★今夏の移籍市場を席巻したサウジアラビアの移籍期間終了、移籍金総額1510億円…その87%は政府が保有する4クラブが投資

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今夏の移籍市場で大暴れをして見せたのはサウジアラビアのクラブたち。豊富な資金力を見せつけ、ヨーロッパから数々の選手を獲得した。

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今夏の移籍市場で大暴れをして見せたのはサウジアラビアのクラブたち。豊富な資金力を見せつけ、ヨーロッパから数々の選手を獲得した。

突如現れた脅威とも言えるサウジアラビア。これまでも数人の選手が移籍していたが、ここまで実績と知名度を誇り、キャリアの最盛期にいる選手が移籍を果たしたのは初めてのことだ。

Jリーグからも名古屋グランパスのFWマテウス・カストロがアル・タアーウンへと移籍。横浜F・マリノスのFWアンデルソン・ロペスも狙われていると報道があったほど。そのターゲットは世界各国に向いている。

そんなサウジアラビアの移籍市場も7日をもって終了。ヨーロッパのクラブ、特にプレミアリーグのクラブにとっては脅威であった市場が閉じた中、話題をさらった移籍市場の動きをまとめてみた。

◆移籍金の総額は約1510億8000万円

衝撃的な移籍を繰り返していたサウジ・プロ・リーグのクラブたち。『Transfermarkt』のデータによれば、今夏の移籍市場で費やした移籍金の総額は、9億5438万ユーロ(約1510億8000万円)にものぼるという。

2カ月ちょっとの移籍期間でこれほどまでの投資ができる資金力は、世界のどの国を見ても考えられないこと。一時期話題になっていたカタールも、ここまで投資できず、一昔前に“爆買い”が話題になった中国スーパーリーグでも、この規模は不可能だった。

衝撃の投資額だが、その87%はある4クラブが占めているという。それは、アル・ヒラル、アル・ナスル、アル・アハリ、アル・イテハド。サウジアラビアの政府系ファンド「PIF」の傘下に入った4クラブであり、プレミアリーグのニューカッスルも傘下に入っている。

国家を挙げての強化体制を敷き、基本的なビッグネームの移籍はこの4クラブが中心。一部アル・イテファク、アル・シャバブといったクラブも選手を獲得したが、目立っているのは4クラブということだ。

今夏の移籍市場が開く前に行われた4クラブのグループ化は、世界のサッカーに大きな影響を与えることに。中でも、アル・ヒラルが群を抜いて投資しており、投資額は3億5310万ユーロ(約558億6000万円)となっている。当然のことだが、この金額は世界中のどのクラブよりも多い事になる。

ちなみに、2位はアル・アハリで1億9750万ユーロ(約312億1000万円)、3位はアル・ナスルで1億6510万ユーロ(約261億円)、4位はアル・イテハドで1億1939万ユーロ(約188億8000万円)となっている。

◆欧州から大量の戦力が流出

移籍金を最も投じたアル・ヒラルが獲得した選手は、FWネイマール(パリ・サンジェルマン)、FWマウコム(ゼニト)、MFルベン・ネヴェス(ウォルバーハンプトン)、FWアレクサンダル・ミトロビッチ(フルアム)、MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチ(ラツィオ)、DFカリドゥ・クリバリ(チェルシー)、GKボノ(セビージャ)となっている。どの選手も代表チームでプレーしており、ヨーロッパでも実績のある選手だ。

ちなみに、2位のアル・アハリはスペインの新星とも言われたMFガブリ・ベイガ(セルタ)を獲得し驚かせた他、MFリヤド・マフレズ(マンチェスター・シティ)、DFロジェール・イバニェス(ローマ)、FWアラン・サン=マクシマン(ニューカッスル)、DFめリフ・デミラル(アタランタ)、GKエドゥアール・メンディ(チェルシー)、MFフランク・ケシエ(バルセロナ)を獲得した。なお移籍金はかかっていないが、FWロベルト・フィルミノもリバプールから獲得している。

その他にも、FWカリム・ベンゼマ(レアル・マドリー→アル・イテハド)、FW左ディオ・マネ(バイエルン→アル・ナスル)、MFジョーダン・ヘンダーソン(リバプール→アル・イテファク)、MFファビーニョ(リバプール→アル・イテハド)、DFアイメリク・ラポルテ(マンチェスター・シティ→アル・ナスル)など挙げればキリがない。

欧州のビッグクラブから30歳前後の選手が大量に流出した今夏の移籍市場。各クラブも資金力では対抗できず、非常に苦しい夏を過ごすこととなった。

◆移籍期間の差が大きな懸念点にも

選手たちを引き抜かれるクラブたちだが、その分高額な移籍金を手にすることができるため、戦力ダウンというだけではないのも事実。余剰戦力や、世代交代での選手の入れ替え、選手獲得のための資金調達など、様々な思惑も影響した結果、大量の移籍が実現したとも言える。

例えば、ネイマールはパリ・サンジェルマン(PSG)にとっては完全な不良債権となってしまっていた。ファンからも退団を求められ、ピッチ上のパフォーマンス以外には大きな不満を持たれていた中、売りに出せる状況であれば手放したいと考えたのがPSG。その結果、9000万ユーロ(約142億2000万円)という大金と引き換えに移籍することとなった。

思惑が一致するという点では一定の成果があるが、問題は移籍期間の差。ヨーロッパの主要リーグは9月1日で市場が閉まったが、サウジアラビアは7日まで開いていた。この1週間にわたる差が、大きな悩みとなる。

ヨーロッパの主要リーグのクラブとすれば、補強ができなくなったタイミングで主力選手が退団する可能性があるということ。実際には、リバプールがエースであるエジプト代表FWモハメド・サラーを狙われ、総額2億ポンド(約368億5000万円)もの金額を提示されたが拒否した。このタイミングで抜かれては、チームは冬まで補強ができないため、大きな痛手となってしまう。

一方で、移籍市場が閉鎖した後に余剰戦力を売却できるというメリットも少なからずある。チームとして現金化したい選手を手放すためにはうってつけ。他のリーグよりも高額な移籍金を手にするチャンスがあるということだ。メリットもデメリットもあるが、今後はこの期間の差も大きな争点となる可能性がある。

◆冬の移籍市場はどうなる?

ひとまず、突如発生した夏の脅威は去ることとなった。ただ、4カ月後にはまた同じ状況が来ないとは言い切れない。特に2024年夏に契約が切れる選手に関しては、1月になれば自由に交渉が可能。夏にフリーで手放す可能性が発生し、高額な報酬でオファーを受ければ、太刀打ちできない可能性が高い。

クラブとしては1月までにチームに留めたい選手との契約延長に動く必要があり、その動きはこれから活発になる可能性がある。セルティックの日本代表MF旗手怜央もターゲットに上がっていただけに、ヨーロッパで活躍すれば日本人もターゲットになり得るということだ。

選手側も今夏の移籍には懐疑的であったとしても、この半年の様子を窺って考えを変える可能性が出ないとは言い切れない。よく知る選手からの勧誘があれば、移籍を希望する可能性もある。多くのクラブは、再び警戒心を高めていく必要がありそうだ。

そしてこれはJリーグにとっても関係ない話ではない。マテウスが移籍したように、市場としてJリーグも見られているということ。助っ人が引き抜かれる可能性は十二分にある。サラリーで対抗しようと思っても、まずそこで立ち向かえるクラブは存在しないはずだ。

加えて、サウジ・プロ・リーグのクラブはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場する。今シーズンはアル・フェイハ、アル・イテハド、アル・ヒラル、アル・ナスルが出場するが、超大型補強をしたクラブのうち3チームが出場しており、今後はより多くの選手が来る可能性も。外国人枠の撤廃など、ACLのレギュレーションも変化するだけに、ヨーロッパのスター選手とアジアの舞台で対戦する可能性も高まりそうだ。

《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

【移籍選手リスト】サウジ・プロ・リーグに移籍した選手リスト(一部抜粋)

※チームは移籍金支払額が多い順

■アル・ヒラル:3億5310万ユーロ(約558億6000万円)
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FWネイマール(パリ・サンジェルマン)
FWマウコム(ゼニト)
MFルベン・ネヴェス(ウォルバーハンプトン)
FWアレクサンダル・ミトロビッチ(フルアム)
MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチ(ラツィオ)
DFカリドゥ・クリバリ(チェルシー)
GKボノ(セビージャ)

■アル・アハリ:1億9750万ユーロ(約312億1000万円)
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MFガブリ・ベイガ(セルタ)
MFリヤド・マフレズ(マンチェスター・シティ)
DFロジェール・イバニェス(ローマ)
FWアラン・サン=マクシマン(ニューカッスル)
DFメリフ・デミラル(アタランタ)
GKエドゥアール・メンディ(チェルシー)
MFフランク・ケシエ(バルセロナ)
FWロベルト・フィルミノ(リバプール)★フリー

■アル・ナスル:1億6510万ユーロ(約261億円)
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FWオタビオ(ポルト)
FWサディオ・マネ(バイエルン)
DFアイメリク・ラポルテ(マンチェスター・シティ)
MFセコ・フォファナ(RCランス)
MFマルセロ・ブロゾビッチ(インテル)
DFアレックス・テレス(マンチェスター・ユナイテッド)

■アル・イテハド:1億1939万ユーロ(約188億8000万円)
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MFファビーニョ(リバプール)
FWジョタ(セルティック)
DFルイス・フェリペ(レアル・ベティス)
MFエンゴロ・カンテ(チェルシー)★フリー
FWカリム・ベンゼマ(レアル・マドリー)★フリー

■アル・イテファク:3630万ユーロ(約57億5000万円)
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MFジョーダン・ヘンダーソン(リバプール)
FWデマライ・グレイ(エバートン)
MFジョルジニオ・ワイナルドゥム(パリ・サンジェルマン)
DFジャック・ヘンドリー(クラブ・ブルージュ)
FWムサ・デンベレ(リヨン)★フリー

■アル・シャバブ:3438万ユーロ(約54億4000万円)
FWハビブ・ディアロ(ストラスブール)
MFヤニク・カラスコ(アトレティコ・マドリー)

■アル・タアーウン:1498万ユーロ(約23億7000万円)
FWムサ・バロウ(ボローニャ)
DFアンドレイ・ジロット(ナント)
FWマテウス(名古屋グランパス)
MFフラビオ(トラブゾンスポル)※レンタル

■アル・フェイハ:815万ユーロ(約12億9000万円)
FWファショーン・サカラ(レンジャーズ)
FWヘンリー・オニェクル(アダナ・デミルスポル)
MFアブデルハミド・サビリ(フィオレンティーナ)※レンタル
MFゴイコ・チミロット(スタンダール・リエージュ)★フリー

■アル・ファトフ:575万ユーロ(約9億1000万円)
MFルーカス・セララジャン(コロンバス・クルー)
FWジャニニー(トラブゾンスポル)

■ダマク:530万ユーロ(約8億4000万円)
FWアサン・セーサイ(レッチェ)
MFニコラス・スタンチュ(武漢三鎮)
FWジョルジュ=ケヴィン・エンクドゥ(ベシクタシュ)★フリー

■アル・ハリージュ:407万ユーロ(約6億4000万円)
FWハリド・ナライ(PAOKテッサロニキ)
GKイブラヒム・シェヒッチ(コンヤスポル)
FWイボ・ロドリゲス(ファマリカン)★フリー
DFペドロ・レボチョ(レフ・ポズナン)★フリー

■アル・タイ:332万ユーロ(約5億3000万円)
FWマルコ・ドゥガンジッチ(FCラピド)
FWアンドレイ・コルデア(FCSB)
DFロベルト・バウアー(シント=トロイデン)★フリー
MFベルナルド・メンサー(カイセリスポル)★フリー
DFエンソ・ロッコ(エルチェ)★フリー
FWヴァージル・ミシジャン(トゥベンテ)★フリー
FWアブドゥルファッターハ・アシリ(マリエハムン)

■アブハ・クラブ:200万ユーロ(約3億2000万円)
FWカール・トコ・エカンビ(リヨン)
GKチプリアン・タタルサヌ(ミラン)★フリー
MFグジェゴシュ・クリホヴィアク(クラスノダール)★フリー
FWフランソワ・カマノ(ロコモティフ・モスクワ)★フリー

■アル・ハジム:175万ユーロ(約2億8000万円)
FWファイズ・セレマニ(コルトレイク)

■アル・ワフダ:120万ユーロ(約1億9000万円)
DFジャワド・エル・ヤミーク(レアル・バジャドリー)
FWビト・ファン・クローイ(スパルタ・ロッテルダム)

■アル・オクドゥード:109万ユーロ(約1億7000万円)
DFアンドレイ・ブルカ(クルージュ)
GKパウロ・ビトール(チャベス)
FWセイヴィア・ゴッドウィン(カーザ・ピア)
FWアレックス・コジャード(レアル・ベティス)※レンタル

■アル・リヤド:100万ユーロ(約1億6000万円)
FWフアンミ(レアル・ベティス)※レンタル
MFディディエ・エンドング(ディジョン)★フリー
MFビラマ・トゥーレ(オセール)★フリー
DFアリン・トシュカ(ベネヴェント)※レンタル

■アル・ラーイド:0ユーロ
MFマティアス・ノルマン(FCロストフ)★フリー
GKアンドレ・モレイラ(グラスホッパー)★フリー
DFウマール・ゴンサレス(アジャクシオ)
MFママドゥ・ルム(ポルト)※レンタル

2023年9月8日(金)23:35

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