★ACLでも日本勢が躍進/六川亨の日本サッカー見聞録

26年北中米W杯のアジア最終予選グループCで圧倒的な強さを見せている日本代表。それは近年、若手選手の海外流出でレベルダウンが指摘されるJクラブでも、アジアでの強さは図抜けているようだ。

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26年北中米W杯のアジア最終予選グループCで圧倒的な強さを見せている日本代表。それは近年、若手選手の海外流出でレベルダウンが指摘されるJクラブでも、アジアでの強さは図抜けているようだ。

11日と12日に開催されたACLEでは、神戸が上海海港に、川崎Fが浦項にそれぞれ4-0と快勝。この結果、神戸と川崎だけでなく、12日の上海申花戦を待たずに横浜FMもラウンド16進出を決めた。横浜FMは、上海申花戦は相手の粘りに苦戦したものの1-0の勝利を収めて勝点3を獲得。この結果、勝点16の横浜FMが首位、同じく勝点16ながら得失点差で神戸が2位、そして勝点15の川崎Fが3位とJクラブ勢が上位3強を占めた。

さらに12日のACL2ラウンド16の第1戦では、敵地に乗り込んだ広島が前半こそノーゴールだったものの、後半は3連続得点で突き放してベスト8進出に大きく近づいた。

18日のFUJIFILM Super Cupではスタメンを大幅に入れ替えて広島に0-2と完敗した神戸だったが、上海海港戦ではGK前川黛也、CBマテウス・トゥーレル、右SB酒井高徳、ボランチ扇原貴宏、FW武藤嘉紀、大迫勇也らレギュラー陣がスタメンに復帰。9位とグループリーグ突破のボーダーライン(8位までがラウンド16進出)にいる上海海港を寄せ付けず、前半11分の武藤の先制点を皮切りに後半は3連続ゴールで突き放した。

前半は苦戦を強いられたのがアウェーの試合に臨んだ川崎Fと広島だった。5位の浦項はホームでJクラブ勢に無敗を誇っていた。さらに当時の気温は公式記録では6度だが、この時期の韓国のピッチは土が凍っていることも多い。実際、山田新が浦項CBと競った際、バウンドしたボールが大きく跳ねて2人の頭上を越えるシーンもあった。

強風にさらされれば体感温度はマイナスになることも珍しくはない。このため両チームの選手もバランスを崩さないよう慎重にプレーしていたように見えたし、ケガを恐れてか、スライディングタックルもいつもの試合に比べて少ないように感じた。

それでも前半38分に新加入の伊藤達哉の右クロスから山田がヘッドで先制点を決めると、後半終盤は怒濤の3連続ゴールで浦項を突き放した。

長谷部茂利新監督の初陣とあって、チーム作りにも注目したが、早くも“長谷部カラー”が出ていたように感じられた。前線の山田とマルシーニョがプレスに行ってパスコースを限定すると、2列目の選手がその動きに呼応し、パスの受け手であるサイドの選手に素早く寄せて自由にプレーさせなかった。「守備でも常に先手を取る」というメッセージを感じさせるプレッシングだった。

攻撃に目を転じても、鬼木達監督時代に比べてシンプルにゴールに迫るパスに加え、ロングパスも増えた印象を受けた。黄金時代の川崎Fは、無駄に思えるようなパスでもそれが相手DF陣を崩す布石になっていた。しかし多くの選手が海外移籍したことで、ともすれば“パス回し”が手段ではなく目的になっていた感は否めない気がした。

しかし長谷部監督はシンプルに原点に戻り、パスワークの美しさよりもゴールという結果を追求している。これは東京Vの城福浩監督や町田の黒田剛監督に通じる哲学だろう。共通しているのは攻守にハードワークを求めること。神戸も同じスタイルでリーグ連覇と昨シーズンは2冠に輝いたので、当然の結果かもしれない。

その一方で、広島はパスワークの美しさも追求している。ナムディン戦の前半は相手の抵抗もあり互角の展開となったが、川崎Fと同様というか、こちらはベトナムの暑さに慣れるまで時間がかかったかもしれない。10度前後の気温の日本から、20度という暑さと65パーセントの湿気は体力をセーブしなければならなかっただろう。

それでも後半は20分に右FKから佐々木翔が決定的なヘディングシュートを放つと、その後は徐々に攻勢に出て、ルーキー中村草太のプロ初ゴールや田中聡、越道草太ら若手選手の活躍でナムディンを突き放した。磐田から加入したジャーメイン良はFUJIFILM Super Cupに続いてノーゴールだったものの、しっかり2得点に絡んで存在感を発揮した。

FUJIFILM Super Cup戦と同様、ベストメンバーで臨んで狙い通りの結果を手にしたミヒャエル・スキッベ監督。中3日で16日にはJ開幕戦の町田戦、さらに中2日で19日にホームのナムディン戦、23日と26日には横浜FM戦と清水戦が控えている。この4連戦をどう乗り切るのか、指揮官の采配にも注目したい。

2025年2月14日(金)17:00

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