★連勝街道が止まらない…/原ゆみこのマドリッド

「トポチョ、トポチョって何だろう」そんな風に私が頭を捻りまくっていたのは水曜の夜、メトロポリターノのミックスゾーンでヒメネスのインタビューを聞いていた時のことでした。いやあ、予想通り、CLリーグフェーズ最弱チームの1つ、スロバン・ブラスチラバに快勝したアトレティコだったんですが、決勝トーナメント16強直接進出の8位以上まではまだ勝ち点1が足りず。

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「トポチョ、トポチョって何だろう」そんな風に私が頭を捻りまくっていたのは水曜の夜、メトロポリターノのミックスゾーンでヒメネスのインタビューを聞いていた時のことでした。いやあ、予想通り、CLリーグフェーズ最弱チームの1つ、スロバン・ブラスチラバに快勝したアトレティコだったんですが、決勝トーナメント16強直接進出の8位以上まではまだ勝ち点1が足りず。と、ここまで考えて気がついたのは、記者たちが口にしていたのはまさにそのことで、「top 8(トップ・エイト)」をスペイン語混ぜで、「トップ・オチョ」と言っていたんですが、いや実に紛らわしい。

まあ確かに「los 8 primeros/ロス・オチョ・プリメロース(上位8チーム)」というよりは早いですが、そんな話題が出てくるのも、アトレティコはその日の勝利でとうとう破竹の公式戦10連勝に。CLも残り2試合がホームでのレバークーゼン戦、アウェイでのザルツブルク戦と決して勝てない相手ではないことから、顔馴染みのTVE(スペイン国営放送)アトレティコ番女性レポーターなど、16強直接進出どころではなく、「今季はCL優勝よ」と息巻いていたんですが、いやいや。

この6節はお隣さんもプレーオフ出場圏24位から20位へと持ち直したことですし、2014年、2016年決勝のトラウマもあって、とてもレアル・マドリーにCLで勝てる気はしませんからね。可能性があるとすれば、向こうが準決勝までにどこかのチームに負けてくれた場合でしょうが、何にしたって、今から夢を見るのはあまりに気が早すぎるかと。

え、それで実際、マドリッド勢2チームのCLマッチはどうだったのかって?そうですね、まず火曜にプレーしたのがマドリーで、ベルガモでアタランタと対戦となったんですが、開始10分にはブライムのパスから、エムバペが先制ゴールを決める最高の滑り出しに。ただ、この日も彼は他2本の枠内シュートをGKカルネロッキに弾かれてしまい、同様に相手の最大兵器、ルックマンもGKクルトワを破れなかったため、拮抗した戦いが続いていたんですが、まさか35分、エムバペが左太ももをケガする災難に見舞われるとは!

急遽、ピッチにはロドリゴが入ったんですが、先発したビニシウス共々、こちらも負傷から復帰したばかりでしたからね。ガスペリーニ監督のチームはセリエA首位と好調だっただけに心配していたところ、それこそ不運は不運を呼ぶ?というのも前半ロスタイムにはこの日、カンテラーノ(RMカスティージャの選手)のアセンシオに代わり、CBとして出場したチュアメニがエリア内でコラシナツを倒してPKを献上。デ・ケテラエルに同点ゴールを決められてしまったから。

1-1でハーフタイムに入ったため、その時は近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)で観戦するマドリーファンたちもソワソワしていたんですが、大丈夫。後半11分、それまで敵選手に対峙することをほとんどせず、まだコンディションが100%でない感ありありだったビニシウスが千載一隅のチャンスをものにしてくれたんです。そう、自陣エリア内からジムスティがクリアしたボールがデ・ルーンに当たり、自分のところに来たのを抜け目なくシュートして、2点目を挙げてくれるんですから、有難いじゃないですか。

それどころか、いやあ、試合のこの部分はマドリーのラッキータイムだったんでしょうかね。14分には何と、ビニシウスが自陣からロングパスを放ち、それを追ったベリンガムがデ・ルーンをかわしてシュート。あっという間に2点差にしてくれたとなれば、もうこっちのもんですって。いえまあ、敵もさるもので、20分にはずっとルックマンを抑えるのに苦労していたルーカス・バスケスが出し抜かれ、エリア内左からクルトワのニアサイド、ゴール左隅の狭い隙間に撃ち込まれて、1点差に追い上げられてしまったなんてこともあったんですけどね。

幸い後半ロスタイム最後、ルックマンが入れたクロスをレテギがゴール前で撃ち上げてしまうというツキもあって、何とか2-3で逃げ切りに成功。8月のUEFAスーパーカップに続いて、アタランタを破ったマドリーだったんですが、いや、それにしても毎試合、誰かがケガする彼らの負傷禍は異常では?ええ、先週末リーガのジローナ戦でも、ベリンガムこそ、用心して交代したため、アタランタ戦に出られたんですが、メンディの方は年内復帰できませんからね。

この日もアンチェロッティ監督は、「Es una sobrecarga, una molestia en el isquio/エウ・ウナ・モレスティア・エン・エル・イスキオ(筋肉痛でハストリングが痛かった)。深刻なケガには見えないが、ダッシュするのに支障があったから、代えることにした」とエムバペの状態を説明していましたが、これが木曜には楽観的すぎる見立てだったことが判明。とういのも肉離れではないものの、全治10日間という診断が下りてしまったからで、ええ、他のリーガのチームは年内、あと2試合しかないのと違い、マドリーには来週水曜にインターコンチネンタルカップ(昨季までのクラブW杯)決勝が控えていますからね。

それが実はまた、今季は訳のわかない方式になっていて、この水曜にリベルタドーレス王者のボタファゴ(ブラジル)を0-3で破ったパチューカ(メキシコ)が土曜にアル・アハリ(エジプト)と準決勝を戦い、その勝者とマドリーはカタールで決勝1試合のみをプレー。まさにタイトル獲得直結の大会ですが、よりによって、せっかく今季初めてBMV(ベリンガム、エムバペ、ビニシウスの頭文字をとって、マルカなどがそう呼んでいる)がゴール揃い踏みしたというのに、その1人が早くも欠けるかもしれないとは如何に。

いえ、10月にも同じ部位を故障した彼は全治2週間だか、3週間だかと言われ、その時期に重なったフランス代表の招集を免除されながら、たった1週間で回復。paron(パロン/リーガの停止期間)直前の試合にはもう、出ていましたからね。折しもその時、ミニバケーションで出かけたストックホルムで持ち上がった強姦容疑はこの度、証拠不十分で捜査がお蔵入りになったというのはともかく、もしや今回も超スピード回復はありうる?

どちらにしろ、やはりCLリバプール戦で負傷して、インターコンチネンタルカップ決勝での復帰を目指しているカマビンガと共に、エムバペがこの土曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのラージョとの兄弟分ダービーに出場することは考えられないんですが、うーん、マドリーはリーガも首位と勝ち点2差と今や完全に逆転モードに入っていますからね。アンチェロッティ監督も「Hay que aguantar ese tramo. Ojalá que en enero podamos tener otra cara/アイ・ケ・アグアンタール・エセ・トラモ。オハラ・ケ・エン・エネロ・ポダモス・テネール・オトラ・カラ(この時期を耐えないといけない。1月には別の顔を見せられるといいんだが)」と言っていた通り、決して疎かにはできないんですが、とにかくない袖は振れませんからね。

むしろ、前節バレンシアに勝って、降格圏と勝ち点6離れたイニゴ・ペレス監督のチームがやはり、同じ来週水曜に開催される、バレンシア洪水災害で延期されていたビジャレアル戦の方に力を入れてくれることを期待するばかりですが、すでにエスタディオ・バジェカスは水曜からマドリー戦のチケットを求めるファンで長蛇の列。価格は75~130ユーロ(約1万2000~2万1000円)と決してお安くはないんですが、それだけファンに期待されれば、きっとラージョの選手たちも簡単には勝ち点3を渡さないんじゃないでしょうか。

そして水曜にはアトレティコがメトロポリターノにここまで勝ち点0、負けると敗退が確定するスロバン・ブラスチラバを迎えたんですが、昨今は私も暖房付き、更に今季は準完全密封になったサンティアゴ・ベルナベウに甘やかされているせいか、午後6時45分の早い時間帯でも無茶苦茶寒くてねえ。早くも極暖ヒートテック大活躍なんですが、何よりなのは最近は彼らの試合内容がお寒くないこと。そう、圧巻のremontada(レモンターダ/逆転劇)を見せたセビージャ戦から中2日、ギャラガーをサムエル・リノに代えただけの同じスタメンでキックオフしたシメオネ監督のチームは、早くも前半16分に先手を取ります。

リノが送ったラストパスをフリアン・アルバレスが見事、ファーサイドのゴール上部に決めてくれたんですが、いえ、序盤から相手との実力差が火を見るよりも明らかだったため、途中、ちょっと油断して、カウンターからバルセギアンにシュートをゴールバーに当てられるなんて、ドッキリもなくはなかったんですけどね。そのスロバン、唯一頼りのFWが35分にケガして早期交代すると、42分にはバリオスのクロスをジョレンテがエリア内右奥からゴール前に上げ、それをグリーズマンがヘッドで2点目にしてくれたとなれば、勝負はもうついた?

いえまあ、こちらもお隣さんをなぞるように、後半4分にはレングレがストレレツをエリア内で倒して、PKを献上してしまったんですけどね。おかげで同選手に1点を返されたものの、問題ありません。何故なら、12分には、後半頭からバリオスに代わって入ったコケが撃ったシュートをグリーズマンがゴール前で撃ち直し、敵GKの脇を抜いて3点目を挙げてくれたから。ただねえ、このCLリーグフェーズの新たなマスト、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)の課題は、うーん、確かに彼らはここ6日間で3試合とハードスケジュール気味なんですけどね。

シメオネ監督も「Al final nos quedamos sin esa frescura que con un poco más de descanso hubiésemos tenido/アル・フィナル・ノス・ケダモス・シン・エサ・フレスクーラ・ケ・コン・ウン・ポコ・マス・デ・デスカンソ・ウビエセモス・テニードー(もう少し休めていたら、あったであろうフレッシュさが最後は残っていなかった)」と言っていたように、3-1で打ち止めになってしまったのはちょっと残念だったかと。ちなみにこの盆と正月が同時にやって来たような最近の好調ぶりに、CLやリーガ優勝といった大きな目標を立てるのかと試合後会見で訊かれた指揮官の答えは、「Soñar a lo grande significa soñar en el partido que viene, en el partido a Partido/ソニャール・ア・ロ・グランデ・シグニフィカ・ソニャール・エン・エル・パルティードー・ケ・ビエネ、エン・エル・パルティードー・ア・パルティードー(大きなことを夢見るというのは、次の試合を夢見ること。1試合1試合だ)」というもの。

要は消化試合数が1つ多い首位バルサとの勝ち点差3を詰めるためにも、日曜午後2時(日本時間午後10時)からの兄弟分ダービーが次のターゲットになるってことですが、これはまた、ヘタフェも悪い時期に当たっちゃいましたかね。いえ、一応、ボルダラス監督のチームも前節は残留争いの直接ライバル、エスパニョールに1-0で勝利。降格圏と勝ち点3差の15位に浮上して、兄貴分に負けてもダメージを最小限にする準備はちゃんとできているんですけどね。今季まだアウェイで1勝もしていない上、相変わらず、ゴール/FW欠乏症が続いているため、イケイケの兄貴分から勝ち点をもぎ取るのは難しいかと思いますが…マドリーと違って、現在負傷者ゼロというのもアトレティコはツイていますよね。

そしてリーガ17節は兄弟分ダービー枠から外れて、第3の弟分レガネスだけがマドリッド外のチームと対戦するんですが、彼らは日曜午後9時からモンジュイックでバルサと対戦という試練に立ち向かうことに。うーん、ボルハ・ヒメネス監督のチームは先週末もレアル・ソシエダに0-3と完敗して、いよいよ降格圏と勝ち点2差の17位になってしまいましたからね。まさに今季最初の1部生き残りを懸けた重要な一戦と言っていいんですが、相手は水曜のドルトムント戦でも2-3と勝って、早くもリーグフェーズ首位のリバプールと共にCL決勝16強対決プレーオフ圏入り確定と勢いに乗っているのが怖いところ。

といってもリーガでは先日、ホームでラス・パルマスに負けたり、直近のベティス戦でも2-2と引分けるなど、以前と比べると、弱みがない訳ではありませんからね。たとえ、重いゴール日照りを患っているレガネスとはいえ、根性見せて、スコアレスドローでも勝ち獲れば、マドリッドの兄貴分たちから大感謝されるのは間違いない?実際、ここで恩を売っておけば、冬の移籍市場で優秀なカンテラーノをレンタルしてもらえるかもしれませんし、ちょっと頑張ってみる価値は十分あるんじゃないでしょうか。

2024年12月13日(金)20:00

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