★まだ突破できるかはわからない…/原ゆみこのマドリッド

©Atlético de Madrid
「長い1週間になりそうね」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、CL準々決勝1stレグ4試合の結果が入った決勝までのトーナメント表を眺めていた時のことでした。いやあ、火曜にプレーしたレアル・マドリーvsマンチェスター・シティ、アーセナルvsバイエルンがどちらも引分けに終わった時はまだ、今はもうアウェイゴールルールもないため、2ndレグの一発勝負になったなぐらいの気分だったんですけどね。

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「長い1週間になりそうね」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、CL準々決勝1stレグ4試合の結果が入った決勝までのトーナメント表を眺めていた時のことでした。いやあ、火曜にプレーしたレアル・マドリーvsマンチェスター・シティ、アーセナルvsバイエルンがどちらも引分けに終わった時はまだ、今はもうアウェイゴールルールもないため、2ndレグの一発勝負になったなぐらいの気分だったんですけどね。水曜のアトレティコvsドルトムント、PSGvsバルサの方はどちらもスペイン勢が1点差で勝利という微妙なもので、それでもチャビ監督のチームは2ndレグを今季はカンプ・ノウ建て替えで、仮宿のモンジュイックとはいえ、ホームで戦えるんですよお。

翻って、アトレティコはかの「Gelbe Wand(黄色い壁)」が立ちはだかるジグナル・イドゥナ・パルクに乗り込まないといけず、ええ、今季の彼らのアウェイ弱者ぶりはつとに有名で、更に苦手の黄色ユニのチーム相手となると、いえ、先日、全身黄色でプレーして、とうとう1年以上続いたメトロポリターノのリーガ不敗神話を終わらせたバルサに倣ったんでしょうか。黒のアウェイユニでなく、一番黄色味が強いカップ戦用ユニで挑んだドルトムントとの1stレグではかろうじて、勝つことはできたんですけどね。一応、リーガ前節のビジャレアル戦でもアウェイ&黄色ユニというダブルジンクスを破っているとはいえ、1点なんて、何の弾みで引っくり返されるかわからないじゃないですか。

うーん、それでもシメオネ監督は「CL準々決勝の4試合を見れば、estamos contentos, es muy difícil ganar/エスタモス・コンテントス、エス・ムイ・デフィシル・ガナール(勝つのはとても難しいから、満足している)」と言っていたんですけどね。すでにビジター用チケット4000枚は完売。決して安くはない飛行機代を払って、現地まで2ndレグの応援に行くアトレティコファンの勇気にはただただ、敬服するしかないかと。

まあ、そんなことはともかく、まずは火曜のビッグマッチ、3500人のイギリス人ファンがサンティアゴ・ベルナベウに駆けつけたマンチェスター・シティ戦1stレグから、どんなだったか、お伝えしていくことにすると。さすがにこの高みまで来ると、勝負は2ndレグまでつかなくても、いても立ってもいられなくなるのか、スタジアム周辺は午後7時頃から、チームバスのお出迎えをする何千人もののファンで凄いことに。でもねえ、せっかくメトロポリターノでのドルトムントの記者会見と練習見学から直行し、チームの到着時間前に現地にいた私だったものの、バスが入って来るゲートに通じるパドレ・ダミアン通りが封鎖されていることを知らなかったのが致命的でした。

結局、レアル・マドリーTVの中継を見てお茶を濁すしかなかったんですが、まあ、激混みの中、bengala(ベンガラ/発煙筒)などの火も見えましたしね。煙いのと怖いのを我慢するよりは良かったかと。その頃にはすでに発表されていたマドリーのスタメンには意外性がなく、驚かされたのはスタジアムに入ってから知ったシティの方で、ええ、デ・ブルイネが先発じゃなかったんですよ。後でグァルディオラ監督は「ホテルでのミーティングではスタメンだったが、ロッカールームに着いたら、プレーできないと言ってきた。Tenía vómitos y se ha encontrado muy mal/テニア・ボミトス・イ・セ・ア・エンコントラードー・ムイ・マル(嘔吐して、とても気分が悪いようだった)」と説明していたんですが、もしや、その代理として出場したコバチッチは古巣のピッチが踏めて嬉しかった?

それにしたって、CL用の大幕とスタンド全面モザイク、更に屋根を閉じているせいで一層、ファンの歌声やpito(ピト/ブーイング)の音響効果が高まった新装ベルナベウの雰囲気に酔っていたのが、ホームチームの方だったとは。そう、開始45秒にシティのカウンターに泡を喰らい、その日、CBに抜擢されたチュアメニが駆け上がるグリーリッシュにタックル。早々にイエローカードをもらい、しかも累積警告で2ndレグに出られなくなってしまったのは、後でアンチェロッティ監督が悩めばいいことですが、まさか、ベルナルド・シウバの蹴ったFKをGKルーニンが逃し、2分には先制点を取られてしまうとは一体、どういうこと?

でも大丈夫。マドリー相手にリードするには時間の工夫が必要っていうのはとりわけ、お隣さんなどはよく知っているんですが、そう、彼らのDNAに刷り込まれたremontada(レモンターダ/逆転劇)根性が発動してしまいますからね。案の定、12分には長いポゼッションの後、カルバハルからパスを受けたカマビンガがエリア外からシュート。これがルーベン・ルイスに当たってオウンゴールとなり、あっという間に同点に。更にその2分後にはビニシウスが自陣から放ったロングボールをロドリゴが受け、エリア内から撃ったところ、アカンジに当たったせいでトロトロになりながら、ゴールに入ったから、ビックリしたの何のって。

いやあ、これには直近のアスレティック戦でビニシウスが出場停止となり、代理で左サイドを務めたロドリゴが2ゴールと活躍したため、逆にビニシウスの方をセンター寄りに、ロドリゴを左サイドに置いたアンチェロッティ監督の作戦のおかげもあるんですけどね。一応、この速攻逆転でマドリーも落ち着いたか、前半は2-1のままで終わったんですが、そこは相手も昨季のCL王者。後半が始まって、ボールポゼッションが増えてきたシティは21分、マドリーが「Nos descansamos un poco, dejamos de presionar por cansancio/ノス・デスカンサモス・ウン・ポコ、デハモス・デ・プレシオナル・ポル・カンサンシオ(ウチはちょっと休んじゃって、疲れから、プレスをかけるのを止めた)」(バルベルデ)ところを狙い、フォーデンがエリア前から、golazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて、2-2にしたんですよ。

その5分後にも今度はグバルディオルがやはり、エリア前からのシュートを決めて、2-3の逆転返しをされてしまったとなれば、アンチェロッティ監督が慌てて、モドリッチとブライムを投入したのも当然だったかと。実際、その交代は的を得ていて、ええ、34分にはモドリッチのパスから、ビニシウスがクロスを挙げ、バルベルデのvolea(ボレア/ボレーシュート)で3-3に追いつくことができましたからね。これがもし、2ndレグで準決勝進出が決まるのであれば、絶対、マドリーはあと1点取っていたはずと私は確信しているんですが、生憎、この日は1stレグ。

どちらにしろ、来週水曜にはエティハド・スタジアムで再戦となるため、マドリーもレモンターダ根性を振り絞らず、最後は3-3で分けたんですが、え?「El empate parece como el del año pasado, como si fuera una derrota/エル・エンパテ・パレセ・コモ・エル・デル・アーニョ・パサードー、コモ・シ・フエラ・ウナ・デロータ(去年みたいな引分けだから、負けたようなもんだ)」とバルベルデは嘆いていなかったかって?まあ、確かに昨季は準決勝1stレグをベルナベウで1-1、2ndレグではシティに4-0の大敗を喰らって敗退した記憶はまだ新しいですからね。ただ、アンチェロッティ監督は試合前、「Jugamos sin coraje y sin personalidad/フガモス・シン・コラヘ・イ・シン・ペルソナリダッド(勇気もパーソナリティも持たずにプレーした)」とその敗因を解明していたため、同じ轍を踏むことはないのでは?

ええ、この日も昨季のベルナベウでの対戦同様、ハーランドに1本しかシュートを撃たせなかったリュディガーを2ndレグで控えにするなんて、もう絶対にやらないでしょうしね。ただ、不気味なのは試合後、ベルナベウのピッチの芝の状態が絨毯のようではなかったという、今季はまだ誰からも言われていない文句を言って、注目を浴びていたグァルディオラ監督が交代枠をまったく使わず、90分を終わらせそうだったこと。いえ、最後はフォーデンがふくらはぎにこむら返しを起こし、フリアン・アルバレスを入れる破目になったんですけどね。これって、もしや2ndレグに備えて、手を隠していたのかも。

何にせよ、エティハドではデ・ブルイネも出て来るでしょうし、また競ったいい勝負が見られるんじゃないかと思いますが、その前にマドリーは土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からマジョルカ戦に挑むことに。まあ現在、2位のバルサと勝ち点8差がある彼らですから、シティ戦2ndレグの後にはクラシコ(伝統の一戦)が来るとはいえ、ローテーションする可能性もありますけどね。どうやら体力も超一流のここの選手たちは逆に中3日ぐらいの方が調子を維持できるよう。コパ・デル・レイ決勝でアスレティックに負け、落ち込んでいたアギーレ監督のチームもあれから1週間経つだけに完全に切り替えて、リーガの1部残留達成一本に絞っているため、この狭間試合はちょっと苦労するかもしれませんね。

そして翌水曜、お隣さんに負けじと、メトロポリターノに繋がる沿道をぎっしり埋めたファンのお出迎えを受け、赤白青のモザイクでスタンドが彩られた中、アトレティコもドルトムント戦をスタートさせたんですが、助かりました。何せ、メトロポリターノは密閉仕様じゃありませんからね。あそこまでヒートアップしたファンの歌声をドーム型スタジアムで聞かされた日には、耳の鼓膜が持ちませんって。3、4000人と言われたドルトムントファンもかなり応援の声量が高く、しかもそれが前半早々、4分にはGKコベルからボールを受けたマートセンが大ポカ。横に出したボールをデ・パウルに奪われ、そのシュートで先制されながらもちっとも衰えないって、やっぱりジグナル・イドゥナ・パルクは地獄になる?

といってもメトロポリターノでは絶対的にアトレティコファンの方が多かったため、ドルトムントの選手たちもプレッシャーを感じていたんでしょう。さすがに中8日あっただけあって、この日は積極的にプレスをかけていったシメオネ監督のチームは32分にも敵のミスを利用。ええ、モリーナのスローインをDFが中途半端に弾き、それを拾ったモラタがグリーズマンへ。そのアシストでサムエル・リノが2点目を決めてくれたとなれば、当人もその5分前にイエローカードをもらい、2ndレグが出場停止になった懺悔は済ませたと思った?

でも2-0で始まった後半、アトレティコはモラタ、グリーズマン、モリーナもシュートを決められず、追加点が取れなくてねえ。ハーフタイムにテジッチ監督が「メンタル的に落ち着くように」と選手たちにアドバイスしたドルトムントはエンメチャがブラントに代わったのも良かったようで、だんだんボールを持つようになったんですが、ホント、後悔先に立たずの典型だったのは30分。グリーズマンの蹴ったFKをゴール前からシュートしたリノがGKコベルに弾かれていなければ、3点差となり、2ndレグで逆転される悪夢から、かなり遠ざかれたはずだったんですが…。

それどころか、「Mantener el nivel de lo que se hizo 70 minutos es muy difícil/マンテネール・エル・ニベル・デ・ロ・ケ・セ・イソ・セテンタ・ミヌートス・エス・ムイ・デフィシル(70分間やってきたこことのレベルをずっと維持するのはとても難しい)」とシメオネ監督も言っていたように、アトレティコがガス切れしていた36分、とうとうブラントが入れたパスから、フルクルクから代わっていたFWアラーに1点を返されてしまったから、さあ大変!実際、その後もバイノー=ギデンスやブラントのシュートがゴールバーに当たり、かろうじて同点を免れるというシーンもありましたからね。試合は2-1で終わり、もちろん、「Hemos ganado, que es lo importante/エモス・ガナードー、ケ・エス・ロ・インポルタンテ(ボクらは勝った。それが大事なこと)」(グリーズマン)というのは正論ですが、こんな僅差では…。

何せ、珍しく長い間、元気だったメンフィス・デパイが先週土曜の練習でまた筋肉を痛め、全治3、4週間となってしまったため、今のアトレティコにはCFがこのところ、ゴール乾季に入ったモラタしかいませんからね。うっかりドルトムントに追いつかれ、点を取らないといけなくなった時、誰を頼りにしていいのかもわからない有り様なんですが、それは土曜午後2時(日本時間午後9時)のジローナ戦も同じこと。ただ、勝ち点2差の5位アスレティックは先週末からずっと、コパ優勝祝い漬けで、木曜にガバラ(ビルバオの運河を航行する運搬船)で水上パレード、その後もパスで市内パレードと延々と続いていたのはともかく、その前日にも街中に選手たちが現れて、ファンとゲリラ祝勝イベントまでしていましたからね。

おそらく日曜のビジャレアル戦では勝てないんじゃないかと思いますが、アトレティコも相手が勝ち点差が7差ある3位と手ごわいため、負傷から復帰したばかりのヒメネスや試合後、また足首に氷を巻いていたグリーズマンらに休養を与える訳にいかないのが辛いところ。合法的に休めるのは出場停止となるバリオスだけですが、結局、中8日あっても選手たちのスタミナが持続するのは70分までとわかってしまった今、あとはシメオネ監督が途中交代などでコマメに調整するしかないかと。

そしてヨーロッパの大会もなく、コパ決勝のせいで2週間試合がなかったヘタフェとラージョは土曜にエスタディオ・バジェカスで弟分ダービーとなるんですが、すでに残留確定見込みラインまであと勝ち点2で、当面の目標がなかったボルダラス監督のチームには朗報が。というのもコパでEL出場圏にいるアスレティックが優勝したため、コンフェレンスリーグ出場権がリーガ7位に与えられることになったからで、現在、バレンシアが占めるそこまでなら、勝ち点6差。まあ、11位のヘタフェが到達するには4チームも抜かさないといけないので、難行ではありますが、高みを目指すにこしたことはありませんからね。16位のラージョの方はあと2、3勝しないと、残留確定とならないんですが、今は降格圏と勝ち点差5あるため、イニゴ・ペレス監督もこのparon(パロン/リーガの停止期間)は落ち着いて練習できたんじゃないでしょうか。



【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2024年4月12日(金)20:30

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