。クラブも11位で終わるのと、今同じ勝ち点のバレンシアに抜かれて12位になるのでは、TV放映権収入が100万ユーロ(約1憶3000万円)も違うそうですし、同時にマドリーが優勝すると3シーズン前に売却したイスコのオプションボーナスでやはり100万ユーロがもらえることに。となれば、結論としては来季、マラガに移籍すると言われているミチェル監督の息子さん、エイバルのアドリアンや乾貴士選手のカンプ・ノウでの好パフォーマンスを期待しつつ、ここ立て続けに引退を表明したデミチェリス、ウェエリグトン、ドゥーダらを勝利で見送れるよう、ミチェル監督も頑張ってくれるんじゃないですか。

▽え、今週前半3日間、練習しなかったのはアトレティコも同じじゃないかって? いやあ、彼らの場合、もう目標である来季CLグループリーグに出られる3位が前節に確定していますからね。ようやくマハダオンダ(マドリッド近郊)の施設に出て来たと思った木曜もセッション後、チーム全員揃って、完成間近のワンダ・メトロポリターノを見学に行く始末。それから経営陣も加わって、シーズン終了ご苦労さんランチ会って、いや、まだ日曜午後4時15分(日本時間翌午前1時15分)からビセンテ・カルデロンと今生の別れをする大事な試合が残っているんですけどね。おまけにそのアスレティック戦ではゴディン、ヒメネス、フェリペ・ルイスが出場停止、更にファンフランやベルサリコら負傷したままシーズンを終える選手もいるため、フィールドプレーヤーが14人しかいないって、まったく最後まで苦労の尽きないチームです。

▽そのせいもあってなんですが、今週出て来た彼らの話題はもう来季を見据えてのものが多くて、ラジオのインタビューを受けていたグリースマンからは、「Me encanta Cavani, seria un fichaje top/メ・エンカンタ・カバーニ、セリア・ウン・フィチャヘ・トップ(自分はカバーニが大好き、最高の補強になるね)。ウルグアイ人だから、どんなボールでも全力で行くよ」と、マテ茶を一緒に楽しめる未来の前線のパートナーに夢を馳せるコメントも。とはいえ、現段階ではPSGのエースよりも、オリンピック・リヨンのフランス人FW、ラガゼットの方が確立的に高そうなマスコミの論調もチラホラ見かけます。

▽逆にまだ契約延長が決まっていないフェルナンド・トーレスなどは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の友人を応援する本の発売プレゼンに出席した機会を利用して、「Todo el mundo sabe cual es mi deseo/トードー・エル・ムンド・サベ・クアル・エス・ミ・デセオ(誰もがボクの望みが何か知っている)。あと何年もこのユニフォームを着続けられたらいいね」と残留の意志をアピールしていましたが、これもどうなることやら。とにかく、万年3位止まりに満足せず、優勝を目指すチームになるためには得点力の高いFWの獲得が絶対必要なため、ガメイロやコレアを含め、この夏にはイロイロ、動きがあるかもしれませんね。

▽そんな調子だったので、今週のアトレティコはスポーツ紙面でも主役をもっぱら女子チームに奪われがちで、いやあ、実は彼女たちの立場はお隣さんと近くて、男性陣の不甲斐なさをせせら笑うかのごとく、土曜のリーガ最終戦で2位のバルサと同じ結果を出せば優勝できる首位だったんですよ。その大一番、レアル・ソシエダ戦でビセンテ・カルデロンが使えず、マハダオンダのミニスタジアムになってしまったのは気の毒でしたけどね。タイトルを獲得できれば、日曜には男子チームの試合前にPasillo de Campeones/パシージョ・デ・カンペオーネス(チャンピオンの花道)で迎えてもらえるとなれば、一層やる気に拍車がかかるというものかと。

▽そして前節、アスレティックと引き分け、見事に昇格1年目での1部残留を決定。おかげで相手がEL出場権をよりいい順位で確保するため、兄貴分との試合に真剣に挑まないといけない理由を作ってしまったレガネスは土曜にアラベスと最終節となるんですが、こちらはブタルケのサポーターのお祭りになるのは確かかと。昨季までの3シーズンで彼らを2部Bからステップアップ、1部でやっていけるまでに導いたアシエル・ガリターノ監督は、「La gente nos decia que ahora tocaba disfrutar, pero yo disfrute poco/ラ・ヘンテ・ノス・デシア・ケ・アオラ・トカバ・ディスフルタール、ペロ・ジョ・ディスフルテ・ポコ(人々は今度は自分たちが楽しむ番と言っていたが、私はほとんど楽しめなかった)」と今季の苦労を語っていたものの、この試合だけは心おきなく満喫できるのでは?

▽いえ、現在9位で8位のエイバルと同じ勝ち点のアラベスにはマラガ同様、バルサと戦う同じバスク地方のチーム仲間の最終節を利用して、1つでも順位を上げたいという思惑もあるようですけどね。向こうには来週土曜にコパ・デル・レイ決勝が控えているため、主力は温存するのではないかという読みもなきにしろあらず。マドリッドの3チームはそんな感じで、いよいよ今季が終わるリーガですが、去年のヘタフェやラージョのように最後の最後に降格なんて大ショックが待ち受けているのではなく、マドリーの優勝祝いが見られるかもしれないっていうのは、私も気が楽でいいですね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

2017年5月20日(土)8:48

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