★中国戦とサウジ戦の明白な違い/六川亨の日本サッカー見聞録

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スコアはいずれも2-0だったが、中国戦の日本とサウジアラビア戦の日本の、どちらが本当の日本なのだろうか。答えは当然、どちらの日本も本当の日本ということになる。

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スコアはいずれも2-0だったが、中国戦の日本とサウジアラビア戦の日本の、どちらが本当の日本なのだろうか。答えは当然、どちらの日本も本当の日本ということになる。

中国戦は、これまでも何度も指摘されたように、海外組は移動や時差の影響からベストなコンディションではなかっただろう。そして国内組もオフ明けということで、急ピッチで仕上げたものの大迫勇也や長友佑都らベテラン勢は動きに精彩を欠いた。

そして勝ったとはいえ中国戦では、城彰二氏ら代表のOBが複数の選手のプレーについて批判的な記事を書いたことで注目を集めた。同調するメディアも少なくなかった。勝ったからといって無闇に賞賛するのではなく、厳しい意見を言った城氏、そしてそれを受けいれた長友の姿勢は、これまでの日本サッカー界にはなかった現象と言っていいだろう。

続くサウジアラビア戦では南野拓実がゴールという結果を出しただけでなく、守備にも奔走した。このサウジアラビア戦は、中国戦と違って大きな論争を呼ぶことはなかった。選手はファイトしていたし、個人的に気になったのはポストプレーで貢献した大迫で、ターンなどで身体の切れを欠いたように感じたことだ。こちらはJリーグの試合で確認できるだろう。

サウジアラビア戦が中国戦ほど盛り上がらなかったのは、もしかしたらプロ野球がキャンプインしたり、北京冬期五輪が近づいていたりしたせいかもしれない。

現在サウジアラビアは、W杯最終予選の首位である。しかし相手はアジアのチーム。そこに勝ったからといって大騒ぎするほどのことではない――というのも正しいリアクションと言える。それだけ日本もファン・サポーターを始めとしてメディアも成熟しつつあるということなのかもしれない。

そして改めて最終予選の2試合を振り返ると、日本は「相手に合わせた」という印象を拭えない。スローペースの試合運びで、どんな攻撃をしたいのかも明確ではない中国に対し、日本も足元から足元へのパスが多い、“各駅停車"のサッカーだった。

ところがサウジアラビア戦は、相手の素早いプレスに対し、日本も素早い攻守で対抗した。判断の速さ、プレースピードの速さ、パススピードの速さなどが中国戦とは1ランクも2ランクもアップした。

本来なら、どんな相手でも実力を発揮しなければいけないのだが、それができるのはブラジルくらいだろう。

そこで思い出すのがザック・ジャパン時代の2013年11月、オランダ遠征で地元オランダとは2-2、ベルギーとは3-2の好勝負を演じた。ところがその前の10月は敵地でベラルーシに0-1、セルビアには0-2で敗れた。W杯出場を逃した2チームにいいところなく敗れたのだ。

ハリルホジッチ・ジャパンも18年3月のベルギー遠征でマリに1-1,ウクライナに1-2で敗れたことが引き金となって契約解除に至った。

相手がアグレッシブで攻撃的なサッカーを仕掛けてくるかどうか。打ち合いになれば攻撃的で面白い試合になるだろう。対照的に格下のチームはその逆を狙う。その意味では、中国のスローペースな、つまらない試合運びはリー・シャオペン監督にとって狙い通りだったのかもしれない。あまりにも決定力に欠けたが。

「試合は生き物」とはよく言ったものだ。

2022年2月4日(金)22:00

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