★【原ゆみこのマドリッド】同国勢対決がなかった…

Getty Images
▽「敵を討ってあげるって言ってもダメかしらね」。そんな風に私が呟いていたのは金曜日、お昼のCL準々決勝抽選でアトレティコの相手がレスターに決まったのを知った時のことでした。

記事全文

▽「敵を討ってあげるって言ってもダメかしらね」。そんな風に私が呟いていたのは金曜日、お昼のCL準々決勝抽選でアトレティコの相手がレスターに決まったのを知った時のことでした。いやあ、今週は16強対決2ndレグの残りが行われ、世間ではスペイン勢4チーム全勝ち抜け後のユーロクラシコやユーロマドリーダービーの予想で盛り上がっていたりもしたんですけどね。何と、火曜にレスターと対戦したセビージャが1stレグでは2-1で勝っていたにも関わらず、キングパワー・スタジアムで2-0と負け、敗退してしまったから、私も驚いたの何のって。

▽うーん、ヨーロッパリーグを昨季まで3連覇、泣く子も黙る大会史上最多の5回優勝を達成しているセビージャですが、やはりCLでは準々決勝進出をしたことがないという経験不足が祟ったんでしょうかね。ただ内容的には頼みの綱だったナスリが、1点さえ取れば延長に持ち込めるという状況だった後半26分、バーディの挑発に乗って2枚目のイエローカードをゲット。チームを10人にしてしまった上、ヨーロッパで指揮を執るのが今季初めてのサンパオリ監督までその10分後には退席処分になるという、悔しがって当然という事情もなきにしもあらず。

▽だったら、アトレティコが頑張ってレスターをCLの次ラウンドで倒す代わりに、この日曜のリーガ戦ではまだ勝ち点差も5あることですし、手加減してくれないかと思った次第ですが…いえ、やっぱりないですよね。何故なら、優勝の目がなくなったセビージャにとって、来季ヨーロッパの大舞台に戻ってリベンジを果たす道は4位以上のリーガフィニッシュオンリー。もちろんアトレティコの目標も同じですが、ここ3年で2度も大願成就直前で敗れているせいでしょうか。その辺はセレソ会長からして、「Toque quien toque, tenemos la misma ilusion, llegar a la final/トケ・キエン・トケ、テネモス・ラ・イルシオン、ジェガール・ア・ラ・フィナル(どこと当たったとしてもウチは同じ夢を持っている。決勝進出だ)」と至極控えめ。でもお、準優勝じゃ、CLグループリーグ出場特権ないですよ。

▽ただ、この水曜にアトレティコが戦ったレバークーゼンとの2ndレグを見れば、あまり大きなことも言えないのもわかるというもので、いえ、先週のPSGや同日のマンチェスター・シティのように相手にremontada(レモンターダ/逆転劇)を許すような過ちは、さすがにビセンテ・カルデロンを満員にしたファンの前では犯さなかったんですけどね。1stレグに2-4と過度な余裕で勝っていたため、選手たちのプレーに「Nos valia con cero a cero, no hemos ido al ataque como locos/ノス・バリア・コン・セロ・ア・セロ、ノー・エモス・イドー・アル・アタケ・コモ・ロコス(0-0で十分だったから、ウチは気が狂ったような攻撃には出なかった)」(グリースマン)という態度が反映されてしまっていても仕方なかったかも。

▽同様に3点を取っての逆転突破を目指さないといけなかったレバークーゼンもかなり達観していたのか、前半はグリースマンやコレア、コケのシュートがGKレノにセーブされていたぐらいで、ほとんど何も起こらないまま、両者無得点で終了。後半も同じような展開になるかと思いきや、22分にいきなり見せ場がやってきたんですよ! いえ、元はと言えば、ヒメネスが自陣エリア前で敵にボールを奪われてしまったのがいけないんですけどね。まあ、そこのところはその少し前に彼は接触プレーで鼻を打撲。骨折した状態でプレーしていたためについ、ミスッてしまったんだと楽観的に理解するしかありませんが、同僚の失態を有り余る好プレーで補ってくれたのはGKオブラク。

▽まずはエリア内正面から撃ってきたブラントの一撃を弾き、その跳ね返りを右側からフォラントが蹴ったボールも弾いた上、同選手の最後のトライも反転して肩でブロック。最後にチチャリートの左側からのシュートが外れてくれたのはラッキーでしたが、これだけの連続paradon(パラドン/スーパーセーブ)を見せられたら、アトレティコ歴代名GKのデ・ヘア(マンチェスター・ユナイテッド)やクルトゥワ(チェルシー)が来季、お隣さんに加入することになったって、まったく惜しむ必要はない? うーん、オブラクにも先日のデポルティボ戦ではうっかりゴールキックを近くの敵に蹴ってしまい、失点してしまったなんてポカがない訳ではないんですけどね。

▽その日は他に特筆すべきプレーもなかっため、レバークーゼンのタイフン監督は「彼だけでなく、アトレティコは何人もの選手がゴールをカバーしていて、ウチは隙間を見つけられなかった」と言っていたものの、2ndレグを無得点に抑えた彼が、必然的に4年連続のCL準々決勝進出の立役者になることに。まあ、終盤はカラスコを、こちらはリーガ前節のグラナダ戦で鼻骨骨折してマスクを装着しているCBサビッチに代え、「時間が経つにつれ、敵が試合への恐れを忘れてくるかもしれなかったから、ヒメンスをボランチにして、グリースマン1人を前線に残した」シメオネ監督ですからね。

▽その心は「Nos quedamos todos con la idea de que se podia tener la pelota para que el tiempo pasase/ノス・ケダモス・トードス・コン・ラ・イデア・デ・ケ・セ・ポディア・テネール・ラ・ペロータ・パラ・ケ・エル・ティエンポ・パサセ(ウチは全員、ボールを保持して、時間が経つのを待つという考えでまとまっていた)」となれば、試合が面白くならなかったのは仕方ない? そのままスコアレスドローで終わったんですが、何せここ2年間、16強対決ではPK戦の苦しみを味わっていたアトレティコですからね。あんなドキドキを再々体験することなく、準々決勝進出が決まったのにはきっとファンもホッとしていたかと。

▽ただ唯一、残念だったのはせっかく、頭部の打撲から回復。その日2週間半ぶりにベンチに復帰して、後半はずっとアップをしていたフェルナンド・トーレスを監督が使わず、交代枠も1人余らせてしまったことですが、まあ次は大事なリーガの天王山ですからね。スタンドが「Cholo sacalo!/チョロ・サカロ(シメオネ監督、彼を出せ)」と歌っていたのも結局、負傷者多発で駆り出されていた、実質戦力外のチェルチに対してのからかいだったようですし、トーレスには日曜午後4時15分(日本時間翌午前零時15分)からのセビージャ戦で、ビセンテ・カルデロンのサポーターを安心させてもらえばいいかと。そうそう、足の付け根を痛めてレバークーゼン戦を欠場したガメイロも木曜には全体練習に復帰。ガビも指は骨折しているものの、プレーに支障はないため、今度はベストメンバーで挑めそうですよ。

▽え、それよりCL準々決勝で大変なのはお隣さんじゃないかって? そうですね、4月は8日の土曜日にシーズン後半マドリーダービーがあるため、例年に倣って、今年はダービー祭りになるんじゃないかと、私も恐れていたんですが、ユベントスを引き当てたバルサ同様、レアル・マドリーもヨーロッパの老舗の強豪、バイエルンと顔を合わせることに。ええ、5年前の準決勝ではサンティアゴ・ベルナベウでの2ndレグでPK戦にもつれ込み、セルヒオ・ラモスが最後のキックを天高く打ち上げて敗退が決まったなんてイヤな思い出もある相手ですが、3年前の準決勝ではアリアンツ・アレナで当人の2発を含む0-4で大勝とリベンジもしているため、すでに選手たちの頭の中はいい方に書き換えられている?

▽ただ当時とは違いがあって、奇しくも最後の対戦でマドリーを率いていたアンチェロッティ監督が今ではバイエルンを指揮。それだけに当人も昨季の準決勝アトレティコ戦でマドリッドを訪れた時より数段、流暢になったドイツ語で、「Die Spiele gegen Real sind naturlich speziell fur mich/ディ・シュピーレ・ゲーゲン・レアル・ジンド・ナトゥーリッヒ・シュペツィエル・フュア・ミッヒ(マドリー戦は自分にとってもちろん特別な試合だ」と話していましたが、3年前は彼のアシスタントだったジダン監督もその思いは一緒だったよう。「Sera especial enfrentarme a el, aprendi mucho a su lado/セラ・エスペシアル・エンフレンタールメ・ア・エル、アプレンディ・ムーチョ・ア・ス・ラドー(彼と対戦するのは特別だね。彼の横で自分は沢山、学んだよ)」と言っていましたが、この師弟対決、果たしてどちらに軍配が挙がるのでしょうか。

▽まあ、因縁と言えば、ロッベンやシャビ・アロンソは元マドリーですし、逆にクロースはバイエルン出身とか、イロイロ出て来るんですが、試合があるのはアトレティコvsレスター戦と同じ、4月12日、18日ですので、その辺はおいおいと。うーん、前後をダービーとクラシコで挟まれているだけに、ビッグゲームが続いて、選手たちにはキツそうですけどね。となると、この土曜午後4時15分、EL32強対決でアポエルを前に敗退し、今週は試合がなくて体力満々。更にエースのアドゥリスも復活したアスレティクとのリーガ戦では何としても勝って、現在2位のバルサと勝ち点差2、未消化分のセルタ戦を楽観的に勘定に入れれば、5差となるアドバンテージをキープしておかないといけないかと。

▽ちなみにこのサン・マメス(アスレティックのホーム)での一戦では、ここ2試合出場停止だったベイルが復帰。いえ、最近はBBC(ベイル、ベンゼマ、クリスチアーノ・ロナウドの頭文字)が揃い踏みすることに異論もなきにしもあらずなんですが、この節が終わると代表戦週間に入りますしね。ウェールズ代表に行くベイルも足慣らしが必要でしょうし、フランス・サッカー協会会長から招集OKの弁を得ても、デシャン監督に呼ばれなかったベンゼマは前節ベティス戦では途中出場だったので、運動不足を解消しておかないと。ロナウドはまあ、いつも通りですが、まだ新しくなったサン・マメスではゴールを挙げていないだけに、モチベーションには事欠かないはずです。

▽そしてマドリッドの新弟分、レガネスは日曜正午からブタルケに1つ上の16位にいるマラガを迎え、再び残留に向けての戦いを再開するんですが、彼らもparon(パロン/中断期間)後はレアル・ソシエダ、マドリーと強敵が続きますからね。前節、セビージャを引き分けた心意気を保てれば、勝ち点2差のデポルティボを抜いて、15位という高みで2週間過ごせるんじゃないかと思いますが、さて。ちなみにそのデポルティボと日曜に当たるセルタは木曜に無事、EL16強対決クラスノダール戦2ndレグに0-2で勝って、総合スコア4-1で準々決勝進出が決定。こちらは4月にベルギーのヘンクと当たることになりました。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

2017年3月18日(土)11:30

mixiチェック
LINEで送る
【関連ニュース】
兄貴分チームはまだ頑張らないといけない…/原ゆみこのマドリッド
朗報の方が多い週末だったけど…/原ゆみこのマドリッド
CL全滅は免れたけど…/原ゆみこのマドリッド
もっとCLが続いてほしい…/原ゆみこのマドリッド
まだ突破できるかはわからない…/原ゆみこのマドリッド
戻る
(C) SEESAW GAME, Inc.