★また期待外れに終わった…/原ゆみこのマドリッド

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「現地解散って、あんまり印象良くないよね」そんな風に私が首を振っていたのは水曜日、W杯16強対決で敗退が決まったスペイン代表の帰国便に26人の招集選手中、サラビア(PSG)、バルデ、ガビ、ブスケツ、フェラン・トーレス、ペドリ、アンス・ファティ(バルサ)、ラポール(マンチェスター・シティ)、パウ・トーレス、ジェレミー・ピノ(ビジャレアル)、ウナイ・シモン、ニコ・ウィリアムス(アスレティック)、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)、ダビド・ラジャ(ブレントフォード)ら、14人しか、乗っていなかったと知った時のことでした。いえ、アトレティコの例で言えば、先週木曜にベルギーのグループリーグ敗退が決まったカラスコ、ビッツェルがマハダオンダ(マドリッド近郊)のミニプレシーズン練習に顔を出したのはこの水曜になってからのこと。

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「現地解散って、あんまり印象良くないよね」そんな風に私が首を振っていたのは水曜日、W杯16強対決で敗退が決まったスペイン代表の帰国便に26人の招集選手中、サラビア(PSG)、バルデ、ガビ、ブスケツ、フェラン・トーレス、ペドリ、アンス・ファティ(バルサ)、ラポール(マンチェスター・シティ)、パウ・トーレス、ジェレミー・ピノ(ビジャレアル)、ウナイ・シモン、ニコ・ウィリアムス(アスレティック)、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)、ダビド・ラジャ(ブレントフォード)ら、14人しか、乗っていなかったと知った時のことでした。いえ、アトレティコの例で言えば、先週木曜にベルギーのグループリーグ敗退が決まったカラスコ、ビッツェルがマハダオンダ(マドリッド近郊)のミニプレシーズン練習に顔を出したのはこの水曜になってからのこと。

翌木曜には、先週金曜にウルグアイの敗退が決まったヒメネス、そしてフィジカル・コーチのプロフェ・オルテガが合流と、W杯参加選手は母国代表の試合が終わった後、それぞれ5日間のバケーションをもらえることになっているようなんですけどね。となると、8時間かけて真冬のマドリッドに戻ってから、わざわざどこかに移動するより、休暇を最大限に活用。折よく家族も来ていることだし、カタール近辺の常夏のビーチでゆっくり過ごしてやろうとコケやモラタ、そしてマルコス・ジョレンテらが思っても仕方ないところですが、家に帰るまでが遠足という概念はこの代表にはない?

まあ、そんなことはともかく、またしても呆気なく終わってしまったスペインのW杯最後の試合がどうだったか、お話ししていくことにすると。いやあ、月曜には彼らを抑えてグループ1位通過した日本がクロアチアと対戦。1-1のまま、ようやく漕ぎつけたPK戦で、それも勝率が絶対的に高い先攻を取ったにも関わらず、南野(モナコ)、三苫(ブライトン)、吉田(FC東京)の3選手がGKリバコビッチ(ディナモ・ザグレブ)に弾かれ、成功したのは浅野(ボーフム)1人。逆にリバヤ(ハイジュク・スプリト)が外しただけだったクロアチアが、フランスとの決勝まで全て延長戦、うちPK戦2回という前回のW杯からの慣れもあったんでしょうかね。土壇場で底力を見せて、1-3で勝った辺りから、何かの予兆だったのかもしれません。

そう、グループ最終戦で日本に負けたおかげで2位通過となり、優勝候補のブラジルやアルゼンチンと決勝まで当たらないブロックに回れたと、火曜の16強対決モロッコ戦までは自らを慰めていたスペインだったんですけどね。試合前夜にも1時間以上のライブ配信に興じ、「チームは昇り調子」と請け合っていたルイス・エンリケ監督もゲンを担いだか、7-0と大勝した初戦のコスタリカ戦から、右SBをアスピリクエタ(チェルシー)ではなく、今大会初出場となるジョレンテに代えただけのスタメンでキックオフ。それがまさか、日本戦後半から発動したボールを持っているだけ、外縁でパスを回しているだけという悪癖がすでに更生不能な域にまで、チームに浸透していたとは!

おかげで前半はほとんど特記に値するプレーがなく、辛抱強く守っているだけのモロッコもモロッコでしたが、ようやくスペインが枠内シュートを放ったのは後半8分になってのこと。オルモがGKボノ(セビージャ)に弾かれたんですが、このままではマズいかもしれないと、さすがにルイス・エンリケ監督も思ったんでしょう。17分にはアセンシオ(レアル・マドリー)、ガビを下げ、ここまで3試合連続得点していたモラタ、そしてカルロス・ソレル(PSG)を投入したものの、だからといって、スペインのプレーに変化は訪れず。31分にはフェラン・トーレスがニコ・ウィリアムスに代わり、やっと動きが出てきたかと期待したのも空しく、試合は0-0のまま、延長戦に入ることに。

その延長戦前半にはガソリン切れのジョルディ・アルバ(バルサ)、オルモがバルデ、アンス・ファティに代わっているんですが、うーん、ルイス・エンリケ監督は「Lo hemos intentado por tierra, mar y aire.../ロ・エモス・インテンタードー・ポル・ティエラ、マル・イ・アイレ(ウチは地上から海上、空中戦までして試みたんだが…)」と試合後、言っていたんですけどね。傍目には同じ周辺ボール回しサッカーをしているようにしか見えず、ポゼッションが70%以上、パス数が1000回を超えていてもシュートもゴールもないって、撃っても撃っても入らない、絶不調時のアトレティコよりひどくない?

逆に延長前半13分など、モロッコのシェディラ(バリ)に至近距離からシュートされ、GKウナイ・シモンがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いでくれなければ、PK戦にも辿り着けなかったかもしれないんですが、いよいよ後半、残り2分となって、ルイス・エンリケ監督はPKキッカー要員として、ニコ・ウィリアムスに代えて、サラビアを送りこむことに。ロスタイム、その彼がゴール右横から撃ったシュートがポストに嫌われず、入ってくれていたら、あんな悲惨なPK戦を見ずに済んだのにと、今でも残念で仕方ないんですが、結局、両者共、無得点のままで120分間の戦いが終わり…。

いやあ、「Para mí no es una lotería/パラ・ミー・ノー・エス・ウナ・ロテリア(私にとってはくじ引きではない)。選手たちにはPKの宿題を出してあったし、ここでのセッションが終わった後にも皆、練習していた」とルイス・エンリケ監督は言うんですけどね。モロッコの第1キッカー、サビリ(サンプドリア)が成功した後、スペインはサラビアが蹴ったPKが、またしてもポストを直撃。相手は2人目のツィエク(チェルシー)もゴールにすると、いやあ、ソレルもかつてバレンシアにいた頃はマドリー戦でPKハットトリックという偉業も成し遂げているスペシャリスタなんですけどね。その彼がボノに弾かれてしまうんですから、ショックだったの何のって。

モロッコの3人目、ベヌン(アル・アハリ)こそ、ウナイ・シモンが止めてくれたため、僅かに希望が湧いたスペインだったものの、ルイス・エンリケ監督が指名したスペインの3番手、キャプテンのブスケツも易々とボノにキャッチされてしまってはねえ。最後はマドリーのカンテラーノ(RMカスティージャ出身の選手)、今はPSGでエムバペの親友。更にはこんな場面にこそ、いてくれたらと思ってしまうセルヒオ・ラモス(PSG)とも仲良くやっているアクラフが決めて、3-0で負けてしまったとなれば、スペイン人ファンはもう決して、日本代表を格下に見ることはできない?

え、スペインがPK戦で負ける光景は珍しくも何ともないんじゃないかって?そうですね、ロペテギ監督(現ウォルバーハンプトン)が大会開催直前に解任され、当時、サッカー協会のスポーツディレクターを務めていたイエロ代理監督の下で戦った2018年のW杯ロシア大会でも、彼らは16強対決でホスト国とPK戦となり、この時はコケとイアゴ・アスパス(セルタ)が失敗して敗退。昨年開催のユーロ2020でもイタリア戦でオルモとモラタが決められず、決勝を目の前にして涙を飲んでいますし、実際、その前の準々決勝スイス戦では1-3でPK戦を制しているものの、やはりブスケツとロドリが失敗していますからね。となれば、ルイス・エンリケ監督が選手たちにPK練習を課したのも無理はないかと思いますが、本番の緊張感はどうやったって、再現できませんからね。

その辺の事情はPKが決まらず、泣きを見ることが多いシメオネ監督からもよく聞くんですが、試合後、ちょっと気掛かりだったのは、協会との契約がこのW杯で切れるルイス・エンリケ監督が進退を明らかにしなかったことで、しばらく前から、彼はアトレティコの次期監督に就任するんじゃないかとも言われているんですよ。ただ、元来、アトレティコのサッカーはスペイン代表のティキタカ(ショートパスを繋いでいく、メジャータイトル3連覇時代に有名になったスタイル)とはまったくの別系統。

大体がして、あんな悔しい早期敗退をした後でも、「Estoy más que satisfecho con mi equipo, han ejecutado a la perfección mi idea/エストイ・マス・ケ・サティスフェッチョー・コン・ミ・エキポ、アン・エヘクタードー・ア・ラ・ペルフェクシオン・ミ・イデア(チームには満足以上のものを感じている。私のアイデアを完璧に実行してくれた)」(ルイス・エンリケ監督)なんて、ケロリとした顔で言える指揮官では、とてもアトレティコファンの共感は得られないかと。それとも彼が来たら、この1月にも移籍したい意向のジョアン・フェリックスも気を変えてくれるかもしれない?

というのも同じ火曜日、スペインとは真逆でスイスに6-1の大勝。しかもクリスチアーノ・ロナウドを控えにしながら、堂々、準々決勝に進んだポルトガルではジョアンの株がかなり上昇。とうとう、これまでは引き止め一択だったヒル・マリン筆頭株主からも、「シメオネ監督との関係、プレー時間、チームでのモチベーションなどを考えると、移籍のオファーが来れば、検討するのが妥当だろう。Aunque me encantaría que siguiera, esto no es la idea del jugador/アウンケ・メ・エンカンタリア・ケ・シギエラ、エスト・ノー・エス・ラ・イデア・デル・フガドール(私としては残留大歓迎だが、それは選手の考えとは違う)」というコメントが出てきたから。

早くも移籍先候補にはアストン・ビラなどが挙がっていたりもするんですが、ま、以前なら、ジョアンもCLにもELにも出ないチームなんてと、振り向きもしなかったかもしれませんが、今季はアトレティコもヨーロッパからの早期完全敗退で、まったく同じ身分ですからね。この先、どうなるのか、スペインが姿を消し、いよいよ木曜にはルイス・エンリケ監督の契約延長をしないことをサッカー協会が発表。その後、ほとんど間をおかず、2018年からスペインU21代表を率いて、昨年の東京五輪サッカーでは銀メダルをもたらしたデ・ラ・フエンテ監督のA代表昇格が決まったなんてことも。

こうなると12月下旬の公式戦再開まで、あとは私もマドリッドのクラブの選手たちがいる代表を気に掛けるぐらい。ええ、W杯準々決勝、金曜のクロアチア(モドリッチ、ゲルビッチ)vsブラジル(ビニシウス、ロドリゴ、ミリトン)、オランダvsアルゼンチン(デ・パウル、ナウエル・モリーナ、コレア)、土曜のモロッコvsポルトガル、イングランドvsフランス(グリーズマン)戦などを見守っていくばかりなんですけどね。そんな折、久々に木曜にはスタジアム観戦する機会が。ええ、公式戦再開に備えて、もう2週間程、プレシーズン練習をしているヘタフェがコリセウム・アルフォンソ・ペレスで、アトレティコやヘタフェのOBでもあるパウノビッチ監督率いるチバスとの親善試合を行ったんですよ。

生憎なことにキックオフ前から、ドシャ降りの雨に見舞われたこの一戦では、いえ、かなり座席に空きがあったため、クラブが屋根のない席にいたファンに正面スタンドを解放。おかげで助かった人も多かったはずですが、この寒さの中、ズブ濡れになってプレーする選手たちも相当気の毒だったかと。そのせいか、点が入ったのも雨が止んでくれた後半20分のことで、それもチバスのベルトランに先制点を奪われてしまったんですが、やはり先日、最初の親善試合だったバジャドリー戦でケガしたエースのエネス・ウナルが出ていなかったせいでしょうかねえ。

W杯グループリーグ敗退したセルビア勢のマクシモビッチ、ミトロビッチこそ、まだ合流していなかったものの、ほぼチーム全員が揃っていたにも関わらず、ヘタフェはそのまま0-1で連敗となり、親善試合でまで、「Quique vete ya!/キケ・ベテ・ジャー(キケ・サンチェス・フローレス監督、もう出て行け)」のカンティコを聞く破目になろうとは。うーん、今季はほとんどリーガ戦で出番のなかったマタや、歴史的偉業となる初の準々決勝進出を遂げたモロッコに招集してもらえず、悔しい思いをしていたムニルらも頑張っていたんですけどね。

この調子ではリーガ後半戦もヘタフェの課題はゴール不足解消になりそうですが、そうそう、この試合、記者席の前にあるパルコ(貴賓席)では現在、チバスのスポーツディレクターを務める、2018年W杯でスペインの代理監督だったイエロ氏が観戦。直前の監督解任ドタバタ騒ぎがあったチームと、順風満帆にW杯に辿り着いたチームがまったく同じ結果に終わったのにはおそらく、複雑な心境だったと思いますが、スペインは2010年のW杯優勝以来、本大会で3勝しかしていないという体たらく。この低迷状態は果たしてどうしたら、脱出できるんでしょうか。

2022年12月9日(金)20:00

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