★この決勝は他人事だったけど…/原ゆみこのマドリッド

©︎RFEF
「これは教訓になるわね」そんな風に私が気を引き締めていたのは日曜日、コパ・デル・レイ決勝が午前1時近くにようやく終わった時のことでした。いやあ、アトレティコが準決勝2ndレグでボコボコにやられ、決勝がアスレティックvsマジョルカというカードになったため、わざわざセビージャのカルトゥーハまで見に行く理由もなし。

記事全文

「これは教訓になるわね」そんな風に私が気を引き締めていたのは日曜日、コパ・デル・レイ決勝が午前1時近くにようやく終わった時のことでした。いやあ、アトレティコが準決勝2ndレグでボコボコにやられ、決勝がアスレティックvsマジョルカというカードになったため、わざわざセビージャのカルトゥーハまで見に行く理由もなし。おまけにTVE(スペイン国営放送)の中継があり、自宅でTV観戦できたため、別に決着がつくのが翌日にもつれ込んだことはそれ程、気にならなかったんですけどね。

午後10時に始まった試合が何故にそんなに長引いたかと言えば、もちろん、マジョルカが2匹目のドジョウを狙い、ひたすらPK戦突入を目指して、延長戦を戦っていたからなんですが、残念ながら、準決勝レアル・ソシエダ戦と同じ結末にはならず。そう、レアル・アレナでの2ndレグのPK戦同様、第1キッカーにムリキ、それからモルラン、マスカレルはベンチ待機だったため、ラドンジッチの順番を繰り上げたところ、コソボ人エースこそ、この日もしっかりPKを成功させたものの、モルランがGKアギレサバラに止められてしまったのが誤算でしたかねえ。

それで動揺したか、ラドンジッチも大きく撃ち上げてしまっては。ソシエダ戦で相手の第1キッカーだったオジャルサバルを弾き、試合中にもブライス・メンデスのPKを防いでいたため、一躍、parapenarti(パラペナルティ/PK止め屋)として脚光を浴びていた、マジョルカのGKグレイフがアスレティックのキッカーには歯が立たなかったのも災難で、ええ、ラウール・ガルシア、ムニアイン、ベスガ、ベレンゲルと全て、ゴールになってしまいましたしね。おかげで4人目のアントニオ・サンチェスは決めたものの、結局、アギーレ監督のチームは4-2で負けてしまったんですが、これを我が身としてほしいのはアトレティコ。

というのも今週はまだ1stレグですが、2ndレグとの間が1週間しかないCL準々決勝ドルトムント戦が来るからで、ええ、16強対決のインテル戦2ndレグにPK戦で勝ったせいで、過信されても困りますからね。あの時だって、メンフィス・デパイ、リケルメ、コレアは成功したものの、2番目に蹴ったサウールはGKゾマーに止められてしまい、GKオブラクがアレクシス・サンチェスとクラーセンを連続セーブという奇跡があってこその勝利だったとなれば、準々決勝2ndの後の週末にはリーガもありますし、余分な延長戦で体力を消耗することなく、いい結果を出してもらいたいものですが…。

まあ、そんなことはともかく、ようやく各国代表戦週間が明けたリーガを再びparon(パロン/停止期間)に追いやって、大々的に開催されたコパ決勝がどんな試合だったか、一応、お話ししておくと。いやもう、これがアスレティックとマジョルカのファンが大盛り上がりで、うーん、カルトゥーハには5万人ぐらいしか、入らないんですけどね。それがチケットを買えなかったファンまでが大移動して、試合当日にはセビージャに10万人のアスレティック勢、地中海を渡らないと来られないマジョルカ勢も2万5000人程、集結していたんですが、更にはサン・マメスでのパブリックビューイングも5万人の満員御礼だったなんてと聞くと、彼らのコパへの思い入れがわかるってもの?

試合の方はクラブが警告を出したのが功を奏して、ええ、これまでバスク地方に本拠を置くアスレティックがファイナリストになる度、場内がスペイン国歌へのpito(ピト/ブーイング)の嵐になり、パルコ(貴賓席)に主賓として座るスペイン国王フェリペ6世に決まりの悪い思いをさせていたんですけどね。ようやくそれがなくなったのは良かったんですが、開始24秒でニコ・ウィリアムスが撃ったシュートが外れながら、何と先手を取ったのはマジョルカだったから、ビックリしたの何のって。

それは前半21分、CKからの攻撃でサム・コスタが頭で流したボールはゴール前左から、ジオ・ゴンサレスのシュートはプラドスに当たり、コペテの撃ち直しもアギレサバラに弾かれてしまったんですけどね。こぼれ球をキャプテンのライージョがダニ・ロドリゲスに繋いだところ、3度目の正直で入るとはまさに執念の賜物。いやあ、アスレティックも38分にはジュリとの連携でニコがゴールを決めたんですけどね。こちらはオフサイドだったため、試合は0-1で折り返すことに。

バルベルデ監督がプラドスをベルガに代えた後半は、逆に19秒にラリンが撃って、アギレサバラがparadon(パラドン/スーパーセーブ)という形で始まったんですが、コパ優勝最多31回のバルサに続く、24回で2位につけながら、ここ40年間、上積みできず。そのアスレティックが悔しさをバネにして、同点に追いついたのはすぐのことでした。5分には、リーガ前節のレアル・マドリー戦を筋肉痛でお休みしていたニコがダニ・ロドリゲスからボールを奪い、サンセットにラストパスを送ると、そのシュートでゴールが入ったんですが、何せ、その先はまったくスコアが動かなくってねえ。

アギーレ監督もアスレティックの攻撃陣を抑える方を優先したか、16分にはもうラリンを引っ込め、中盤を増やしたのはいいんですが、延長戦に入っても今季のコパで最多6得点を挙げているアブドン・プラッツを入れなかったのは何故?同様に延長戦から、イニャキ・ウィリアムス、サンセット、グルセタを引っ込め、ラウール・ガルシア、ムニアインらベテランとベレンゲルを入れたアスレティックも最後まで、やはり6得点しているビジャリブレを入れなかったとはいえ、これはやっぱり、PK戦の成功体験がマジョルカは忘れられなかった?

実際、ぶっつけ本番だったソシエダ戦と違い、「Esta vez incluso habíamos ensayado los penaltis/エスタ・ベス・インクルソ・アビアモス・エンサジャードー・ロス・ペナルティス(今回はPK戦の練習までした)」(アギーレ監督)そうですしね。結果はバルベルデ監督も「Llevábamos tiempo preparándolo y sobre todo he elegido a los que han entrado de refresco/ジェバモス・ティエンポー・プレパランドロ・イ・ソブレ・トードー・エ・エレヒードー・ア・ロス・ケ・アン・エントラードー・デ・レフレスコ(ウチはしばらくの間、準備していて、とにかくPKキッカーにはリフレッシュで入った選手を選んだ)」と言っていたように、アトレティコとの準決勝1stレグでもメトロポリターノから、希少な白星を持ち帰るPKを決めたベレンゲルが4人目として、アスレティック優勝の殊勲者に。

それでもビジャリブレはピッチでのお祝いで、2021年のスペイン・スーパーカップ優勝時にも披露した、趣味のトランペットでカンティコを演奏するという晴れ舞台があったんですけどね。アブドン・プラッツなど、マルカ(スポーツ紙)の決勝前インタビュー企画に乗せられて、趣味の陶芸でコパトロフィーを作り、今でもマジョルカの教室で焼かれるのを待っているというのに、こうなるとあの作品、一体、どうしたらいいんでしょう。

え、これまで4度もコパ決勝をプレーしながら、1度も勝てなかったムニアインがとうとう、31才で悲願のトロフィーを掲げた後、カルトゥーハで遅い時間まで祝っていたアスレティックはその夜、セビージャに宿泊。翌日、ビルバオに戻って早速、伝説のガバラ(市内の運河を航行する木材運搬船)で水上パレードしたのかって?いやあ、それがコパでは控えGKだったウナイ・シモンも「Ha costado 40 años. Existe. La Gabarra existe. A ver si ahora flota/ア・コスタードー・クアレンタ・アーニョス。エクシステ。ラ・ガバラ・エクシクテ。ア・ベル・シー・アホラ・フロタ(40年かかった。あるよ、ガバラはある。今も浮かぶかどうか見てみよう)」と言っていたんですけどね。

やはりオープンデッキバスでの普通の市内パレードとは違い、運河は交通規制が複雑らしくて、ガバラはすでに大金を投じて整備され、乾ドックで待機しているものの、木曜まで出航できないのだとか。まあ、その際には街を挙げてのお祭りになるはずですが、ガバラと並走するボートや小型船に乗るにはかなりの値段がつけられているため、ファンの大半は河岸から、見学することになるよう。ただこの遅いお祝いはアトレティコにとっては渡りに船で、ええ、リーガ前節で4位をアスレティックから奪還したとはいえ、勝ち点差はたったの2ですからね。

その2日後にビジャレアルを迎えるサン・マメスでの一戦もお祭り気分が覚めていないはずなので、土曜のメトロポリターノでのジローナ戦で一気に5差にして、そのままシーズン最後までCL出場圏を守ってもらいたいものですが、まあそれは先の話。試合のなかった先週、彼らは水曜と日曜を練習休みにして、木曜夕方にはゲリラ的にシメオネ監督時代前期の大功労者、ゴディンを称えるペーニャ(ファンクラブ)主催のイベントをスタジアムの講堂で当人、現役選手やスタッフも大勢参加で開催していたりしたんですが、とにかく今のアトレティコはCLドルトムント戦に全集中なんですよ。

ええ、直近のビジャレアル戦ではようやく苦手のアウェイで勝利、おまけに天敵の黄色いユニのチームを破ったにも関わらず、本格的に練習を再開した木曜には、シメオネ監督がマハダオンダ(マドリッド近郊)グラウンドでセッションを一時停止して、選手たちにとうとう、「サッカーは歩いてないで、走らないといけない」という訓示をしたらしいですしね。その通り、ラ・セラミカでのようにたらたらプレーしていたら、ブンデスリーガの上位チームには絶対、敵わないことを彼らに自覚してもらいたいのはファン共通の願いかと。

おかげでクラブのメディアへのインタビューでは、グリーズマンなども「Ellos están muy bien, vienen de ganar al Bayern y hay que estar atentos a cualquier detalle/エジョス・エスタン・ムイ・ビエン、ビエネン・デ・ガナール・アル・バイエルン・イ・アイ・ケ・エスタル・アテントス・ア・クアルキエル・デタジェ(彼らはとてもいい状態で、バイエルンに勝ったばかり。だから、どんなディテールにも注意しないと)」と慎重になっていたんですが、大丈夫。バイエルンに0-2で勝った後、折しも土曜のシュツットガルト戦でドルトムントは0-1と負け、CL出場権争いをしているライプツィヒを抜くことができませんでしたしね。インテル戦の前も悲観視されながら、何とか勝ち抜けたアトレティコだけに可能性は決してゼロではありませんが、何にしても水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からの1stレグでよっぽどの大勝をしない限り、私が安心できることはないような気がします。

そしてアトレティコ同様、中8日で火曜午後9時にマンチェスター・シティをサンティアゴ・ベルナベウに迎えるマドリーも休養日を交えながら、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でずっと準備をしていたんですが、こちらはもっと日程的に有利なんですよ。というのもシティはミッドウィークにアストン・ビラ戦をこなした後、土曜にもクリスタル・パレス戦と、ずっとハードスケジュールが続いているからですが、それが2試合共、4得点勝利しているとなれば、決して侮れませんって。

実際、昨季のCL準決勝でも1stレグがホーム開催となったマドリーはベルナベウで1-1と引分けた後、エティハド・スタジアムでの2ndレグで4-0と大敗。よって、こちらもアトレティコ同様、初戦で余裕の勝利を挙げておかないと、いくら根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)がお家芸の彼らとはいえ、アウェイでは辛いものがありますからね。ただ去年、シティにやられまくってしまったのには事情もあって、マドリーは2ndレグの直前、コパ決勝のオサスナ戦で優勝したものの、中日が少なかったのが致命的だったよう。

それだけに今回、グァルディオラ監督に文句を言われる筋合いはないんですけどね。この準々決勝には休養十分で挑める上、前節のアスレティック戦では昨夏にヒザの靭帯断裂をしたミリトンも復帰して、現在、負傷欠場者はクルトワとアラバだけ。となると、逆にアンチェロッティ監督も起用したい選手が多すぎて、スタメン選びに困っているんじゃないかと思いますが…何はともあれ、マドリッドで2日連続CLの試合が見られるのは嬉しいですよね。

そしてこの2週間、丸々空いてしまったヘタフェとラージョがエスタディオ・バジェカスで弟分ダービーに挑むのは週末土曜とまだかなり先なんですが、直近のセビージャ戦でコリセウムのファンの差別的野次を告発されたヘタフェには競技委員会から、厳しい処分が。ええ、アルゼンチン人のアクーニャが「mono(モノ/サ猿)」と侮辱された件で2万7000ユーロ(約450万円)の罰金と、そのファンがいた区画を3試合に渡って閉鎖しないといけなくなったんですが、すでに犯人は発見済み。クラブは元凶のアボナードー(年間チケット所有者)を追放処分にするようですが、実際、その罰金を当人に付け替えることができれば、一番お灸をすえられるんじゃないでしょうか。



【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2024年4月8日(月)22:40

mixiチェック
LINEで送る
【関連ニュース】
兄貴分チームはまだ頑張らないといけない…/原ゆみこのマドリッド
朗報の方が多い週末だったけど…/原ゆみこのマドリッド
CL全滅は免れたけど…/原ゆみこのマドリッド
もっとCLが続いてほしい…/原ゆみこのマドリッド
まだ突破できるかはわからない…/原ゆみこのマドリッド
戻る
(C) SEESAW GAME, Inc.