★【六川亨の日本サッカー見聞録】期待したい3位決定戦

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▽6月14日に始まったロシアW杯も約1ヶ月が過ぎ、残すは14日の3位決定戦ベルギー対イングランド、15日の決勝戦フランス対クロアチアの2試合のみとなった。今大会は優勝候補のドイツがグループステージで敗退しただけでなく、ブラジルやアルゼンチン、ポルトガル、スペインといった強豪国が早々と姿を消した。

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▽6月14日に始まったロシアW杯も約1ヶ月が過ぎ、残すは14日の3位決定戦ベルギー対イングランド、15日の決勝戦フランス対クロアチアの2試合のみとなった。今大会は優勝候補のドイツがグループステージで敗退しただけでなく、ブラジルやアルゼンチン、ポルトガル、スペインといった強豪国が早々と姿を消した。

▽彼らは試合によって好不調の波があり、ラウンド16は日本対ベルギー、準々決勝はブラジル対ベルギー、スウェーデン対イングランドを現地取材したが、正直な感想は「負けたくない試合運び」のため、正直なところちょっと退屈な試合だった。

▽ところが準決勝のフランス対ベルギー、クロアチア対イングランドは2試合とも“勝ちに行く”サッカーだったため、「やっとW杯らしい」スリリングな試合を楽しむことができた。もともとW杯は決勝戦も含めて勝負にこだわるため、見せ場の少ない試合になることが多い。過去の大会でも名勝負と言われる試合は準決勝が多かった。

▽それを裏付けるようにフランス対ベルギー、クロアチア対イングランドは、互いにヨーロッパのリーグ戦でチームメイトだったり対戦相手だったりしたため手の内を知っているだけに、オープンな打ち合いとなる時間帯もあり大いに楽しめた。

▽さて3位決定戦である。ベルギーは86年メキシコ大会でエリック・ゲレツやヤン・クーレマンスらを擁して初のベスト4進出を果たしたものの、フランスとの3位決定戦では両チームとも戦力を落としたことで“退屈”な試合の結果4位に終わった。そこで初の3位という最高成績を残すためにも14日はベストメンバーで闘って欲しいものだ。

▽対するイングランドは下馬評こそそれほど高くはなかったものの、独特のシステムで躍進を続け、90年イタリア大会の4位以来28年ぶりの3位決定戦にコマを進めた。当時のメンバーにはベテランGKピーター・シルトンを始め、ゲリー・リネカー、クリス・ワドル、ピーター・ベアズリー、デイビッド・プラット、ポール・ガスコインら錚々たるメンバーが揃っていたが、ロベルト・バッジョとサルバドール・スキラッチのゴールによりイタリアに1-2で敗れた。

▽しかし今大会はスピードスターのラヒーム・スターリングや、現在6ゴールで得点王候補筆頭のハリー・ケインら“今が旬”な選手が多いだけに、好ゲームが期待される。なによりもイングランドは、試合中に手を抜いたプレーをしないし、シミュレーションで故意に倒れて反則を誘ったり、露骨な時間稼ぎをしたりしない。プレミアリーグのファン・サポーターがそれを許さない伝統がある。

▽クロアチア戦の後半19分のことだ。ペナルティーエリア右でドリブル突破を仕掛けたスターリングは足を引っかけられて倒れたものの、PKをアピールすることなく倒れたままで折り返しのクロスを送ろうとした。これはGKスバシッチにカットされたが、彼のプレー1つをとっても“ジョンブル魂”を垣間見た気がした。

▽残念ながら彼らが歌う「ゴッド・セーブ・ザ・クイーン」のアンセムも、「フットボール・イズ・カミング・ホーム」(フットボールが母国に帰ってくる=優勝トロフィーが母国のものになる)も実現しなかった。

▽しかしイングランドのサポーターが野太い声でスタジアムを揺るがす雰囲気は、やはりひと味も二味も違う。ゴール裏に掲げられたサポーターの国旗には必ず自分の愛するクラブの名前が入っているのもイングランドならではだ。「自分はここにいるよ」というメッセージであり、「1人でも戦いに来た」という意思表示でもある(どちらかというとマイナーなクラブのサポーターの方が多い)。

▽そんな彼らの声援を受けることが予想されるだけに、今大会の3位決定戦は好勝負が期待できるのではないだろうか。そんな思いを抱いてサンクトペテルブルクに行くことにした。

2018年7月12日(木)20:00

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