★【2022年カタールへ期待の選手vol.98】「中盤のサブ」からW杯のレギュラーへ。序列アップに必要不可欠な「目に見える結果」/原口元気(ウニオン・ベルリン/MF)

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「ピッチに立てない時は悔しいし、ピッチに立って貢献したいというのが一番なので、オフ・ザ・ピッチで何かしたいというのは、正直選手として違うと思う。それが今できていないという現状はすごく悔しい。

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「ピッチに立てない時は悔しいし、ピッチに立って貢献したいというのが一番なので、オフ・ザ・ピッチで何かしたいというのは、正直選手として違うと思う。それが今できていないという現状はすごく悔しい。だけど、いつか必ず自分の力が必要になる時が来ると信じて、今は時間が短いですけど、出番が来る時をただ信じて、常にポジティブにやっていくだけかなと思っています」

2022年カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の天王山と位置づけられた今月1日のサウジアラビア戦(埼玉)。この試合を前に、2018年ロシアW杯16強戦士の1人である原口元気(ウニオン・ベルリン)は改めて複雑な胸中を吐露した。それもそのはず。2018年9月に森保一監督率いる現日本代表が発足してからというもの、彼はずっと中途半端な立ち位置を強いられているからだ。

当初は堂安律(PSV)、南野拓実(リバプール)、中島翔哉(ポルティモネンセ)の「新2列目トリオ」の控えに甘んじた。その1人である中島が2019年アジアカップ(UAE)を欠場すると、原口を左MFに抜擢され、持ち前のダイナミックさと献身的守備を披露。準優勝の原動力となった。

このままレギュラー定着となれば、彼にとっては理想的だったが、当時の森保監督は中島への寵愛が凄まじく、同年6月のコパ・アメリカ(ブラジル)に招集。同年9月スタートのカタールW杯2次予選でも攻撃の軸に据えていた。原口は「2列目のバックアップ役」という立場から脱することができなかった。

しかし、当時10番を背負っていた中島が2019年夏に赴いたFCポルトで苦境に陥り、キルギス戦(ビシュケク)ではついに先発から陥落。代わってスタメンに浮上したのが原口だった。重要な一戦で彼は先制FKを決め、過酷なアウェーでチームを勝利へと導く。「ようやくここからだ」と本人も確固たる手ごたえをつかんだはず。代表戦が予定通りに続けば、序列変更もあり得ただろう。

ところが、ご存じの通り、2020年頭からコロナ禍に突入。代表活動が1年近く休止状態に陥った。悪いことに彼自身も当時ハノーファーでブンデスリーガ2部での戦いを強いられており、1部で活躍していたヘルタ・ベルリン時代に比べてインパクトが薄かった。20-21シーズンも2部残留。浮上のきっかけをつかめない中、伊東純也(ゲンク)や鎌田大地(フランクフルト)ら若手欧州組が台頭。代表で南野が左に移動したこともあり、彼はまたしてもベンチに追いやられる形になった。

それでも、2021年9月の最終予選初戦・オマーン戦(吹田)では負傷離脱の南野に代わって左サイドで先発のチャンスを与えられた。だが、ウニオン・ベルリンに新天地を見出したばかりの時期でパフォーマンスが思うように上がらず、前半45分のみで交代。これには本人も落胆が大きかっただろう。

その後、日本は序盤3戦中2戦を落とすという絶体絶命のピンチに陥り、森保監督は10月のオーストラリア戦(埼玉)から[4-3-3]にシフト。中盤には遠藤航(シュツットガルト)、守田英正(サンタ・クララ)、田中碧(デュッセルドルフ)のボランチタイプ3枚が定着。両サイドも伊東と南野がファーストチョイスとなった。

結局、原口は最終予選8試合中7戦に出場しているものの、6試合は終盤のクローザーとして起用されるのみ。指揮官の中では「前回最終予選で4戦連続ゴールを決め、ロシアW杯のベルギー戦(ロストフ)で強烈なゴールを叩き出した彼ならイザという時に戦える」という考えがあるのだろうが、30歳のベテランにどんな仕事を求めているのかよく分からない印象も拭えない。そこには本人も戸惑いは少なからずあるだろう。

ただ、ウニオン移籍後はインサイドハーフでプレーするようになり、ロシアW杯の頃のようなウインガーではなくなった。代表も左サイドには頭抜けた打開力を誇る三笘薫(サン=ジロワーズ)、矢のようなスピードを武器とする浅野拓磨(ボーフム)や前田大然(セルティック)らがいて、今の原口がこうした面々と競争するのは現実的とは言えない。

となれば、やはりインサイドハーフで生き残りを図っていくべきだろう。指揮官は失敗できない最終予選は遠藤・守田・田中碧という手堅い3人をベースにし続けるだろうが、3月シリーズで切符をつかんだ暁には本大会に向けてより攻撃力のあるインサイドハーフをテストしていくはずだ。

その候補者として久保建英(マジョルカ)や堂安らもいるが、攻守両面で強度があり、世界基準のプレーを出せる原口は確かに貴重な戦力になり得る。代表68試合11ゴールという実績は大舞台になればなるほど頼もしい。

彼に関してもう1つ特筆すべきなのは、ここまで3年半ずっと中途半端な立場に置かれたのに、決して腐ることなく、練習から120%で取り組める強靭なメンタリティだ。それは1〜2月の代表シリーズでも顕著だった。「練習の雰囲気が素晴らしい」と森保監督も口癖のように言っていたが、原口はピリピリした空気を作り出している主要な人間。負けじ魂を全身で示し、仲間と言えどもつねにバチバチとぶつかり合うような激しさをもたらせる存在は強い代表に必要不可欠だ。

そこに「目に見える結果」がついてくれば必ず浮上のチャンスが見えてくる。真っ先に何とかしなければいけないのが、ウニオンでのノーゴールという現状。19日のビーレフェルト戦は出番なしに終わり、日本人選手の後輩・奥川雅也に主役の座を持っていかれた。この苦境から抜け出し、代表でも2019年から無得点という壁を超えることが肝要だ。「点の取れるインサイドハーフ」に変貌を遂げられれば、カタールの大舞台でのリベンジは十分にあり得るのではないか。

31歳になる2022年。原口元気には集大成となる1年で大きな成果を手にしてほしいもの。ここからの逆襲に大きな期待を寄せたい。

2022年2月22日(火)19:30

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