★【原ゆみこのマドリッド】大事なのは勝ち点だから…

▽「記者会見はないんだ」そんな風に私が残念がっていたのは金曜日、アトレティコのカラスコが2022年までの契約を結んだというニュースを聞いた時のことでした。いやぁ、このところは契約延長流行りのようで、同日にはバルサのネイマールもリオ五輪中に話がまとまった2021年までの契約にサインしたと聞いたんですけどね。

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▽「記者会見はないんだ」そんな風に私が残念がっていたのは金曜日、アトレティコのカラスコが2022年までの契約を結んだというニュースを聞いた時のことでした。いやぁ、このところは契約延長流行りのようで、同日にはバルサのネイマールもリオ五輪中に話がまとまった2021年までの契約にサインしたと聞いたんですけどね。あちらは土曜にアウェイでのバレンシア戦が組まれていますから、会見を開く時間の余裕もなく、クラブのメディアのインタビューで済ませたのかもしれませんが、折しも今週はレアル・マドリーのモドリッチがやはり2022年まで契約を延長。その会見が水曜にあったため、私もサンティアゴ・ベルナベウに2日連続して通うことに。

▽それは先週のクロースの時も一緒で、プレス・コンファレンスルームに現れたマドリー3年目の彼はドイツ語で喋っていましたが、5年目となるモドリッチの方は奥さんと2人の子供が見守る中、たまにつっかえながらも最初から最後までスペイン語で応対。何度もファンを賛嘆させた、エリア外から美しいシュートを決める技について、「Me sale natural. Eso se tiene o no se tiene. Nunca he practicado ese golpeo/メ・サレ・ナトゥラル。エソ・セ・ティエネ・オ・ノー・セ・ティエネ。ヌンカ・エ・プラクティカードー・エセ・ゴルペオ(自然に出てくるんだ。そういう資質を持っているか、いないかさ。あの蹴り方を練習したことはないよ)」と語っているのを聞いて、なる程、才能ある選手というのはこういうものかと、私も納得したんですが、そんな話なら、グラナダ戦ではハットトリックも挙げたカラスコからも直に聞いてみたかったかも。

▽というのもまあ、今週開催のCL3節ではまたしても彼が活躍、グループが違うため、あまり比較の意味はないものの、アトレティコがお隣さんの上を行く結果を残すのに大貢献してくれたからなんですが、いえ、もちろんマドリーも火曜のレギア・ワルシャワ戦で不覚など取っていませんよ。しかも先週末のベティス戦同様、goleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を披露して、4000人のビジターファンのうち、400人程混じっていると言われたウルトラグループ、テディ・ボーイズを見張るため、2000人を動員して厳戒態勢が敷かれた中、怯むことなくスタジアムに駆けつけたマドリーファンを喜ばせてくれています。

▽ただ実際、キックオフ前には周辺の通りでウルトラと警官隊の乱闘が発生、逮捕者12人が出たとのことで、私も現場に出くわさなくて助かったと思ったものですが、念入りなボディチェックが功を奏したか、試合中、ポーランド人で埋め尽くされたfondo norte(フォンド・ノルテ/北側ゴール裏席)の3、4階に、bengala(ベンガラ/発煙筒)の炎は出現せず。おかげで観客たちも前半16分のベイルの先制点で始まったゴール祭りを心行くまで楽しめたんですが、20分にマルセロが放ったシュートはヨドウォビエツに当たって入ったとして、レギアのオウンゴール扱いに。

▽おまけに22分にはダニーロがラドビッチをエリア内で倒し、PKを献上。当人がこれを決めて、一時は2-1に迫られたんですが、大丈夫。今度は37分、汚名返上とばかりに張り切ったダニーロからパスを受けたクリスチアーノ・ロナウドが自分では撃たず、2列目から駆けつけたアセンシオにボールを出したところ、これが見事に決まって3点目が入るんですから、ホント、このチームって、控えにしておくのが惜しい選手が多すぎなくない?

▽そして後半は後半で、ベンゼマとハメス・ロドリゲスとチェンジしたモラタ、ルーカス・バスケスのコンビが連携、22分には後者がゴールを挙げれば、36分にはまたロナウドのスルーパスからモラタが決め、最後は5-1の大勝ですからね。こんな日に限って、ヨーロッパの大会で100ゴールという節目にあと2本と迫っていたロナウドが得点できなかったのは、ちょっと皮肉ですが、レギアとは11月2日にもワルシャワで再戦。しかも最初のホームゲームでの発煙筒騒ぎが度を越して、無観客試合の処分を受けている会場での試合となるため、ゴールを決めた時の咆哮がよく響いて、TVもいいシーンが撮れるんじゃないでしょうか。

▽え、それでも格下のはずのレギアから再三、カウンターを喰らい、相手に決定力がないために救われていた面もマドリーにはあったんじゃないかって?そうですね、ジダン監督も試合後に「hemos arriesgado un poco/エモス・アリエスガードー・ウン・ポコ(ウチは少し危険を冒した)」と言っていましたが、中盤がクロース、ハメス、アセンシオというのは攻撃に特化しすぎていると言われても仕方ないかと。ただその分、「hemos creado muchísimas ocasiones/エモス・クレエアードー・ムチシマス・オカシオネス(沢山、チャンスを作った)」(ジダン監督)というのも事実なので、敵の力を勘案しながら、あまり出場機会をあげられない選手を使い、上司としての懐の広さを見せるのも人心掌握術の1つかも。

▽この結果、グループ2勝1分けとしたマドリーは次節で勝利、同時にドルトムントもスポルティングに勝ってくれれば、決勝トーナメント進出ができるところまで来ましたが、もちろんこの週末のアスレティック戦ではもっと慎重な布陣を取るのは火を見るよりも明らか。クロアチア代表の先輩、モドリッチがリハビリ中の間、代理を務めているコバチッチとベティス戦で2得点を挙げたイスコが先発に戻るようですが、とはいえ、どこまで用心が必要かは微妙かと。そう何せ、木曜にヨーロッパリーグの3節を戦ったアスレティックはゲンクに2-0で負けてグループ最下位に転落。おまけに頼りの35歳のエース、アドゥリスがその試合でケガをしてしまったみたいですし、他の選手たちも中2日でまたアウェイ戦では疲労が溜まっているかもしれませんしね。

▽よって、日曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からの一戦が再びマドリーのゴール祭りになる可能性も否定できませんが、対照的に先週末のグラナダ戦、7-1の大勝から、素早く堅実路線に戻ったのはアトレティコ。ええ、ロシア南西部とはいえ、やはり気温3度と寒かったロストフ・ナ・ドヌでは、スタメンをガメイロからフェルナンド・トーレスに代えただけであとはリピートしたにも関わらず、前半のうちは得点できません。いえ、チャンスは開始早々、カラスコのFKが弾かれたボールをゴール右前から撃ったコレアのシュートが惜しくも枠を外れてしまったりと、その2人を中心に何度かあったんですけどね。

▽その間、並行して進行していたカンプ・ノウでのバルサvsマンチェスター・シティ戦からはメッシの先制ゴールだの、ジョルディ・アルバやピケが負傷交代しただの、後半に入ってはシティのGKブラボがエリア外で手を使って退場といったアクシデンタルな報が入っていたんですが、ようやく専守防衛一方のロストフからアトレティコがゴールを奪えたのは後半16分のこと。ええ、3回に1度ぐらい、いいクロスを上げていたファンフランからのボールをトーレスはゴール前でミートできなかったんですけどね。左前に詰めていたカラスコが強烈なシュートを撃ち込み、とうとう先制点が入ったから、私もホッとしたの何のって。

▽うーん、前半には幾度か個人プレーが過ぎていた感もあった彼なんですけどね。シメオネ監督も「Yannick tiene un golpeo fantástico/ヤニク・ティエネ・ウン・ゴルペオ・ファンタスティコ(カラスコは素晴らしい蹴りを持っている)」と言っていた通り、とにかくシュートしなければ何も始まらない?その後は終盤、せっかくの彼からのvaselina(バセリーナ/ループパス)からグリースマンがヘッドしたボールもGKジャナエフにparadon(パラドン/スーパーセーブ)され、追加点は奪えずに試合は0-1で終了。実際、バルセロナではメッシがハットトリック達成しただの、マテューが2枚目のイエローカードを受け退場しただの、ネイマールがPKを失敗した後、得点しただのと、最後まで波乱万丈な展開だったようですが、いくら4-0でシティに大勝しても結果は同じ、全部1-0でも堂々3連勝のグループ首位で、次節には決勝トーナメント進出確定ができるかもしれないんですから、アトレティコも胸を張っていいですよね。

▽そして5時間のフライトを経て、マドリッドのバラハス空港には木曜午前8時に到着。その日は休養して、日曜にはセビージャを訪れる彼らなんですが、相手も火曜にアウェイでディナモ・ザクレブにナスリのゴールで0-1と勝利したばかり。うーん、前節のリーガではホームでレガネスが2点差を追いついて、いいところまで行きながら、サラビアに決勝点を決められて、涙を飲んでいるため、アトレティコには新弟分のリベンジをしてもらいたいところですけどね。やはり興味が持たれるのは古巣対決で、おそらく先発に戻るであろうガメイロは昨季までセビージャのエースでしたし、アトレティコからレンタル移籍中のビエットとクラネビテルはサンチェス・ピスファンでの出場制限条項がないため、プレーできるのだとか。

▽だからって、シメオネ監督がメッシからグアルディオラ監督へのような強烈な恩返しに遭うという可能性は少ないと思いますが、何せ今、セビージャは首位のアトレティコ、同じ勝ち点で2位のマドリーとたった1差の3位につけていますからね。清武弘嗣選手の出番が少ないのは残念ですが、今季はサン・パオリ監督の采配でEL4連覇ではなく、CLベスト16の方が近いチームに進化していますから、アトレティコも決して油断はできないかと。

▽そんなセビージャvsアトレティコ戦は日曜午後4時15分(日本時間午後11時15分)にキックオフ。コケのボランチ定着のおかげで最近、FW4人体制でスタートすることの多い彼らですが、果たして強敵の前でもリピートできるのかどうかも見物です。そうそう、レガネスはマドリッドの2強の試合の狭間、午後6時30分からマラガ戦になりますが、ホームでまだ勝てていない分、アウェイでの好調を維持してくれたらと思います。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

2016年10月22日(土)21:02

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