★アジア2次予選の是非と日本代表が示すべきもの、残り4試合への期待/日本代表コラム

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「2次予選の結果については、浮かれて喜べるようなものではないと思っています」と試合後の記者会見に口を開いたのは日本代表の森保一監督。カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選でグループ首位が決定。

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「2次予選の結果については、浮かれて喜べるようなものではないと思っています」と試合後の記者会見に口を開いたのは日本代表の森保一監督。カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選でグループ首位が決定。最終予選進出が決まった後の言葉だ。

日本代表は28日、ミャンマー代表とのアジア2次予選を行い、10-0と大勝。3月に行われたモンゴル代表戦の14-0に続いて、2試合連続で2桁得点、クリーンシートで突破を決めた。

森保監督が語った理由は「我々と対戦国の力の差が結果としてあった」ということ。誰が見ても、その理由には納得だ。

そして、キャプテンを務めるDF吉田麻也は試合前にも問題提起をしていたが、試合後にも「あまりにも実力差があると、それが有意義になるのかというと個人的にはクエスチョンです」と語り、やはり力の差がありすぎる国同士の予選の意義を口にしていた。

◆日本代表が示すべきもの

戦前から予想できていたことではあるが、改めて2試合連続で2桁得点を見てしまうと、拍子抜けという感じは否めない。

一方で、これまでこういった戦いができると見られていた相手に対し、しっかりと大差で勝ってきたかと言われれば、日本代表は全くもって期待に応えられていなかったのも事実だ。

例えば、2018年のロシアW杯に向けた予選。2次予選では初戦でシンガポール代表とゴールレスドローに終わると、8試合無失点で終えたものの、最多得点差は第3節のアフガニスタン代表戦の6得点。その試合も、前半は2得点に終わり、後半4得点を奪っての6-0だった。

2014年のブラジルW杯に向けた予選では、3次予選という形だったが、タジキスタン代表相手に8-0が最多得点差。北朝鮮代表やウズベキスタン代表には負けるということもあった。

これまでの日本代表を考えれば、どんなに点差が開いても最後まで戦い抜くという姿勢はあったかもしれないが、実際にゴールは二桁に届いていない。もちろん、実力差が今まで以上にあったとも言えるが、やり切るという姿勢がこの代表には備わっている。

大事なのは得点差ではなく、選手たちの姿勢。「常に次の1点とゴールに向かう姿勢は見せてくれた」と森保監督が試合後に語ったが、試合終了のホイッスルが吹かれるまで、日本が攻撃の手を緩めなかったことが元びびも大事だ。

吉田は「10-0とか2桁得点で勝っていく試合が増えれば、自ずとそういったクエスチョンが出てくると信じてやっています」と語ったが、この力の差を見せ続けることが、今の日本がすべきことだろう。

◆世界と肩を並べることが目標
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その理由を吉田は「W杯で結果を残せなければどんどん枠を減らされていくと思うので、そこが一番アジアが変えなきゃいけないところだと思います」と語っていた。

W杯の出場国増加という話題がかつて上がったが、それが実現した場合はなおさらこの問題が大きく取り上げられることになるだろう。

2018年のロシアW杯では、ベスト16に勝ち上がったアジアの国は日本だけ。2014年のブラジルW杯はアジアからベスト16はゼロ。2010年の南アフリカW杯は日本と韓国の2カ国だ。

アジアは現在「4.5」の枠をもらっているが、世界で戦えないという決断が下されれば、「4」になる可能性も「3.5」になる可能性もある。アジアからW杯に出場させるより、ヨーロッパや南米からもう1枠増やそうと考えられてもおかしくないだろう。

日本代表はカタールW杯でこれまで到達していないベスト8以上を目指して戦っている。森保監督も「我々はもっと高いところに目標があることをしっかり考えなければいけない」と語ったが、アジア2次予選で手こずっていてはダメということだ。

それでも、実力差がある相手に、ホームアドバンテージもあった中でこの2試合で残した結果は褒められるべきもの。今までの日本代表では、きっと残すことはできなかった結果であり、その変化は選手の能力が成長したこと以上に、メンタリティの変化が大きいと言える。それは、世界の強豪と戦う時に必要なものだろう。

◆ブラッシュアップとトライ
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6月は親善試合が2試合、そして2次予選が残り2試合ある。吉田やDF酒井宏樹、MF遠藤航が東京オリンピック世代に向かい、今回招集されていた多くの五輪世代の選手がいなくなる。

半分以上の選手が入れ替わる中で、残りの4試合をどう戦っていくのか。ここも新たな見所だ。当然、2次予選の残り2試合はモンゴル戦、ミャンマー戦のような展開を期待され、それに応えてもらう必要がある。

一方で、ジャマイカ代表戦、セルビア代表戦は、相手のレベルが2次予選よりは数段上がるため、苦しい試合になる可能性はある。そこで、どんなパフォーマンスを見せるのか。悲観的になるのではなく、このメンタリティがどこまで発揮できるのか、通用するのかを図る良いチャンスだ。

そして、ミャンマー戦で見せた[4-1-4-1]というオプション。その他にも、[3-4-2-1]という形もかつては見せており、様々な相手に対応するためにバリエーションを増やしたいところではある。

最終予選は9月からスタート予定。この4試合が終われば、次の代表活動は最終予選前の8月までない。残り4試合でさらに精度を高めていけるのか。大事な4試合となるだろう。

《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

2021年5月30日(日)21:50

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