22日、2022-23 Yogibo WEリーグが開幕する。
昨シーズンは星川敬監督(現:Y.S.C.C.横浜監督)のもと、固い守備で初代女王の栄冠を手にしたINAC神戸レオネッサ。今季は新たに朴康造監督を迎えたチームが、変革とともに連覇となるか。対抗の最有力は継続路線でWEリーグカップを制した三菱重工浦和レッズレディース。さらには、各選手が育成年代の代表で研鑽を積んだ日テレ・東京ヴェルディベレーザもカップ戦準優勝の悔しさをバネに、名門復活を期する。
トップ3の牙城を崩すのは、走力のジェフユナイテッド千葉レディースか、強力外国籍FWを加えたマイナビ仙台レディースか。昨季とは異なり、カップ戦を挟んで迎える開幕のため、各チームの概要も見え始めている。
ここでは各11チームの紹介と、それぞれの注目選手をピックアップした。
チーム名(略称):昨季順位:成績
INAC神戸レオネッサ(I神戸)(1位:16勝2分け2敗)
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リーグ最少失点の「9」で初代女王の座を手にしたI神戸は、当然今季も優勝候補の1つ。ヴィッセル神戸でもプレーした朴康造新監督のもとで大きく舵を切り、リスクを負いながらも前線から奪う守備を決行している。これまでは中盤が主戦場だった脇阪麗奈を3バックの一角で起用するなど、攻撃的なサッカーに挑戦。髙瀬愛実や田中美南といったなでしこジャパン経験者のベテランに加え、8月にコスタリカで行われたU-20女子ワールドカップ(W杯)のMVP、浜野まいかや愛川陽菜など若い選手の台頭もあって攻撃のバリエーションは豊富になりつつある。
【注目選手】
●GK山下杏也加
昨季のリーグMVPを注目選手に推せない訳がない。今季は守備ラインが高くなったため、背後を狙われる回数が増えると予想されるチームの中で、国内では頭1つ抜けているショットストップ力はこれまで以上にカギを握る。
●MF成宮唯
今季から10番を背負ってタクトを振る。豊富な運動量とポジショニングの妙で、個性豊かな前線と最終ラインとをつなぐ、伊藤美紀とともに中盤で替えの効かない選手の1人。
●DF守屋都弥
右ウイングバックの1番手。チーム戦術の変更に伴い、昨季よりも高い位置で攻撃に関わるプレーが求められる中、カップ戦ではゴールも記録し、リーグ初得点にも期待は膨らむ。
三菱重工浦和レッズレディース(浦和L)(2位:13勝3分け4敗)
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昨季は皇后杯初制覇を成し遂げ、開幕前のカップ戦決勝も3点ビハインドをはねのけての逆転優勝。王座奪還の最有力候補として今季を迎える。初代得点女王・菅澤優衣香を筆頭に代表経験者をそろえる前線はWE屈指のタレント集団と言ってもいい。新加入選手は育成上がりと特別指定選手のみという継続路線を貫きつつ、清家貴子の前線への再コンバートや複数の新システムにも挑戦して戦い方の幅を広げている。最大の懸念であった南萌華の抜けた穴も、U-20W杯で準優勝に貢献した石川璃音で補えそうだ。
【注目選手】
●FW安藤梢
ボランチ、ウイング、トップ下と進化を続ける40歳。先発・途中出場含めてカップ戦で3試合連続ゴールと、いかなる形でも発揮される勝負強さはいまだ健在だ。
●MF柴田華絵
毛色の異なる攻撃陣を中盤の底で支える信頼度絶大のキャプテン。ボール捌きやカバーリングも秀逸でリーグ屈指ながらも代表に縁がないのは、柏レイソルの大谷秀和に近いものを感じる。
●DF石川璃音
172cmと上背もあり、カップ戦決勝では植木理子(東京NB)ともバチバチを演じるなど、対人も強い19歳のセンターバック。セットプレーから点が取れることも証明済みで、今季のブレイクを予感させる。
日テレ・東京ヴェルディベレーザ(東京NB)(3位:10勝4分け6敗)
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なでしこリーグ時代を含めて優勝17回の名門となれば、若手が主体になったとはいえ、3位という成績は受け入れがたいものだろう。追い打ちをかけるように不動の右サイドバック・清水梨紗が海外移籍。代役候補は新加入の西川彩華や坂部幸菜が有力か。一方で、山本柚月や樋渡百花らを筆頭にU-20やU-17のW杯で世界経験を積んだタレントは豊富。前線の創造性はリーグ随一と言っていい。3点リードからの敗戦を喫したカップ戦決勝のような勝負弱さを払拭して女王を目指すためには、若い世代が岩清水梓や宇津木瑠美らベテラン勢から際を締める強さを吸収する必要がある。
【注目選手】
●FW植木理子[写真]
自他共に認めるヘディングは大きな武器で、スピードを生かして自ら仕掛けてのゴールも奪える万能型ストライカー。代表でも結果を残す絶対的なエースが得点女王争いを演じられれば、自ずと優勝も見えてくる。
●FW藤野あおば
10月にはなでしこジャパンデビューも果たしたU-20の10番。推進力のあるドリブルとパンチ力のあるキックが持ち味で、昨季は10試合に出場し、後半戦だけで9試合4得点と、数字も残している。
●DF岩清水梓
前線には駒が揃うが、先のカップ戦では足を攣った村松智子の交代を躊躇するほど、センターバックの層は薄い。必然的に担う役割は大きく、守備のみならず、アメリカ遠征に続き、母としてのリーグ戦初ゴールにも期待が掛かる。
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース(千葉L)(4位:9勝7分け4敗)
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リーグ屈指の走力を誇り、昨季は“走るサッカー”から“勝つために走れるサッカー”へと進化。[3-4-2-1]をベースに皇后杯では決勝進出、リーグ戦でもなでしこリーグ時代を含めて過去最高順位で終えた。後半戦にはボランチ岸川奈津希の相方に今井裕里奈が名乗りを上げ、キック精度の高い鴨川実歩を本職の2列目に戻せたこともトピックの1つだろう。さらなる躍進が期待される猿澤真治監督3シーズン目だが、開幕前に林香奈絵、千葉玲海菜と、攻守のキーマンがケガで長期離脱という痛手に。両者の穴埋めと、対策に対する対策がトップ3に食い込むための必須項目だ。
【注目選手】
●MF鴨川実歩
千葉の顔とも言える育成組織出身の司令塔。得意なプレーにはドリブルを挙げるが、スルーパスやシュートを含めたキック精度も非常に高く、セットプレーでは岸川とのホットラインを形成する。
●MF岸川奈津希
海外でのプレー経験を持つパワフルなボランチは、強烈なミドルシュートが持ち味。加えて競り合いにめっぽう強く、力強いヘディングを武器に昨季はチームトップタイの6得点を挙げている。
●FW大澤春花[写真]
千葉玲海菜が定着までの昨季前半戦は1トップのファーストチョイスに。年代別の代表経験もあるFWは、シャドー起用時にも機動力と積極性を生かし、千葉、岸川に並んで6ゴールをマークしている。
マイナビ仙台レディース(マイ仙台)(5位:9勝4分け7敗)
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ショートパスを中心とした戦術で序盤戦は台風の目となったが、後半戦は勢いを欠くことに。オフ期間には白木星や池尻茉由、浜田遥や長野風花といった主力選手がチームを去り、新たに中島依美や各国代表で実績を持つ外国籍選手2人を補強した。昨季は3バックと4バックを併用したが、カップ戦では[4-4-2]や[4-3-3]を指向。松田岳夫監督2年目でベスト3の一角を崩せるよう、優勝を目標に掲げている。
【注目選手】
●FW宮澤ひなた[写真]
これまで主戦場だったサイドではなく、中央トップ下で存在感を発揮。パス、ドリブル、シュートと三拍子揃ったアタッカー。顔ぶれの変わった攻撃陣の中で数少ない残留組で、自らの仕掛けとともに指揮官のサッカーを落とし込む存在にも。
●FWスラジャナ・ブラトヴィッチ
ラージョ・バジェカーノから加入した上背のあるストライカー。ハンガリーリーグでは2年連続得点王、モンテネグロ女子代表としても55試合15得点の実績を持ち、クロスのターゲットマンとして大きな期待が寄せられている。
●MF中島依美
新天地で10番を背負う国内屈指のゲームメーカーは、なでしこジャパンとしても豊富な経験を持つ。勝負どころを落としがちだったチームへ、勝利のためのエッセンスを還元する役割も求められるだろう。
サンフレッチェ広島レジーナ(S広島R)(6位:7勝4分け9敗)
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WEリーグ発足に伴っての新規チームながらも、昨季は6位と健闘。中村伸監督は[4-3-3]をベースに、ポゼッションとウイングを生かしたチーム作りを進め、序盤は苦しむ中で中盤三角形の並びを模索。アンカーシステムからダブルボランチへ、上野真実と谷口木乃実の併用などが奏功し、終盤戦はI神戸から金星を含む5勝1分け1敗と調子を上げた。つなぎの精度向上でロストからの失点を減らし、サイドアタッカーの決定力が上がれば、目標に掲げている3位以内も見えてくる。カップ戦後の鹿児島キャンプで試したという新布陣も楽しみだ。
【注目選手】
●FW上野真実
2017年、当時2部の愛媛FCレディース所属時代になでしこジャパンに招集されるなど、得点感覚は群を抜く。昨季終盤には7試合で9得点と大爆発。E-1サッカー選手権2022では代表初ゴールも記録した。
●FW中嶋淑乃
E-1サッカー選手権でなでしこジャパンにも初招集された左サイドをえぐるドリブラー。緩急とテクニックを使い分けてのボールタッチは一見の価値あり。
●DF木﨑あおい[写真]
各ポジションに同等の選手が揃う広島の中で、唯一替えが効かない左サイドバック。攻め上がりのタイミングと非凡な組み立て能力で、多種多様なアタッカー陣を生かしている。
AC長野パルセイロ・レディース(AC長野)(7位:5勝6分け9敗)
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相手に合わせて戦い方を柔軟に変える"カメレオンサッカー"を掲げた昨季から一転、シーズン途中にヘッドコーチとして加入し、今季から指揮を執る田代久美子監督はカップ戦でオーソドックスな[4-4-2]を採用し、メンバーも一定数固定した。その甲斐もあってか、グループステージでは首位の浦和と同成績の3勝2分け。狙いとしていた素早いショートカウンターも成果が出ており、さらなるブラッシュアップが図られれば、上位に食い込む可能性も秘めている。
【注目選手】
●FW瀧澤莉央
昨季チーム得点王・瀧澤千聖(S広島R)の10番を引き継ぎ、ゲームメーカーから新たな点取り屋へと覚醒。カップ戦でも3ゴールを記録し、長野Lの新エースに。
●DF肝付萌
昨季、カップ戦とフル出場が続くダブルボランチ主軸の一角。球際に強くハードワークでき、相方とのバランスを取るのに長けたプレーヤー。
●MF大久保舞[写真]
ピッチでひと際映える銀髪は、スタンドからもTVからでも目を惹く。容姿だけでなく中長距離のキックは力強く見応えがあり、キャプテンとしてもチームを引っ張る。
アルビレックス新潟レディース(新潟L)(8位:4勝7分け9敗)
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なでしこリーグ時代からの古株もプロ1年目は苦しい戦いとなった。受難の中での光明は、道上彩花は確実に点を取れる選手だと証明したことだろう。また、中盤2列目の選手らも着実に力を付け、田中達也氏の娘である田中聖愛もトップチームデビュー。今季のカップ戦でも2種登録の白沢百合恵や長崎咲弥が出場機会を得ており、新潟一筋17シーズン目を迎える上尾野辺めぐみも未だ衰え知らず。[4-4-2]と[3-5-2]を使い分け、上位進出を狙う。
【注目選手】
●FW道上彩花
新潟Lで再花した絶対的なフィニッシャー。コンタクトにも強く、わずかな隙を突いてのフィニッシュから強引な一撃など、FWとして抜け目なさと主張も見せる。
●MF滝川結女
昨季から全試合出場が続く、スピードとテクニックに溢れたサイドアタッカー。カットインからのシュートは自他ともに認める彼女の武器だ。
●MF上尾野辺めぐみ[写真]
なでしこジャパンW杯の優勝メンバーの1人。今季のようなコンパクトな陣形では左足のテクニックが一層光り、アンカー的な立ち回りで攻撃のタクトを振る。セットプレーのキック精度はリーグ屈指。
大宮アルディージャVENTUS(大宮V)(9位:3勝9分け8敗)
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昨季のWEリーグ発足に合わせて昨季立ち上がったばかりの新興チームだが、それゆえに連携面の成熟までには時間を擁し、鮫島彩や有吉佐織ら、代表で結果を残してきた選手たちをもってしても一朝一夕には結果を残せなかった。ただ、6戦ドローを含む7試合負けなしという成績や、浦和駒場でのさいたまダービー勝利などは、徐々に戦術が浸透してきた証と言える。今季の目玉補強の1人、五嶋京香の長期離脱は痛手だが、U-20W杯準優勝組の杉澤海星の台頭など、層自体は決して薄くない。
【注目選手】
●FW井上綾香
髙橋美夕紀との鉄板2トップを組み、スピードを生かした裏抜けからのシュートで昨季は全試合に出場してチーム最多の6得点をマーク。活躍が評価され、なでしこジャパンへの選出も続いた。
●DF鮫島彩[写真]
90分間の上下動をいとわない左サイドバックは、乗松瑠華や有吉とともに不動の最終ラインを形成する。攻撃参加が注目されがちだが、読みを利かせた守備センスも抜群。
●DF杉澤海星
有吉との共存かポジション奪取か。サイドバックが本職ながらも一列前で起用され、仲田歩夢からはスタメンを勝ち取った。U-20W杯のように、無尽蔵のスタミナでスプリントを繰り返す。
ノジマステラ神奈川相模原(N相模原)(10位:2勝7分け11敗)
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ゴール前にバスを置く戦術からハイプレスと、10位に終わった昨季はよく言えば多様な、悪く言えば定まらない戦い方で、開幕前や中断中に複数の長期離脱負傷者を出す不運にも見舞われた。今季は草創期から尽力した菅野将晃監督が復帰し、[4-3-3]を軸にハードワークやリバウンドメンタリティを取り戻す。昨季途中加入ながら主軸となった出耒村亜美と杉田亜未に加え、ケルンからは平野優花、千葉Lから南野亜里沙と当時のN相模原を知る2人も復帰。カップ戦で模索していた大賀理紗子の相方が決まれば、安定度も増しそうだ。
【注目選手】
●MF杉田亜未[写真]
昨冬途中加入ながらチーム最多の3ゴールを挙げ、今年は松原有沙とともにダブルキャプテンの1人に。インサイドハーフでの起用が中心となりそうだが、ゲームメイクだけでなく持ち味である弾丸ミドルも期待されている。
●FW南野亜里沙
2020年のチーム得点王だが、移籍先の千葉Lでは思うような結果を残せず。ポストプレーとシュートセンスでワーストタイに終わったN相模原攻撃陣のカンフル剤となれるか。
●MF藤原加奈
なでしこ2部・静岡SSUボニータの10番が個人で2カテゴリー昇格し、カップ戦で早くも2得点をマーク。中盤でのコンビネーションやミドルレンジのキックも申し分なく、早期フィットで得点力向上に一役買いそうだ。
ちふれASエルフェン埼玉(EL埼玉)(11位:2勝7分け11敗)
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リーグ唯一だった女性指揮官、半田悦子監督のもとでポゼッションサッカーに取り組んだものの、ファイナルサードへの侵入に苦戦し、昨季はわずか2勝の最下位に沈んだ。ただ、マイスタジアムマイホームのコンセプト通り、会場はリーグ屈指のアットホームさを誇る。今季就任した田邊友恵新監督はカップ戦で負傷離脱を含めてこれまで出番の少なかった選手にもチャンスを与え、橋沼真帆や唐橋万結らがアピールの機会を得た。2種登録の16歳・松山沙来もゴールを挙げるなど、育成組織出身選手の活躍も楽しみだ。
【注目選手】
●MF吉田莉胡[写真]
育成組織マリの出身で豊富な運動量と積極的な仕掛けが持ち味のサイドアタッカー。チーム得点王はU-20W杯準優勝メンバーながらも限られた出番しか与えらず、リーグ戦に悔しさをぶつける。昨季初勝利時のフラッシュインタビューでは感極まる場面も。
●MF瀬戸口梢
ボールの中継役として欠かせないボランチで、長短の精確なキックを得意とする。
●MF三浦桃
昨冬に途中加入ながら瞬く間にチームへフィット。前所属・NGUラブリッジ名古屋ではキャプテンも務めたレフティは、攻撃力のあるボランチとして中盤で存在感を放つ。