★VARの介入によるPKにはウンザリ/六川亨の日本サッカーの歩み
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J1リーグは第3節を消化して、10日にアウェイで札幌を1-0で下した浦和が今シーズン初勝利で12位へ浮上。最下位はノーゴールで3連敗の名古屋は変わらず、ホームで初勝利を飾れなかった札幌も19位のまま。
J1リーグは第3節を消化して、10日にアウェイで札幌を1-0で下した浦和が今シーズン初勝利で12位へ浮上。最下位はノーゴールで3連敗の名古屋は変わらず、ホームで初勝利を飾れなかった札幌も19位のまま。そして3試合連続してアディショナルタイムのPKでC大阪に敗れた東京Vが18位、神戸に逆転負けを喫したFC東京が17位と下位に沈んでいる。
そのFC東京だが、第3節の神戸戦では前半5分にPKを与えた。これはキッカーのFW大迫勇也が立ち足を滑らせて大きく右に外したが、PKとなったシーンはゴール前のこぼれ球をMF宮代大聖がシュートしたところ、CB森重真人の腹部あたりに当たったリバウンドが左手に当たったものだった。
その後はFC東京がクリアし、神戸の選手もハンドをアピールすることなく試合は続行された。
ところがここでVARが介入した。スタジアムのオーロラビジョンには問題のシーンが映し出され、確かに少し広げた手に当たっているものの、自分の身体に当たったリバウンドが不運にも手のある方向に飛んだというだけ。故意に手でブロックしたわけではない。
しかしOFRの結果、主審はペナルテイーマークを指さして神戸にPKを与えた。森重の手に当たったシーンは前半5分、そして大迫がPKを蹴ったのは前半9分。その間の4分間は、選手はもちろんファン・サポーターも待機するしかない。
実はFC東京は前節の広島戦でも後半19分にPKを与えて先制点を許していた。広島の右CKを中央で競って背後に流れたボールが、同時にジャンプしていたディエゴ・オリヴェイラの手に当たったのだ。これも記者席からは確認できなかったが、オーロラビジョンでは確かにディエゴ・オリヴェイラの手に当たっている。
そしてOFRの結果、主審は22分にPKと判定し、FC東京の選手の抗議も実らず24分にFW大橋祐紀がPKを確実に決めてリードした。この間に要した時間は5分で、神戸戦同様に待機するしかなかった。
VARやOFRに関しては、いまに始まったことではないが、やはり「興ざめ」である。ディエゴ・オリヴェイラのハンドも森重のハンドも、ボールがゴール方向に飛んでいるといった『得点機会阻止(DOGSO)』ではない。ディエゴ・オリヴェイラの場合は彼の背後に広島の選手が走り込んでいたわけではないので、広島にも得点チャンスはなかった。
「ルールとして手を広げてはならない」ことは理解しているものの、DFが両手を後ろに隠しながらドリブル突破を図る選手と相対する姿は不自然だし不格好でもある。せっかくの1対1の対決なのに『絵にならない』ことこの上ない。
そんなVARに2試合を一緒に取材したベテランジャーナリストの後藤健生さんは、「監督のチャレンジ制にして、失敗したら権利を失うようにした方がいい」と提案した。テニスの国際大会やMLBでは微妙な判定に対し、選手や監督が異議を申し立ててビデオ判定を要求することができる。
MLBではチャレンジといい(日本のプロ野球ではリクエスト)、ホームランやヒットかファウルかどうか、アウトかセーフか、ボールかストライクかなど微妙な判定にビデオでの確認を要求できる。1試合最大2回までで、チャレンジして判定が覆ればもう1回チャレンジできるが、判定が覆らなければチャレンジ権を失うというルールだ。
悪質な反則に対してイエローではなくレッドだといった選手生命を守るためのVARは大歓迎だ。しかしハンドかどうか『重箱の隅をつつく』ようなVARとOFRがのべつまくなし介入して試合が中断されるのは、サッカーの持つ連続性とダイナミズムを損なう気がしてならない。
といって嘆いても、競技規則はIFAB(国際サッカー評議会)が変更しない限り変わらないし、そもそもVARが導入された時点でビデオアシスタントレフェリーは職務に忠実に『鵜の目鷹の目』で試合をチェックするのは予想されたことでもあった。そしてカタールでのアジアカップでは、やたらと後半のアディショナルタイムが長くなり、ドラマチック?な展開が続いた。
オフサイドにしても、2次元から3次元に判定基準が進化した。「手首が出ていた、つま先が出ていた」からオフサイド? これも枝葉末節なことであり、サッカーの本質とはかけ離れた議論と思うが、話が長くなるのでやめておこう。
2024年3月11日(月)18:30