★ 【原ゆみこのマドリッド】決勝トーナメントは厳しい…

▽「こっちは諦めちゃったみたいね」そんな風に私が頷いていたのは金曜。ヨーロッパリーグ32強1stレグでローマに0-4と叩きのめされたビジャレルのエスクリバ監督のコメントを読んだ時のことでした。

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▽「こっちは諦めちゃったみたいね」そんな風に私が頷いていたのは金曜。ヨーロッパリーグ32強1stレグでローマに0-4と叩きのめされたビジャレルのエスクリバ監督のコメントを読んだ時のことでした。ヨーロッパの大会が再開した今週、一足先の火曜には同じスコアで大敗したスペイン勢もいるんですけどね。それでもバルサからは、「Creer y creer, siempre/クレエル・イ・クレエル、シエンプレ(常に信じて信じまくる)」なんて、CL16強2ndレグで奇跡のremontada(レモンターダ/逆転突破)を目指す言葉が、イニエスタのツイッターから聞こえてきたりしたものの、エスクリバ監督はもう週末のレアル・ソシエダ戦で立ち直るとしか言っていなかったから。

▽まあ、ELは来週木曜に早くも2ndレグがあるため、ちょっと事情が違いますけどね。PSGとの再戦が3月8日と、バルサには作戦を練る時間がたっぷりあるとはいえ、彼らの特技が永遠のライバル、レアル・マドリーと同じだという話はあまり聞かず。実際、お隣さんと違って、DNAにレモンターダ精神が刷り込まれていないアトレティコなど、バルサとのコパ・アメリア準決勝で1-2の負けを引っくり返そうとして、やっぱり叶わなかったことを鑑みれば、点差も遥かにあるため、難しいんじゃないかと思いますが、どうなることやら。

▽ただ、そのおかげでここしばらく、彼らがPSGのことばかりを考えてくれれば、この週末の日曜、リーガでカンプ・ノウに乗り込むマドリッドの新弟分のレガネスや、その次週、ビセンテ・カルデロンにバルサを迎えるアトレティコが助かるんじゃないかと…。その辺は私も都合良く、考えてしまうのも否めず。レアル・マドリーのセルヒオ・ラモスだって、「No me gusta ver sufrir a amigos, pero obviamente no me gusta que gane el Barca/ノー・メ・グスタ・ベル・スフリル・ア・アミーゴス、ペロ・オビアメンテ・ノー・メ・グスタ・ケ・ガネ・エル・バルサ(友達が苦しむのを見るのはイヤだけど、バルサが勝つのがイヤなのも当り前さ)」と言っていましたしね。バルサがCL早期敗退してくれることで助かるのはマドリッドの両雄、どちらも同じってことでしょうか。

▽それより今週はマドリーもCLナポリ戦に挑んだんだろうって? その通りで、水曜のサンティアゴ・ベルナベウでは試合前、スコアボードに前日のPSGvsバルサのハイライトを流して、アップする選手たちを景気づけをしていましたが、「マラドーナがロッカールームで30秒話してくれた」(サッリ監督)というようにどうやらチームのレジェンドが訪問したナポリの方が序盤の士気は高かったよう。だって、フォンド・スール(南側ゴール裏席)には巨大なモザイクも出現して、前人未到のCL2連覇への後押しをファンがしてくれたにも関わらず、開始7分にはインシーニェが放ったミドルシュートがあっさり決まってしまったんですよ。さすがにこれには先が思いやられてしまったものの…。

▽全然、大丈夫です! その10分後にはカルバハルのクロスをベンゼマがヘッドでゴールにして、マドリーはあっさり同点に追いつくことに。それから余裕を持って攻めることのできた彼らは前半こそ、その1点に留まりましたが、後半は49分にクリスチアーノ・ロナウドがエリア内右奥から入れたパスをクロースが決めて2点目をゲット。更に54分には、カゼミロが「Es una cosa que vengo entrenando mucho/エス・ウナ・コーサ・ケ・ベンゴ・エントレナンドー・ムーチョ(自分が沢山、練習してきていること)」を披露。ええ、ナポリの守備陣がエリア内からクリアしたボールを拾った彼が弾丸volea(ボレア/ボレーシュート)で撃ち込み、とうとう3点目を挙げてくれたのですから、もう安心ですって。

▽いえ、パルコ(貴賓席)でマラドーナが26歳の彼女と応援する中、ナポリも2ndレグに繋がる2点目のアウェイゴールを奪おうと懸命に戦ったんですけどね。Falso nueve(ファルソ・ヌエベ/仮のCF)を務めるメルテンスが絶好のシュート機会で外してしまい、里帰りとなったカジェホンも久々のベウナベウで勝手が違ったんでしょうかね。サッリ監督も最後は、今季からユベントスに行ってしまったイグアインの代わりに獲得しながら、負傷で長期離脱。この試合で復帰したミリクまで投入と、手は尽くしてみたんですが、「マドリーはここ3カ月で最高の試合をして、ウチは最低の試合をした」(サッリ監督)のが響いたか、追加点が入ることはありませんでしたっけ。

▽ただ、ジダン監督も「El 3-1 es un buen resultado pero no definitivo/エル・トレス・ウノ・エス・ウン・ブエン・レスルタードー・ペロ・ノー・デフェニテティボ(3-1というのはいい結果だが、決定的ではない)。勝負はまだ五分五分」と言っていたように、これでマドリーが準々決勝への切符を手に入れたと喜ぶのは時期尚早。何せ、3月7日の2ndレグでは「サン・パオロ(ナポリのホーム)は地獄と化すだろう」とサッリ監督も予告していましたしね。今回、半数以上はチケットを持っていないながら、計1万人がマドリッドに駆け付けたナポリファンの情熱を目の当たりにすると、きっとそうなんだろうと推測するのは難しくなし。

▽それだけにマドリーもしっかり準備しないといけませんが、そうそう、人口に比例してか、EL32強のアポエルを応援しに、キプロスからビルバオ(スペイン北部、アスレティックのホームタウン)にやって来た300人程の過激グループが、チームが3-2で負ける前に警官隊と衝突していたのとは違い、イタリア人サポーターが騒ぎを起こすことはなかったんですが、ダフ屋に偽造チケットをつかまされ、ゲートでのチェックで入れなかったファンが結構いたとか。

▽うーん、クラブが発売したナポリ戦のチケットはもうかなり前に売り切れていたんですけどね。せっかく来たのに見られないのは悔しく思ったイタリア人以外の観光客も騙されていたようで、どうすれば引っかからずに済むのか、私もアドバイスはできないんですが、被害者の証言によると、偽造チケットは70~100ユーロ(約8400~1万2000円)と相場より安め。あ、でも東洋人には160ユーロ(約2万円)で売り付けられていたので、あまり参考になりませんかね。

▽そしてもう土曜には次のエスパニョール戦が迫っているですが、マドリーにはとっておきの朗報があって、今週からずっと全体練習に参加していたベイルがとうとう招集リストに復帰したんですよ! ただ彼らには来週、水曜にクラブW杯参加のため、延期していたバレンシア戦も控えているため、ジダン監督はゼンゼマ、モドリッチ、そしてGKケイロル・ナバスを温存しますけどね。そのため、BBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)勢揃いとはならないんですが、木曜に屋根の修理もすっかり終わったバライドスでセルタがシャフタールに0-1で敗戦。EL32強で敗退する可能性も出てきただけに下手したら、2月初旬に延期された試合もミッドウィークに入る可能性もあり、そうなると3月の代表戦週間までマドリーはハードシュケジュールが続くかもしれませんからね。

▽おかげで、ナポリ戦で途中交代したラモスも腰の打撲だけで重症ではないものの、用心のため、お休みすることになり、代わりにアセンシオやマリアーノがベンチ入りすることに。加えて、ジダン監督は「Contra el Espanyol él va a jugar de inicio/コントラ・エスパニョール・エル・ヴァ・ア・フダール・デ・イニシオ(エスパニョール戦では彼が先発する)」と、このところ出番が減っていたモラタの起用を宣言。うーん、ベンゼマは得意のCL戦で面目躍如を果たしたものの、モラタもこのままベンチ生活が続くと、また別のチームに行ってしまうかもしれませんしね。とりあえず、2位のバルサとは勝ち点1差とはいえ、消化試合が2つ少ない状態で首位を維持している今は比較的、余裕があるため、ローテーションにはいいタイミングじゃないでしょうか。

▽一方、キケ・サンチェス・フローレス監督率いるエスパニョールでは、2週間前のマラガ戦で頭蓋骨にヒビが入り、休養していたピアッティがアーセナルのチェフのようなヘッドギアをつけて復活。同チームではエルナン・ペレスも鼻骨骨折でマスクをつけてプレーしているんですが、この2人が揃うと結構、怖いかも。あとはカシージャ、ディエゴ・ロペスの両GKが、それぞれ河岸を変えて対戦するのが楽しみだったりしますが、そんなマドリーvsエスパニョールは土曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)キックオフ。今度はナポリ戦ではアシスト役に徹していたロナウドのゴールも見られるといいですね。

▽それで、今年になって初めて試合のない1週間を過ごしたアトレティコは何をしていたんだって? 木曜の夜などには選手たちが集まって、前節のセルタ戦での逆転勝利から、盛り上がったムードを維持しようとしてか、決起ディナーなどを開いていたようですけどね。今週にはマハダオンダ(マドリッド近郊)での全体練習に戻ったGKオブラクやチアゴもまだ、ヒホン(スペイン北部のビーチリゾート都市)遠征のメンバーには入っていません。

▽同様に負傷中のゴディンやファンフアン、ガイタンも来週火曜のCLレバークーゼン戦を目指して、リハビリを続けていますが、困ったのはその大事な日に彼女との相互DV訴訟で出廷しなければならないリュカが日程変更を認めてもらえず、午前11時に裁判、午後3時過ぎの飛行機でドイツまで移動して、8時45分のキックオフに間に合わさないといけないこと。まあ、何事もなければ、この土曜午後1時(日本時間午後9時)からのスポルティング戦でプレーして、レバークーゼンではサビッチとヒメネスのコンビでCBを賄えば済みますけどね。これ以上、DFにケガ人が出るとシメオネ監督が困ることになるため、今週末は何事もなく終わってくれるのを祈るばかりかと。

▽そんな中、やっぱり時間がたっぷり取れるというのは良かったようで、彼らもとうとう金曜にはPK練習を実施。いえ、その日はたまたま、マドリッドは祝日で学校がお休みだったため、見学の子供たちでギャラリーが多かったというのを利用したみたいですけどね。今季はもらったPK9本中6本を失敗、クラブ通算でも445本中30%近い129本もゴールにできず、リーガ1の失敗率という、呪いのようなデータを聞けば、さすがのシメオネ監督だって、ちょっとは練習させなきゃと思っても不思議はない?

▽ちなみにその練習はPK戦形式でグリーズマン、フェルナンド・トーレス、ガメイロ、コケ、サウルが蹴り、今回は枠に当ててしまったのがガメイロだけ。あとは成功したそうですが、もしスポルティング戦でPKがあっても「Seguro que saldrá de los que ya patearon/セグロ・ケ・サルドラ・デ・ロス・ケ・ジャー・パテアロン(きっと今までに蹴った選手が蹴るだろう)」(シメオネ監督)とのことなので、あまり不安は晴れませんけどね。

▽個人的には丁度、今週は昨季のCL決勝でお隣さんに再び負けた後、後半にPKを失敗していたグリーズマンが「試合が終わって、負けたのは自分のせいだと思っていたら、シメオネ監督が来て、まったく反対だと言ってくれた。ボクはチームにとって重要な選手だから、心配しないで、また決勝に行けるように努力すべき時だってね」と話しているインタビューを読んだばかりだったので、そろそろ彼にリベンジを果たしてもらいたいと思いますが、さて。

▽加えて、アトレティコには先週、スポルティングに負けてしまった弟分の敵をとるという使命もありますしね。とりわけ今節、レガネスはバルサと分が悪いだけでなく、18位のスポルティングだけでなく、金曜には19位のグラナダもベティスに勝ってしまったため、降格圏にいる両チームとの差がたったの勝ち点2と厳しい状況になってしまったため、とにかくここは先輩が勝ってあげないと。ええ、それでなくても今は勝ち点4ある3位セビージャとの差も縮めないといけないアトレティコなので、私もいい結果を出せるように願うばかりです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

2017年2月18日(土)16:20

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