★【原ゆみこのマドリッド】終わり良ければすべて良し…

▽「これは気が抜けないわね」そんな風に私が呟いていたのは月曜。スペイン代表のロペテギ監督がポーランドで開催中のU21ユーロに準決勝から、弟分チームの応援兼視察で駆けつけるという記事を見つけた時のことでした。

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▽「これは気が抜けないわね」そんな風に私が呟いていたのは月曜。スペイン代表のロペテギ監督がポーランドで開催中のU21ユーロに準決勝から、弟分チームの応援兼視察で駆けつけるという記事を見つけた時のことでした。いやあ、大多数のリーガの選手たちは現在、バケーションの真っ只中。ふと気づくと、セルヒオ・ラモスが水色の海にダイブするビデオなどを見たり、スポーツ紙に載るインタビューがイビサ(地中海のリゾートアイランド、夏はサッカー選手のメッカになる)発ばかりだったりに気がつくと、自分も暑いだけのマドリッドでゆだってないで、ビーチでノンビリしたいと夢想する毎日なんですけどね。

▽それでもまだお仕事中の選手たちもいない訳ではなく、その1つがスペインU21代表で、1戦目はアセンシオ(レアル・マドリー)のハットトリックなどでマケドニアに5-0、2戦目はポルトガルに3-1で勝利。この2試合でサウール(アトレティコ)が連続ゴールを挙げたおかげもあって、グループリーグ突破を2節目で早々に決定しました。そのため、先週の金曜に行われる最終節、セルビア戦ではスタメン総入れ替えとなったんですが、やはりここは、リーガ3強の残り1チームの選手も存在感を示しておかねばと思ったんですかね。38分にオドリオソラ(レアル・ソシエダ)のラストパスをデニス・スアレス(バルサ)が決めて、1-0と勝利することができましたっけ。

▽ただ、MVPとなった彼などは「Hemos ganado y hemos mantenido la puerta a cero/エモス・ガナードー・イ・エモス・マンテニードー・ラ・プエルタ・ア・セロ(ボクらは勝って、失点ゼロに抑えた)」と胸を張っていたんですが、その当人を始め、ボルハ・マジョラル(ボルフスブルク)やソレル(バレンシア)らが他にもあったゴールチャンスに次々失敗。セルビアは41分にレッドカードでジョルジュビッチ(パルチザン)を失い、その後ずっと10人で戦っていたことも考えると、なかなか「Hemos tenido oportunidad los que veniamos jugando menos para demostrar que todos podemos cumplir/エモス・テニードー・オポルトゥニダッド・ロス・ケ・ベニアモス・フガンドー・メノス・パラ・デモストラル・ケ・トードス・ポデモス・クンプリール(あまり出ていない選手でも、全員がやり遂げられることを示すチャンスだった)」というミケル・メリノ(ドルトムント)のように大きなことは言えないと思いますが、まあ、グループ3連勝だったのはスペインだけですしね。

▽その辺は自信を持っていいところかもしれません。ただ、これは本当に短い大会で、土曜にはポーランド北部のグィドゴシュチェから、7時間かけて南部のクラクフに電車で移動。彼らが次に挑むのは火曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、イタリアとの準決勝です。大人のチーム同士の対戦ともなると、予断を許さないカードなんですが、U21のイタリアは最終節にドイツに1-0と競り勝って、何とか4強入りを果たした状態ですし、アセンシオやサウール、デウロフェウ(昨季はミランでプレー)、ベジェリン(アーセナル)ら、頼りになるA代表経験者も多いスペインに比べると、注目されている選手もGKドンナルンマ(ミラン)ぐらいしかいませんからね。大いに勝算はあるかと。

▽そして勝ち上がれば、金曜にイングランドvsドイツの勝者と対決して優勝できるというのが最高のシナリオですが、この2試合でいい働きをすれば、9月からのW杯予選招集、引いては来年の夏にロシアへ行ける芽も大きくなると思えば、5月下旬からずっと合宿している選手たちも最後の力を振り絞ってくれるはず。まだ皆、若いため、バケーションだってそんなに長くはいらないでしょうしね。2013年、それこそロペテギ監督の下で最後にユーロ優勝を果たしたU21チームから、今ではイスコ、モラタ、カルバハル(マドリー)、コケ(アトレティコ)、チアゴ・アルカンタラ(バイエルン)、デ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)らが、A代表常連になっているのもいい励みになると思います。

▽え、それより土曜にはマドリッドのチームにとって大事な試合があったんだろうって? その通りで、私が家を出る前に見たコンフェデレーションズカップのグループA最終戦は33分にクリスチアーノ・ロナウドがPKで先制点を挙げると、その後、ベルナルド・シウバ(モナコからマンチェスター・シティに移籍)、アンドレ・シウバ(ポルトからミランに移籍)、ナニ(バレンシア)が続き、予想通り、ポルトガルが4-0の圧勝でニュージーランドを下して首位通過を決定。この試合では後半途中に退き、昨季のマドリー同様、フェルナンド・サントス監督にお休みをもらいながら、3試合連続MVPをゲットしたため、ロナウドも幾分、機嫌を直したかと…思いきや。やはり脱税容疑で訴えられたことに関してはまだ怒りが静まっていなかったよう。翌日には当人のスポーツ・ディレクターから、「クリスチアーノはよく考える時間が必要と言っていた」とのコメントが。

▽マドリーのペレス会長も、別に慌ててはいないでしょうけどね。まあこのところ、とにかく訳わからない移籍関連記事が溢れている状態なため、とりあえずコンフェデレーションズカップが終わって、ロナウドと話す機会を持つのを待っているようです。まず水曜の準決勝でポルトガルはチリと対戦。その結果がどう出ても、ベスト4入りしたチームは日曜の3位決定戦、決勝のどちらかを戦わないといけないため、彼が本当にスペインに戻りたくないのか、来季もジダン監督の下に留まるのか、白黒はっきりするのは当分、先になりそうですね。

▽よってそちらは気長に構えるしかありませんが、その土曜にはようやくヘタフェが今季の戦いに決着をつけたんですよ。いやあ、先週の昇格プレーオフ準決勝ウエスカ戦2ndレグにも増して超満員となったコリセウム・アルフォンソ・ペレスにテネリフェを迎えた彼らだったんですが、何せ水曜の決勝1stレグでは0-1で敗戦。remontada(レモンターダ/逆転劇)が必要だったため、私も結構、緊張して試合が始まるのを待っていたところ、キックオフ前には2003年に初の1部昇格を達成した時のメンバー、パチョンやジカ・クライオベアヌ、ナノ、ドラドらがピッチに上がり、その場をますます盛り上げてくれることに。ええ、今の選手たちもそれにしっかり応えてくれて、早くも9分にはダミアンのCKからのボールをファウウリンが蹴り込んで、総合スコアでタイに戻してくれたから、どんなにホッとできたことか。

▽これで調子に乗ったヘタフェは13分にもチュリが折り返したパスをパチェコが正確に決め、一気に逆転に成功。それから4分後、今度は柴崎岳選手のラストパスをロサナがゴール前で押し込み、テネリフェに1点を返されてしまったから、さあ大変! そう、これはアウェイゴールになるため、このまま2-2で終わった場合、ヘタフェが負けてしまうんですよ。

▽でも大丈夫。1年ぶりに会った顔馴染みのヘタフェ番の女性記者がチャンスの度に声を枯らして応援している横でじっと待つこと20分。ウエスカ戦同様、2部では十分、得点力を持っていることを彼らは証明してくれました。今度はホルヘ・モリーナのシュートが敵GKに弾かれたところにパチェコが再び登場、確かにこれも周りには誰もいない状態でしたが、さすがにここ2シーズン、ベティスとアラベスで連続して昇格している経験者だけありますね。来季こそ、1部でのプレーを楽しむんだという決意でボールをネットに収め、チームを3-1のリードに導いてくれたんですから、本当に有難いじゃありませんか。

▽結局、51分には柴崎選手に代えてサウールのお兄さんであるアーロンを送り出して反撃を試みたテネリフェでしたが、何度か観客席に恐怖のどよめきが走ることはあったものの、勝利に必要だったあと1点は最後まで取れず。うーん、アトレティコからレンタルで修業に出ている20歳のアマトなどには惜しいチャンスもあったんですけどね。あの決定力のなさでは、やはりまだ、この夏もFIFA処分のせいで補強のできないシメオネ監督の前線に加わるには力不足であることが露呈してしまったかも。「後半、そういう予定ではなかったが、instintivamente el equipo se metio atras/インスティンティバメンテ・エル・エキポ・セ・メティオ・アトラス(チームは本能的に引いてしまった)」(ボルダラス監督)というヘタフェもそれ以上、追加点を挙げることはなかったため、試合は3-1のまま終了。総合スコア3-2で1年ぶりの1部復帰が決まりました!

▽いやあ、それにしても準備万端とはまさにこのことで、まあ終了直後はピッチにファンが押し寄せ、しばらく混乱していたんですけどね。実は私など、帰りのメトロ(地下鉄)の駅でスタジアムのシートを持っている人を見て、兄貴分のファンが最終戦でビセンテ・カルデロンの座席を引き剥がしていたのを真似しているのかと思ったものですが、この時にはどこのチームより長いシーズンを戦いながら、報われなかったのに逆上したテネリフェのファンがピッチ内のヘタフェサポーター目掛け、シートを投げつける騒ぎがあったのだとか。まあ、ヘタフェサイドにも「Africano que no vote/アフリカーノ・ケ・ノー・ボテ(跳ねないのはアフリカ人)」と、テネリフェのあるカナリア諸島の位置にかこつけて、挑発するようなカンティコ(節のついたシュプレヒコール)を歌っていた品のないファンたちもいたようですしね。

▽それでも騒ぎがその程度で済み、群衆はすみやかにピッチから退去、クラブが用意した昇格セレモニーを恙なく行えたのは良かったかと。ええ、先月は残留を達成してブタルケでお祝いするレガネスを見ていた私ですが、やはり1部では先輩のヘタフェ。もちろん兄貴分のマドリーがサンティアゴ・ベルナベウでドゥオデシマ(12回目のCL優勝のこと)の後、開催したメガフィエスタには敵いませんが、選手が呼ばれて登場する時に吹き上がる炎の演出も檀上に全員揃った後の紙吹雪、豪快な打ち上げ花火もお隣さんよりずっと豪華だったのは否定できなかったかと。

▽そして時刻はもう午前零時、それからチームはオープンデッキバスに乗って、シベリーナ(ヘタフェがファンとお祝いする広場)に向かい、翌日の午前中には市庁舎表敬訪問と、凄い勢いで祝賀行事を済ませたヘタフェでしたが、もしや関係者一堂、少しでも早くバケーションに入りたかった? まあ、休めてせいぜい1カ月ですが、ちなみに来季は、「Tiene contrato, si quiere entrenar en Primera yo le voy a dar la oportunidad/ティエネ・コントラトー、シー・キエレ・エントレナール・エン・プリメーラ・ジョ・レ・ボイ・ア・ダール・ラ・オポルトゥニダッド(契約があるから、もし1部で指揮したいならチャンスを与える)」とアンヘル・トーレス会長がお祝いの最中に確約していたため、昨季はアラベスを昇格させながらペジェグリーノ監督と交代。今季の8節に21位にいたチームをエスナイデル監督から引き継いで見事、目標を達成したボルダラス監督が続投する模様。

▽ただ選手たちについてはレンタルで来ている人も多いため、まだどうなるかよくわからないんですが、ちょっと心配なのは以前、1部にいた頃はボール扱いの上手いチームを目指していた彼らだったというのに、今季は2部で一番ファール数が多い、荒っぽいプレーをするようになっていたこと。いやあ、プレーオフなんてそれこそ、そのぐらいの気合がないと勝ち抜けないんだと思いますが、ウエスカ戦でもテネリフェ戦でも両チームの選手がすれ違う度、必ずどちらが地面に転がっているというのはねえ。

▽1部の審判はその辺、厳しいため、来季はイエロカード禍に襲われないよう、プレシーズンの間に調整していってほしいものかと。でもでも、これでまたマドリッドには1部4チーム体制が復活。ヘタフェファンには、これまで前例のないレガネスとの1部ダービーを楽しみにする向きも多いようですが、またマドリーやアトレティコら、兄貴分を迎えて賑わうコリセウム・アルフォンソ・ペレスを見られるのは私もとっても嬉しいですよ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2017年6月27日(火)11:40

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