★【原ゆみこのマドリッド】動き出すチームが増えてきた…

▽「出るだけじゃダメなのよ」そんな風に私が首を振っていたのは月曜日。アトレティコの新戦力、ブルサリコの入団会見のインタビューを読んでいた時のことでした。

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▽「出るだけじゃダメなのよ」そんな風に私が首を振っていたのは月曜日。アトレティコの新戦力、ブルサリコの入団会見のインタビューを読んでいた時のことでした。彼はここ3年の間にジェノア、サッスオーロでプレーしていて、セリエAとはいえタイトルを争うといった次元には無縁。プロとしてのキャリアを始めたディナモ・ザグレブはクロアチアリーグの常勝チームとはいうものの、CLの世界ではグループリーグに出るだけで大成功というレベルのクラブでしたからね。そこからすれば、この3年間で2度もCL決勝に進出したアトレティコは超のつく強豪に見えるのでしょうけど、移籍して一番の夢が「またチャンピオンズのファイナルまで行くこと」って、これに納得するアトレティコファンはあまりいないのでは?

▽もちろん、この日曜日の夕方にマドリッドに到着したばかり。アトレティコについては、ユーロのクロアチア代表で一緒だったマンジュキッチ(ユベントス)に「クラブについてポジティブなことの全て」しか聞いていない、24歳のブルサリコですからまだわからないのは当然ですけどね。会見後は早速、ロス・アンヘレス・デ・サン・ラファエル(マドリッドから1時間の高原リゾート)のキャンプ地に移動。言葉の通じるスロベニア人のオブラク、モンテネグロ人のサビッチと話をしていましたっけ。水曜日には右SBのポジションを争うことになるフアンフアン、そして8月に戻って来るグリーズマンらと知り合えば、決勝に出ることだけではなく、勝つことがどんなに大事なのかと少しは想像できるのではないでしょうか。

▽まあそんなことはともかく、実を言うと、アトレティコの新戦力プレゼンは先週から始まっていて、木曜日にはサントス・ボレとディオゴ・ジョタが先陣を切って、ビセンテ・カルデロンのVIP用ホールでお披露目されることに。いえ、前者は昨年の夏、加入が決まった後、そのままコロンビアのデポルティボ・カリにレンタルされていた20歳のFW。19歳の後者も昨季はポルトガルのパソス・デ・フェレイラでプレーしていた攻撃的MFということで、ほとんど知名度はありません。すぐさま即戦力として、今季のチームで働けるかどうかもまだ不明ですからね。おまけに先週末、リーベル・プレートから来たシアッパカッセに至っては、まだFIFAの許可が取れていないため、選手登録もできない17歳のFWとあって、皆、将来を見据えての補強のようですが、その中で別格なのはアルゼンチン人ウィンガーのガイタンかと。

▽ええ、こちらはお隣、ポルトガルの強豪ベンフィカで6年も揉まれた28歳で、この夏のコパ・アメリカではメッシが負傷で出られない間、その代役を務めた程の実力者ですからね。水曜日に代表チームメートのアウグストと一緒にプレシーズンキャンプに参加する予定ですが、その彼のプレゼンでは、先行3人の時には200人弱ぐらいしか、スタンドに見学に来なかったアトレティコファンも少しは増えるかも。いえ、もちろんクライマックスはジエゴ・コスタ(チェルシー)なり、ケビン・ガメイロ(セビージャ)なり、イグアイン(ナポリ)なり、大物CFが来た時ですけどね。それにはまだしばらく時間がかかりそうなので、とりあえずはチーム力を高めてくれそうな選手を歓迎しておかないと。

▽そうそう、最初のボレとジョタのプレゼンは今季の新ユニフォーム発表も兼ねていて、その日からスタジアムのオフィシャルショップでもクラブのオンラインショップでも、ネームなし85ユーロ(約1万円)で販売が始まっています。第1ユニは背中にもストライプが戻ったぐらいで、第2ユニはとにかく真っ黒、ポイントは何故か、黄色いクラブのエンブレムと、あまり変わった趣向はなし。となると、付加価値を与えるためにもやっぱり、ビッグタイトル獲得をするしかないと思ってしまったりもするんですが…。

▽え、それでロス・アンヘレスでの地獄のキャンプの方はどうなっているんだって? 一応、日曜日には最初の休養日を迎え、順調にワンクールを終わったんですが、あまりにフィジカルトレーニングに熱を入れたため、先週木曜日にはボルハ・バストンが手首を骨折するなんて事故も起こることに。いえ、シメオネ監督が先頭に立って、起伏のあるゴルフ場を50分間ランニングなんてことは別にいいんですけどね。選手たちを退屈させないためか、小道具を取り入れることが好きなアトレティコの練習ではゴム製のクッションを置いて、その上でボールを蹴ったりしているのを見る度、自分なら、すぐ引っくり返って捻挫だろうと懸念していたり…。するとまさか、瞬発力を鍛えるため腰に巻いてダッシュするバネのハーネスを地面に固定していた杭が抜け、選手に直撃するなんてことあっていい?

▽いやあ、昨季はレンタルで乾貴士選手のいるエイバルでプレー、18得点を挙げたのもの、アトレティコ定着の決め手にはならなかったボルハ・バストンですが、手でも骨折となると、シーズン開幕に間に合わないかもしれませんしね…。プレミアリーグからいいオファーも来ているというのに、気の毒なことになりましたが、その他の負傷者はヒザを痛めたGKモジャぐらい。放出選手については、今のところ、キャンプ参加メンバーからは出ていないんですが、ビエットなどは土曜日に他の選手とバスでマドリッドに戻らず。そのせいで、いよいよバルサ移籍が決定かと言われていましたが、結局、月曜日には普通に練習していましたしね。

▽まだこの先、どう転ぶかわかりませんが、金曜日までロス・アンヘレスでセッションを行った後、チームはヌマシア(2部)との親善試合をして、その後はオースオラリアへ。ただ、TV中継が予定されているのが29日のトッテナムとの試合だけなので、午後のセッションだけとはいえ、ボールを使った練習もしている彼らの実際の仕上がりぶりをファンが目にできる機会は、かなり待たないと巡って来ないというのは、ちょっと残念ですね。

▽そしてその間、お隣さんはどうしていたかというと。いえ、ユーロでポルトガルのキャプテンとしてトロフィーを掲げた後、イビサ島で家族や友人とバケーションを楽しんでいるクリスチアーノ・ロナウドの海パン姿は毎日のように私もTVや写真でお目にかかっていたんですけどね…。偶然にも、やはり島の同じ地区で休暇をとっていたメッシのヨットと彼のヨットが同じハーバーで、中3つを隔てて係留されていたり、モラタやセルヒオ・ラオス、それにアトレティコのコケも先週はイビサにいたと聞いた日には、自分も行ってみれば、誰かに道でバッタリ遭ったりするんじゃないかと思ったなんて話はさておいて…。夏の国際大会不参加組のレアル・マドリーの選手たちは土曜日にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場に集合。

▽もちろん各国代表でも活躍するメンバーの多いチームですから、初日は14人と少なかったんですが、中には数日前から施設に通ってトレーニングを始めていたマルセロやカルバハルといった、勤勉な選手たちも。ただ彼らの場合は暑いマドリッドでグラウンド練習を行うことはせず、恒例のメディカルチェックを行った後、早速、翌日曜日にはジダン監督の2人の息子さん、RMカスティージャ所属の21歳のエンツォとフベニル所属のGK、18歳のルカを含めた11人のカンテラーノ(下部組織の選手)も連れて、カナダのモントリオールに向けて出発することに。

▽現地ではリッツ・カールトンに宿泊し、MLSのモントリオール・インパクトの練習場でプレシーズンのトレーニングをする彼らですが、驚きの早期合流となったのはコバチッチで、予定なら、ユーロのクロアチア代表でバスト16まで進んでいたため、先輩のモドリッチ共々、25日戻ってくれば良かったんですけどね。アトレティコのフィリペ・ルイスの例もありますし、時には休暇を短縮してもチームメートに遅れを取りたくないと思う選手はどのチームにもいるよう。一方、スペイン代表で同じベスト16敗退組だったモラタの合流はこの水曜日になりますが、やはり先週、発売となった新ユニフォームでは背番号21をもらっているものの、このままマドリーでプレーするかはまだ、様子見の状態だとか。

▽クラブは、売却はないと言っていますし、ユベントスに移籍する前に買い戻しとなった場合、450万ユーロ(約5億3000万円)だった年棒も600万ユーロ(約7億円)にアップしてもらっているとはいえ、チームでのBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)優位は今季も変わりませんからね。8月9日のUEFAスーパーカップこそ、ユーロ決勝でヒザの靭帯を痛めたロナウドはイビサ島のクリニックに通い、高気圧酸素療法を受けて回復を急いでいても間に合わず。土曜日に27歳のバースデーを迎え、2女をもうけた彼女のエマ・ライ・ジョーンズさんにプロポーズを承諾してもらったことをツィッターで報告していたベイルも合流が今月末となるため、活躍の場はあるとしても、その後はベンチ要員になるかもしれないのでは、チェルシーのコンテ新監督から熱烈オファーを受けているという当人が用心深くなるのも当然だった?

▽一方、カナダ・キャンプに参加しながら、ネーム入り新ユニフォームがオフィシャルショップに置いておらず、背番号もまだ割り当てられていないのはナチョとヘセで、どうやら前者はローマへの移籍話が着々と進んでいるよう。後者は先週、レゲトン歌手としてデビューして、『Yo sabia/ジョ・サビア(自分は知っていた)』というタイトルのビデオクリップを公開したばかりですし、クラブのネームバリューが売り上げに与える影響を考えても、移籍はせずに来年の契約満了を待つのが得といったところかと。ちなみに27日にラモスやルーカス・バスケスらと一緒にチームに合流するハメス・ロドリゲスは、フロントは新しいギャラクティコ獲得に備え、売却したい意向であるものの、ジダン監督から待ったがかかっているようです。

▽そんなマドリーは26日までモントリオールに滞在した後、翌日に初のプレシーズンマッチを行います。セビージャから転職しUEFAスーパーカップの相手はせずに済むことになったエメリ監督率いるPSGとオハイオで対戦です。続いて30日にはミシガンでチェルシーと顔を合わせ、8月3日にニュージャージーで1年前にマドリーを離れたアンチェロッテ監督率いるバイエルンと戦って、スペイン帰国の途につきます。それ以外の親善試合は16日にサンティアゴ・ベルナベウ杯でスタッド・ランスを迎えることが決まっていますが、いやあ、金曜日にはもうリーガの年間スケジュールも出ましたしね。

▽それによると、今季のスタートは8月19日からの週末で、マドリーの初戦は21日の日曜日にアウェイのレアル・ソシエダ戦。アトレティコも同日、こちらはホームスタジアムとして最後のシーズンを迎えるビセンテ・カルデロンで昇格組のアラベスが相手となりましたが、まさかクラブ史初のリーガ1部開幕戦に降格したマドリッドの弟分、ヘタフェとラージョの悲哀を今季期待の新弟分、レガネスが味わうとは。というのもアウェイながら、セルタとの1節を月曜日に回されてしまったからですが、ホームスタジアムのブタルケでは観客席を1万1000人まで増やす計画が進行中。とはいえ、平日試合が増えたら、今は昇格に夢見心地になっているサポーターたちも足を向けにくくなるかも。まあ、その辺はまだ始まってみないとわかりませんが、ユーロのせいもあって、どうにも今年はオフシーズンが異様に短い気がするのは私だけでしょうか。
【マドリッド通信員】
原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2016年7月19日(火)12:30

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