★ELとCL決勝の日本人対決? 不安はDF陣のベテラン/六川亨の日本サッカーの歩み

Getty Images
5月9日は森保一監督が4月28日以来となるズームでの会見に応じ、なかなか興味深いコメントを発した。フランクフルトをEL決勝へ導いた鎌田大地については、今シーズンから監督に就任したオリバー・グラスナー監督のもと、「求められるもの、役割が変わり、選手として成長していると思う」と高く評価。

記事全文

5月9日は森保一監督が4月28日以来となるズームでの会見に応じ、なかなか興味深いコメントを発した。フランクフルトをEL決勝へ導いた鎌田大地については、今シーズンから監督に就任したオリバー・グラスナー監督のもと、「求められるもの、役割が変わり、選手として成長していると思う」と高く評価。

W杯予選でも2次予選は攻撃の中心選手だったが、最終予選に入ると他チームの「一気にギアが上がった」ことで、2次予選とは「違う戦いをした方がよかった」との判断から出場機会が激減した。

それまでの森保ジャパンはほとんどの試合で4-2-3-1を採用していた。しかし左FWの南野拓実、トップ下の鎌田、ダブルボランチの柴崎岳は言うまでもなく攻撃を得意とする選手で、インテンシティの高い守備は苦手としている。このためミドルサードでは、格下相手にボールを保持して攻めているときはいいが、最終予選のように拮抗した相手との試合で守備に回ると劣勢を強いられるのは否めなかった。

そこで森保監督は4-3-3にして遠藤航、守田英正、田中碧の攻守にハードワークできるユニットにモデルチェンジした。

この傾向は今シーズンのJリーグにも当てはまり、4-3-3の布陣から前線の3人が高い位置からプレスをかけるチームが増えていて、タテに速く仕掛けるインテンシティの高いチームが多い。とりわけヨーロッパ出身の監督が率いるチームはその傾向が強いと言っていいだろう(J1リーグでブラジル人監督は柏のネルシーニョ監督1人だけになった)。

話を鎌田に戻すと、4-3-3(あるいは3-4-3)で使うとしたら、やはりフランクフルトと同様に左FWということになり、南野とポジションが重なる。片やチームをEL決勝に導いた立役者、片やCL決勝に勝ち進んだチームを序盤戦で支えた功労者。甲乙つけがたい“共演"と言ってもいいだろう。

そんな2人をもしも森保監督が招集しなかったり、招集しても試合に使わなかったりしたら、ファン・サポーターからはブーイングの嵐かもしれない。これまでの代表チームではあまりなかったことなので、それはそれで日本のサッカー界にとって刺激になるし、一般の人にもW杯の話題を提供するいい機会かもしれない。

それよりも不安なのは、ベテラン選手の現状だ。ACLはグループリーグを突破したものの、J1リーグではついに最下位に沈んだ神戸の大迫勇也は、ケガなどもあり「コンディションが上がっていないなかで、100パーセントでないなかでプレーしている」(森保監督)状態だ。

さらに浦和の酒井宏樹は第5中足骨の手術を受けたため6月の4試合には出場できないし、FC東京の長友佑都は5月8日の鳥栖戦ではベンチにも入っていなかった。アルベル監督によると5月3日の福岡戦で「違和感を覚えたのでスタメンから外した。次の際に間に合うことを期待したい」と述べるに止めている。

彼ら3人に加え、サンプドリアの吉田麻也も直近の10試合でフル出場は1回、スタメンも2回と出場機会が激減し、今夏で契約も切れるため移籍は避けられない状況だ。前述した3人と同様、Jリーグへ復帰するのか。それともヨーロッパで移籍先を探すのか。移籍先がすんなり決まればいいが、長引くようだと6月の招集は難しくなるかもしれない。

これまでも指摘されてきたように、DF陣の高齢化とそれに伴うバックアッパーの不在が暗雲のように森保ジャパンを覆い始めている。ただし、これを好機ととらえ、思い切った起用による若返りが功を奏することもある。過去の日本代表も、そうして世代交代をしてきたからだ。

2022年5月10日(火)12:30

mixiチェック
LINEで送る
戻る
© livedoor