★特徴を出した谷口&板倉のCBコンビ、経験値を補った“フロンターレ”の力/日本代表コラム

Getty Images
「試合が終わった時に勝ち点3が取れればそれでいいと思って試合に臨みました」と語ったのは、日本代表DF板倉滉(シャルケ)。27日に行われた中国代表とのカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を終え、最初に出てきた言葉だ。

記事全文

「試合が終わった時に勝ち点3が取れればそれでいいと思って試合に臨みました」と語ったのは、日本代表DF板倉滉(シャルケ)。27日に行われた中国代表とのカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を終え、最初に出てきた言葉だ。

27日がバースデーだった板倉。そして、不測の事態もあり、W杯最終予選に出場するチャンスが舞い込んできた。

今回の2試合は中国代表とサウジアラビア代表とホームでの連戦。W杯出場に向け、ここでも2連勝が求められる戦いとなる。

しかし、守備の要であるキャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)が負傷により不参加。さらに招集されていたDF冨安健洋(アーセナル)が回復したケガが再び悪化し、招集を辞退した。

最終予選を支え続けた2人のCBを欠くという異例の事態。これまでの日本代表を見ても、このような事態はほとんどなかったはずだ。

今回の最終予選は、6試合を消化。そのうち吉田が6試合、冨安が5試合に出場。残りは、植田直通(ニーム)が初戦のオマーン戦に先発しただけだった。

◆物おじせずに特徴を発揮した両CB

Getty Images

谷口彰悟は、2次予選でもタジキスタン代表戦で途中出場したのみ。板倉も2次予選のミャンマー代表戦でフル出場して以来となる。最終予選はもちろん初めてだった。見るものが不安視するのは致し方ないと言えるだろう。

もちろん、谷口にしても板倉にしてもその能力に疑いはない。Jリーグで今最も強い川崎フロンターレの守備の要である谷口、昨シーズンはフローニンヘンでCBのレギュラーを掴み、今シーズンはシャルケへ移籍してもCBのレギュラーである板倉と経験は十分だ。

ただ、日本代表としての経験は少なく、W杯予選の経験もほとんどない。普段とは違う舞台で、国を背負って戦うというプレッシャーで、どこまで力を出せるのかは、未知数だった。

ともに招集は受けていたが、起用されて来なかったのも事実。最終予選ではその余裕を失ったとも言えるが、2次予選でも両者は経験を積むことができなかった。

そんな中、互いに初出場となった最終予選。谷口と板倉はそれぞれの特徴を発揮した。谷口は対人守備の落ち着いた対応に加え、ビルドアップの部分で特徴を遺憾無く発揮。長いボールや縦パス、ドリブルでの持ち出しなど、違いを見せた。板倉も空中戦の強さは抜群で、判断も間違えることなく、安定したパフォーマンスだったと言えるだろう。

森保一監督も「2人とも試合の入りから落ち着いてましたし、ビルドアップの面でもディフェンスの面でも、チームをコントロールしながら、個々の曲面で相手を上回る、巧さと強さを見せてくれました」と2人を評価した。

昨年11月には海外組がチャーター機の遅れで到着が遅れるという緊急事態に。しかし、森保監督は、国内組ではなく海外組をいつも通り起用した。もちろん結果として勝利を収め2連勝を果たしたわけだが、メンバーの固定化がより進んだ印象を受けた。

しかし、今回はそうもいかなかった。そもそもチームに合流できないという事態に見舞われ、結果として経験の浅い2人をピッチに送り出すこととなった。もちろん、クラブレベルでの実績はあるが代表とは違うもの。プレッシャーも違う。見るものを不安に陥れたのは、これまでの采配だったと言えるだろう。

ただ、今回の中国戦を受け、競争が生まれる可能性もある。谷口は「普段出ている選手がいない中でもきちんと仕事をすることが大事で、新たな競争が生まれることも大事」と語った。選択肢としてしっかりと計算できるということをまずは証明した。もちろん、次のサウジアラビア戦が大事になってくるが、危なげないプレーを見せられたことは大きな財産だと言える。

◆ついに訪れた“フロンターレ”のイズム

Getty Images

そしてこの試合で気になったのはこの2人を含め、川崎フロンターレ勢がピッチに多く立っていたということだ。

谷口は言わずもがな、川崎Fのキャプテンであり、長年センターバックとして活躍。川崎Fの4度のj1優勝やYBCルヴァンカップ、天皇杯と全てのタイトルを獲得するのに貢献している。

板倉も川崎FのU-12チームの1期生。谷口がルーキーとして入団した2014年に2種登録されると、2015年から2017年までは出場機会こそ少なかったが、谷口とともにプレーした。

2人の起用について森保監督は「一つのボールの動きや状況に対して、お互いのイメージが合ってるなというところを感じた」と試合後に口にしていたが、当然のことだと言えるだろう。

板倉も谷口も、互いのやりやすさは試合前にも口にしていた。お互いを知っているだけに、初出場であった最終予選で落ち着いてプレーできたとも言える。

そして中盤にも2人を知る選手がいたことが大きいと言える。それが守田英正(サンタ・クララ)と田中碧(デュッセルドルフ)だ。
Getty Images

守田は流通経済大学から2018年に川崎Fへと入団。レギュラーとして3年間プレーし、2度のリーグ優勝やルヴァンカップ、天皇杯とタイトル獲得に貢献。アンカーとしてチームを支え、谷口の前でプレーをし続けていた。

一方の田中は2007年に川崎FのU-12に入団。学年が2つ違うが、板倉とは下部組織時代から知った中。東京オリンピックにも共に出場を果たした。もちろん、谷口のことも知っており、守田のことも知っている。

川崎Fのサッカーを知る4人が同時にピッチに立ち、互いの特徴やイメージを共有することは簡単だっただろう。チームと代表のサッカーは違っても、個々のプレースタイルが大きく変化することはない。

実際に、谷口から守田や田中に何度もパスは入っていた。チームとしてスムーズにボールを運べていた部分は、同じチームでサッカーを続けてきたということから来る自信もあったと推測する。

守田の気の利いたポジショニングは、後方からのビルドアップへの信頼があったからだろう。遠藤航を含めて守備が下がりすぎなかったのも呼吸があっていたからだろう。もちろん改善の余地はまだまだあるが、最終予選デビューということを考えれば素晴らしい出来だったと言える。

◆大一番も乗り切れるか

Getty Images

30歳で初のW杯最終予選を経験した谷口、実績を残しながらも出番がなくチャンスを掴んだ板倉と、2人とも違う道を歩んで、同じピッチに立った。ただ、本番は2月1日のサウジアラビア戦だ。

谷口は「次のサウジ戦が大一番で、しっかり勝ち点3を取らないといけない。次こそもっと良いプレーをしないと勝てない相手なので、より戦えることを証明しなければいけない」と意気込みを語った。板倉も「間違いなく今日とは違ったゲームになる」と警戒した。

当然、植田、そして中谷進之介(名古屋グランパス)も出番を窺っているだろう。こうして競争が生まれ、それぞれのレベルが上がっていくことも大事だ。

そして、今の日本代表ではそれぞれがチームのコンセプトを理解し、自身の役割をしっかりと務めている印象がある。“和”を重んじているチームだけに、対応力とバリエーションが増えることで、一気に強さを手にすることだって可能だ。

間違いなく中国よりサウジアラビアは強い。無敗で首位に立ち、実際に日本はアウェイで負けている。ただ、寒暖差もあり、時差もある中で長距離を移動して日本にやってくるため、コンディション面ではアドバンテージがあることも事実だ。

再び埼玉スタジアム2002でファンの前でプレーできる日本代表。サウジアラビアに対してどのようなサッカーを準備し、どのメンバーがピッチに立つのか。“結果”を手にするための最善のメンバーが最高の状態でピッチに立つことを期待したい。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》

2022年1月28日(金)21:25

mixiチェック
LINEで送る
【関連ニュース】
アウェイで完勝、サウジアラビア戦総括/六川亨の日本サッカー見聞録
日本代表、オーストラリア代表戦の地上波テレビ放送、ネット配信の予定は? キックオフ時間、無料視聴方法を紹介
選手採点&寸評:サウジアラビア代表 0-2 日本代表【2026W杯アジア最終予選】
日本代表のスタメン発表!両ウイングバックは堂安律&三笘薫…初招集の大橋祐紀はベンチ入り【2026W杯アジア最終予選】
【日本代表プレビュー】最終予選最初の山場、盤石のメンバーでサウジとのアウェイ戦初勝利なるか?/vsサウジアラビア代表【2026W杯アジア最終予選】
戻る
© livedoor