★【平成サッカー30年の軌跡】 平成19年/2007年 志半ばで途切れた理想

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新元号が「令和(れいわ)」に決定し、2019年4月30日をもって幕を閉じる「平成」。日本サッカーにとって、「平成」という時代は大きな変革を遂げた30年間となりました。

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新元号が「令和(れいわ)」に決定し、2019年4月30日をもって幕を閉じる「平成」。日本サッカーにとって、「平成」という時代は大きな変革を遂げた30年間となりました。Jリーグ設立、ドーハの悲劇、日韓W杯招致…。激動の30年を平成の出来事と共に振り返ってみましょう。

世の中の流れ


2007年、米アップル社から「iPhone」が発売。

■信頼を落とした政界と食品業界
平成19年(2007年)は、政界と食品業界が大きく荒れた1年となりました。政界では、前年から安倍晋三首相が日本の舵取りを担っていましたが、閣僚の度重なる不祥事に伴い、支持率が急降下。7月の参議院選挙でも大敗や、首相本人の体調不良を原因に突然の辞意を表明しました。後任には福田康夫氏が選ばれますが、この後も短命な政権が続き、政治不信が高まっていくきっかけとなります。

また、地方では「そのまんま東」の名前でタレントとして活躍していた、東国原英夫氏が地元の宮崎県知事選に出馬し、当選。選挙活動中に口にした「宮崎をどげんかせんといかん(どうにかしないといけない)」というフレーズは注目を集め、流行語大賞にも選ばれました。

一方、食品業界にも不祥事が発覚します。「不二家」、「赤福」、「船場吉兆」で、産地偽装や賞味期限切れの食品を使っていた、食品偽装問題が相次ぎ業界そのものの信頼を大きく落としました。特に、老舗料亭の「船場吉兆」は、謝罪会見の際に「頭が真っ白になった…」と質問への回答を耳打ちする女将の姿がカメラに収められ、「ささやき女将」として大きな話題を呼びました。

さらに、この年は、新潟県中越沖地震が起こった年でもあります。被災地の新潟県にあった、柏崎刈羽原発が地震の影響を受けて自動停止。一時は火災が発生し、原子力発電所の危うさについて再認識させられるきっかけの一つとなりました。

その他には、テノール歌手の秋川雅史さんの「千の風になって」が大ヒットし、一世を風靡しました。また、アップル社から「iPhone」が発売。その後のスマートフォンブームの火付け役となります。独特のコメント表示機能で人気を博した、動画共有サイト「ニコニコ動画」のサービスが開始されたのもこの年でした。


サッカー界

オシム氏が掲げた“自分で考えるサッカー”は大きな期待を集めたが、思わぬ形で幕を閉じた。

■オシムが掲げた哲学
ドイツW杯での惨敗から1年。日本代表は新たな方向へと動き出しました。徹底的な組織サッカーを掲げたトルシエ、自分で考えるサッカーを掲げたジーコを経て、新たに日本代表監督となったイヴィチャ・オシム監督が掲げたのは「考えて走るサッカー」でした。この「考えて走るサッカー」とは、日本人の特徴である豊富な運動量を活かし、チーム全体で戦術的な目的を持って動き回るというサッカーのことです。日本人に足りないものを無理に伸ばすのではなく、日本人が得意としているものを伸ばすという考え方は、多くの人にとって斬新であり、期待の持てる考え方でした。

7月に行われたアジアカップでは、準決勝でサウジアラビアに2-3で敗れ、大会3連覇とはなりませんでしたが、それでもオシム新監督の下で、日本人の強みを生かしたサッカーがようやく形になりつつあるとの手応えを感じさせる大会でした。そんな矢先、日本中に衝撃が走ります。11月、オシム監督が急性脳梗塞で倒れたとの一報が入ったのです。その後大事には至らなかったものの、オシム監督の現場復帰は非常に難しく、翌12月、日本サッカー協会は、98年のフランスW杯で日本代表を率いた岡田武史氏の日本代表監督復帰を発表しました。オシム監督が掲げた、日本人の強みを活かした「考えて走るサッカー」は思わぬ出来事によって幻となってしまったのでした。


力を付ける代表とともにJクラブのレベルもアップしていた。

■アジアで躍動するJクラブ
日本代表が世界との差を縮める為の試行錯誤を重ねていた頃、Jリーグでもまた、クラブたちが着実に実力を伸ばしていました。2007年、その結果が目に見えるものとなって現れます。前年である2006年シーズンのJリーグ王者としてAFC チャンピオンズリーグに出場していた浦和レッズが、日本勢として初の優勝に輝いたのです。また、グループステージから一度も負ける事無く優勝した、大会史上初のチームになったのです。アジアを制した浦和レッズはJクラブとしては初めてFIFAクラブW杯に出場。そして堂々の3位に輝きました。ちなみにこの3位という成績もアジア勢として初の好成績でした。

2019年4月19日(金)20:15

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