★97年以降3戦全勝。ゲンがいいスルタン・カブース・スタジアムで大一番に挑む日本代表

2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選も折り返し。今日16日(日本時間17日未明)には後半戦の一発目となるオマーン戦が敵地・マスカットで行われる。

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2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選も折り返し。今日16日(日本時間17日未明)には後半戦の一発目となるオマーン戦が敵地・マスカットで行われる。

11日のベトナム戦(ハノイ)を1-0で辛勝した直後、チャーター便で現地入りした日本代表は12〜15日まで4日間のトレーニングを実施。気候やピッチ環境などの現地適応は万全と見られる。

「ベトナムに比べて少し気温が高いかなという感じ。前回の試合に比べて準備する時間はあるので、まあいいコンディションで試合に臨めるんじゃないかと思います」とエースナンバー10を背負う南野拓実(リバプール)も少なからず自信をのぞかせた。

2012年11月の2014年ブラジルW杯最終予選の時がそうだったように、この時期でも猛暑のイメージが強いオマーン。だが、今回は南野が言うように、そこまで気温は高くない。日中こそ眩しい日差しが照り付け、30度前後まで上がるが、日没後は一気に気温が下がり、かなり過ごしやすくなる。試合前日の15日もキックオフの20時前後の気温は25度程度。上着が必要なくらいの感覚だった。選手たちにとっては動きやすい環境と言えるだろう。

試合会場のスルタン・カブース・スタジアムは3万4000人収容。今回はコロナ禍で50%収容となるため、1万5000人強の観客が入る見込みだ。感染対策が比較的徹底されているオマーンだけに、多くの人がマスクをして観戦するだろうが、Jリーグのような拍手や手拍子だけというわけではない。圧倒的声援に押されないように、日本としては集中した試合運びを見せる必要がある。ピッチ環境もところどころボコボコしているというが、劣悪だったベトナムのミーディン・スタジアムに比べるとかなりいいという。日本らしいパス回しやコンビネーションを発揮するのに支障はないはずだ。

まさに舞台は整ったわけだが、このスルタン・カブースは日本人とってゲンのいい競技場。というのも、97年3月の98年フランスW杯1次予選、2004年10月の2006年ドイツW杯1次予選、2012年11月のブラジルW杯最終予選の3試合をいずれも勝利しているからだ。

過去3度のゲームをそれぞれ振り返ってみると、97年3月は小村徳男(解説者)のヘディング弾で1-0で勝利した。1次予選はオマーン、マカオ、ネパールと同組で、最終予選進出を懸けた最大のライバルがオマーンだった。その宿敵とのアウェー戦から1次予選がスタートしたため、加茂周監督率いる日本としてはピリピリ感が強かったが、そこで白星発進できたことで、問題なく最終予選に進んだ。その後の展開はご存じの方も多いが、日本は紆余曲折の末、第3代表決定戦でイランを倒し、W杯初出場を決めた。ジョホールバルの歓喜につながる重要な一発目がオマーン戦だったのだ。

2004年10月はジーコジャパン時代。同年7〜8月のアジアカップ(中国)で王者に輝き、チーム全体が勢いに乗っていた頃だ。この時の1次予選は同年2月のホーム・オマーン戦(埼玉)からスタート。久保竜彦の劇的ロスタイム弾で1-0で勝ち切ったのを皮切りに勝ち点3を積み重ねていた。

敵地・オマーン戦は5戦目で、最終予選突破のかかる一戦だった。当時の絶対的司令塔・中田英寿が長期離脱中の日本だったが、中村俊輔(横浜FC)と小野伸二(札幌)のダブル司令塔が非常によく機能し、内容面で相手を圧倒した。そして決勝点を挙げたのは鈴木隆行(解説者)。2002年日韓W杯初戦・ベルギー戦の先制弾など大舞台に強い点取屋が大仕事をやってのけた。

その後の最終予選は2005年3月のイラン戦(テヘラン)に破れ、チームが大きく揺れ動いたものの、すぐさま立て直して最後はタイでの無観客試合で北朝鮮に勝ってW杯切符を決めた。多少の苦労はあったが、まずまず順当な戦いだったと言っていい。

そして前回の2012年11月のオマーン戦は、ブラジル行きに大きく前進する重要ゲームだった。アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表は本田圭佑(ズドゥーヴァ)と香川真司(PAOK)、岡崎慎司(カルタヘナ)の3枚看板が傑出した勝負強さを披露。同年6月の初戦・オマーン戦(埼玉)の3-0から快進撃を見せていた。その後、ヨルダンに6-0で圧勝し、敵地・オーストラリア戦は引き分けたものの、イラクにも勝ち切って、迎えた第5戦がスルタン・カブースでのオマーン戦だ。

日本はロンドン五輪世代の清武弘嗣(C大阪)の代表初ゴールで先制。前半のうちに1点を返されるも、後半終了間際に決勝点を奪う。左サイドの深い位置から酒井高徳(神戸)が上げたクロスに遠藤保仁(磐田)が詰め、ファーから合わせたのが岡崎。この1勝で2012年を終えられたことで、日本は2013年3月に敵地でヨルダンに負けながら、6月のオーストラリア戦(埼玉)のドローで切符をつかむことができた。

このように日本は節目節目でオマーンに勝ち、W杯への道を切り開いてきた。ゲンのいいスルタン・カブースで栄光の歴史を継続できるか否かは森保一監督と選手たちに懸かっている。今回の最終予選は序盤のもたつきが目立つが、ここで複数得点を奪って快勝できれば、2022年のラスト4戦に大きな弾みがつくはずだ。

逆に勝ち点を1つでも落とすようなことがあれば、指揮官の進退問題再燃は確実。現地入りしてからの森保監督は報道陣に対して明るく振舞い、時には冗談交じりのコメントを発するなど、メンタル的に落ち着いた状態でチームマネージメントに当たっている様子だ。が、その冷静さを試合中も維持できるのか。効果的な采配で敵を凌駕できるのか…。まさに今回のオマーン戦で彼自身の真価が問われることになる。

【文/写真・元川悦子】
長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターとなる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォローし、日本代表は特に精力的な取材を行い、アウェイでもほぼ毎試合足を運んでいる。積極的な選手とのコミュニケーションを活かして、選手の生の声を伝える。


2021年11月16日(火)19:30

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