★国内組が見せた変化、“普段”のパフォーマンスをいかに出せるか/日本代表コラム

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およそ3週間にわたる長い日本代表の合宿も終了。この間、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の3試合、セルビア代表との国際親善試合、そして突如生まれたU-24日本代表とのテストマッチの合計5試合を行った。

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およそ3週間にわたる長い日本代表の合宿も終了。この間、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の3試合、セルビア代表との国際親善試合、そして突如生まれたU-24日本代表とのテストマッチの合計5試合を行った。

5月28日に行われたミャンマー代表とのカタールW杯アジア2次予選は日程の関係から海外組のみが参加。6月から国内組も参加することとなった合宿は、実り多いものとなった。

◆チームの底上げ
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何よりも大きな成果はチームの底上げができたという点だろう。来月に控える東京オリンピックに向けたU-24日本代表の活動も6月は行われ、そこにオーバーエイジとしてDF吉田麻也(サンプドリア)、DF酒井宏樹(浦和レッズ)、MF遠藤航(シュツットガルト)が参加した。

A代表でも中核を担う3名を東京オリンピックのオーバーエイジとして採用できたことは、森保一監督が兼任していることの賜物。2018年のロシアW杯でベルギー代表の前に敗れ、失意のどん底にいた中での森保監督の兼任という決断は、ここに来て大きな成果につながりそうだ。

そして、その3人がU-24日本代表の大きな力になることに加え、DF冨安健洋(ボローニャ)やMF久保建英(ヘタフェ)など、A代表の常連組もU-24日本代表の活動に参加。そのため、普段は訪れることがないチャンスが、A代表では生まれていた。

昨年の2度の欧州遠征は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあり、海外組のみで活動。しかし、3月の活動から、国内組も加わり、6月もその形は継続された。

その結果、主軸が抜けた穴を争うべくチーム内で競争が起こり、国内組の選手を中心に控えとみられる選手たちが奮起した。

また、誤算でもあることではあるが、FW大迫勇也(ブレーメン)が途中で離脱、MF南野拓実(サウサンプトン)もキルギス代表戦を前に離脱したことで、そのチャンスはさらに広がり、選手を試さざるを得ない環境にもなったが、そこが上手く機能したと言える。

◆国内組に見られた変化
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その中でも目についたのが国内組の選手たちの変化だ。進化と言っても良いかもしれない。

前述の通り、6月の活動からは主軸が数人抜けたことで、チーム内での競争が活性化。また、最終予選に進出することが決まったことからも、公式戦をテストとして使うことが可能となったことが大きい。

今回招集された国内組の選手は、追加招集のFWオナイウ阿道(横浜F・マリノス)も含めて11名。3月の活動に居なかった選手も4名加わったが、合宿が3週間あったこともあり、大きな変化を生み出すこととなった。

3月の活動から1つステージが上がった日本代表。そのステージはこの5月、6月も維持されていたが、3月の活動では戸惑っていた国内組の選手たちが、このステージで戦える形に進化した姿が見られた。

特にメンタリティの変化が大きく、3月から継続して呼ばれた選手たちは、受けた刺激をそのまま継続。今回初めて活動に入ったDF昌子源(ガンバ大阪)やDF谷口彰悟(川崎フロンターレ)、MF坂元達裕(セレッソ大阪)、FWオナイウ阿道(横浜F・マリノス)も、当初その差を感じながらも、この3週間で適応していった。

それはピッチ上でも表れており、まだまだ課題は個々にありながらも、明らかにプレーに変化が出ている状況。タジキスタン、セルビア、キルギスの3試合では試合中にもその変化が見られた。

◆通常のパフォーマンスレベルを上げられるか
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その中でも1つポイントとなったのは、クラブで見せているパフォーマンスを代表の舞台でも出せるかということだろう。

数いる選手の中から選抜されて組むのが代表チームであり、森保監督を含めたスタッフ陣のスカウティングで認められた能力の選手が集っている。能力には問題ない選手が代表チームで輝けないことはしばしばあるが、その大きな理由は普段のプレーを出せないというところにある。

これは国内組に限ったことではないが、評価されたパフォーマンスが発揮できなければ、当然評価は上がらず、結果も残せない。持っているパフォーマンスをいかに試合で出せるかが重要となる。

その点で、3月の活動から日本代表のステージが1つ変わり、個々が持っている特徴をチームとして発揮するということにこだわった。その結果が、韓国代表戦の勝利やモンゴル代表戦の圧勝につながり、それが今回の活動にも継続されていた。

そして、その通常のパフォーマンスをしっかり発揮していたのが海外組だけでなく、国内組にも広がったのが今回の活動だったように思う。

U-24日本代表戦を含めて5試合。通常の代表活動で全選手がピッチに立つことはないが、今回の活動せは全員がピッチに立った。またフィールドプレーヤーは全員が2試合以上に出場。さらに、日本代表の経験が少ない選手は公式戦で2試合に起用されたことも大きいと言える。

トレーニングで強度の高さを学び、それを実戦で試す。そこで出た課題を、再び試合ですぐにトライできるという環境が、大きな変化をもたらしたように思う。チーム戦術は所属クラブとは違いながらも、局面で求められる個々のパフォーマンスはクラブで見せるものと変わりなかった。

その結果は、セルビア戦の後半のプレー、そしてタジキスタン戦とキルギス戦のパフォーマンスの変化にも見られるだろう。Jリーグで見せている普段のプレーをしっかりと発揮すれば、国際舞台でもある程度通用することは証明した。もちろん磨かなくてはいけない部分は多々あるが、Jリーグでやっていることは間違っておらず、選手が積み上げてきたものも間違っていないことが証明された。

キルギス戦でいてば、初ゴールからハットトリックを達成したオナイウのポジション取り、右サイドで縦に中にと変化をもたらせた坂元の仕掛け、立ち位置のチェックとアグレッシブな動きからアシストを決めた川辺の飛び出し、他の選手も個々の特徴を見せたが、それをいかに高いレベルでクラブでも続けられるかが今後のカギとなる。

◆最終予選へのサバイバル
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次の活動まではおよそ2カ月半の期間が空くことになり、海外組は新シーズンの開幕まで束の間の休息がある。また、チームを変える選手、チーム内でのポジション争いが待つ選手など、それぞれの勝負が始まる。

一方で、国内組はリーグ戦が待っており、実戦の場でのアピールが可能。この3週間で得たものを、チームに戻っても磨き続けられるか、そしてピッチ上で表現できるかが重要になる。

そして、その還元がJリーグそのもののレベルを引き上げることに繋がり、その結果がさらに選手自身の強化、成長に繋がっていく。代表からJリーグへ、Jリーグから代表へという循環を、チームに戻った選手たちが作り出すことが、日本代表が来年のカタールW杯で結果を残すためには必要だろう。

Jリーグで結果を出し続ければ日本代表への道が開けることは証明された。そして、それが国際舞台でも通用することも証明された。より高いレベルの相手に通用するかどうかは、ここからどれだけ磨けるかに懸かってくる。

9月の最終予選には、東京オリンピックを終えた選手たちもポジションを狙ってくる。「1チーム2カテゴリー」と森保監督は常日頃から口にするが、「1チーム1カテゴリー」になり、U-24日本代表の選手たちもA代表の舞台でサバイバルが始まる。

明らかにこれまでとは異なる姿を見せている日本代表。難敵揃いの最終予選でも見たいのは、ここ最近のサッカーだ。それを見せるためには、各クラブで、国内外問わずそれぞれの選手が高みを目指し続けることが不可欠。自らの基準を上げていけるかが重要となる。

《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

2021年6月18日(金)7:15

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