★【原ゆみこのマドリッド】避けては通れない…

▽「どっちが良かったとは言えないのだけど」そんな風に私が複雑な心境に陥っていたのは金曜日、CL準決勝の抽選会であっさりレアル・マドリーとアトレティコの対戦が決まった時のことでした。いえ、もう残りはたったの4チームですから、たとえここでヨーロッパ・マドリーダービーを免れても、その先でまたお隣さんと戦う可能性はかなり高し。

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▽「どっちが良かったとは言えないのだけど」そんな風に私が複雑な心境に陥っていたのは金曜日、CL準決勝の抽選会であっさりレアル・マドリーとアトレティコの対戦が決まった時のことでした。いえ、もう残りはたったの4チームですから、たとえここでヨーロッパ・マドリーダービーを免れても、その先でまたお隣さんと戦う可能性はかなり高し。それこそ今年はカーディフで開かれる決勝で3度目の正直とならなかったら、いくらカンテラ(ユース組織)育ちのフェルナンド・トーレスなどは「ウチのクラブは小さい時から、決して後悔しないということを教えてくれる。Nos caemos, nos levantamos y volvemos a buscar otra oportunidad/ノス・カエモス、ノス・レバンタモス・イ・ボルベオス・ア・ブスカル・オトラ・オポルトゥニダッド(転んでも起き上がる、そしてまた次のチャンスを探すんだってね)」と言っていたものの、とてもじゃないけどアトレティコファンは立ち上がれないかも。

▽だからって、ida(イダ/1stレグ)とvuelta(ブエルタ/2ndレグ)の2試合ある準決勝で当たった方がマシなのかと言えば、そうでもなく、実際、2015年の準々決勝ダービーは、先日、アトレティコが16強対決で倒したレバークーゼンに今はいるチチャリートのゴールが唯一の得点となって敗退。いえ、14年間続いた暗黒の「何をやってもマドリーには勝てない」時代が終わり、ここ近年はリーガやコパ・デル・レイでは破ったこともあるんですけどね。シメオネ監督も「CLに優勝するためにはただ1つの道しかない。Insisitir, insistir, insistir y seguir insistiendo/インシスティール、イ・セギール・インシスティエンドー(強く求めて、求め続ける)」と力説していましたが、最近、更に憂鬱にさせてくれるのは、準決勝だって、PK戦にもつれ込むケースを考えないといけないということ。

▽ええ、レスター・シティから早朝に戻って来た水曜にはトーレスと一緒にアディダスのイベントに出演。ミニゴールへのPKをカンテラーノの先輩が枠に当てて失敗した後、リベンジどころか、自身は素人少年のGKに止められてしまう有様でありながら、コケなど「No estamos teniendo mucha suerte. Ya entraran/ノー・エスタモス・テニエンドー・ムーチャ・スエルテ。ジャーエントララン(ボクらはあまりツイてないね。そのうち入るさ)」と、まったくわびれる風もありませんでしたしね。一応、「もしマドリーに当たったら、ウチには2回の決勝の経験があるから、勝てなかった原因をよく考えて、できるだけいい方法で立ち向かうよ」とは言ってはいたものの、何かやっぱり、とても大船に乗った気にはなれませんよね。

▽まあ、そんなことはともかく、今週のマドリッドの両雄のCL準々決勝2ndレグがどうだったかをお伝えしておかないと。いやあ、その試合があった火曜は午後7時にサンティアゴ・ベルナベウ周辺に集合、チームバスのお迎えをしてくれるようにと、セルヒオ・ラモスがSNSを使って呼びかけたと前日に聞いた時には、1stレグでは1-2と勝って、アウェイゴールも2本もあるというのにちょっと大袈裟じゃないかと思ったものでしたけどね。

▽結果としてはCL決勝トーナメントでは恒例のfondo sur(フォンド・スール/南側ゴール裏席)を覆いつくす巨大なモザイクと共に、そうやってファンに応援してもらえたのが、効いたっていうのもあったんでしょうか。実際のところ、キックオフ前など、先週の1stレグとは違い、運悪くも近くで裏カードの放送をパソコンで見ている記者もいなかったため、私など、たった1-0のリードでキングパワー・スタジアムに乗り込んだアトレティコが、レスターの青と白の旗で埋め尽くされたスタンドに圧倒されているんじゃないかと、序盤など心ここにあらずだったんですけどね。

▽朗報はまず、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の二元中継から届きました。そう、前半25分、フィリペ・ルイスのクロスをサウルがヘッドで決めて、アトレティコが先制したというから、どんなに安心できたことか。それでようやく、バイエルンがガンガン、攻めてきている目の前のマドリーに意識が行ったんですが、前半はGKケイロル・ナバスがそれ程、脅かされることもなく、マドリーもラモスのシュートがボアテングにライン上でクリアされるなど、両チーム共、無得点で終了。そのまま0-0ならば、試合として面白くはないけど、私がマドリッドに来た頃には毎年3月の16強対決で終わっていた彼らなのに、もう準決勝進出も7年連続になるんだなあと、感慨深く思っていたところ…。

▽いえいえ、とんでもない!転じて後半は目まぐるしい展開となり、早くも7分にはカセミロがロッベンをエリア内で倒してしまい、バイエルンがPKをゲット。うーん、これが、エースがピッチにいるといないのとの違いでしょうかね。1stレグでは肩の負傷でレバンドフスキがスタンド見学していたため、カルバハルの疑惑のハンドで得たPKをアルトゥーロ・ビダルが蹴り、失敗していたバイエルンでしたが、この日は、アトレティコのPKシーンではついぞ感じたことのない自信をポーランド人の大型ストライカーは放出。難なくボールをネットに収め、バイエルンが1点を挙げます。とはいえ、もちろんこれでもアウェイゴールがあるため、マドリーの勝ち抜けになるんですが、そんなつまらない結果では決して満足しない選手が約1名。

▽それはクリスチアーノ・ロナウドで、後で当人も「Lo unico que pido al Bernabeu es que no me silbe/ロ・ウニコ・ケ・ピド・アル・ベルナベウ・エス・ケ・ノー・メ・シルベ(ただ1つ、ベルナベウのファンに頼むのはボクをブーイングしないでくれということ)。自分は全ての試合で常に最高のパフォーマンスを見せようとしている」と言っていましたが、パスなどでミスした折にスタンドからpito(ピト/ブーイング)が数回、聞こえてきたことがよっぽど、気に入らなったんでしょうね。バイエルンはリベリをドグラス・コスタに代え、古巣のサポーターからのオベーションを味わう間もなく、シャビ・アロンソも急ぎ足でミュラーと交代、勝利へのあと1点を求めて総攻撃体制に入っていた30分、カセミロのクロスをヘッドで決め、この試合の同点ゴールを挙げてしまったから、場内がどんなに沸いたことか。

▽ただしこの喜びはあまり長く続きません。というのもその2分後、マドリーのエリア内に入ったボールがミュラーとレバドフスキに当たり、更にラモスに当たってゴールを割ってしまったから、驚いたの何のって!実はリプレーを見ると、この時、レバドフスキがオフサイドの位置にいたため、この1点はスコアボードに挙がるべきじゃなかったんですけどね。今のCLにはVAR(ビデオ審判)が導入されていないため、この2点目で少なくともバイエルンは延長戦に入る権利を獲得。実際、後半ロスタイムにお馴染みのラモスの救世主ヘッドが炸裂することもなく、試合は120分の勝負になったんですが…。

▽いやあ、その頃の自分は再びラジオに耳を澄ましていて、何せ後半10分にはファンフランが太ももを痛めてルカスに代わり、ポジションチェンジに右往左往しているうちにレスターのバーディが得点。それ以降もハーフで岡崎慎司選手と交代で入ったウジョアを始め、敵が「han metido gente grande para los centros/アン・メティードー・ヘンテ・グランデ・パラ・ロス・セントロス(クロスを生かすために大きな選手を入れてきた)」(コケ)ため、気が気ではなかったんですけどね。ええ、16強対決2ndレグでセビージャが逆転された記憶もありますし、「En la segunda parte ellos han jugado como siempre juegan, al balon largo/エン・ラ・セグンダ・パルテ・エジョス・アン・フガードー・コモ・シエンプレ・フエガン、アル・バロン・ラルゴ(後半、彼らは普段のプレーをしてきた。ロングボールを放り込むというね)」(サウル)状態ではいつ、また失点するかわかったもんじゃありませんって。

▽おまけに29分には右SBに続いて、左SBのフィリペ・ルイスまで手を踏まれ、指を骨折して交代に。シメオネ監督も「Es central, y lo seguira siendo/エス・セントラル、イ・ロ・セギラ・シエンドー(彼はCB、そしてそうあり続けるだろう)」と言うものの、その日はボランチで空中戦に奮闘していたヒメネスを最終ラインに戻すなど、またCB4人で守っているって、そんなにレスターの攻勢は激しかった?それでもアトレティコは1-1のまま、規定の時間で終了して、総合スコアでは2-1と、ここ4年で3度目の準決勝進出を確定。お手柄のサウルも「parece que estabamos jugando en casa con el apoyo de nuestra gente/パレセ・ケ・エスタバオス・フガンドー・エン・カサ・コン・エル・アポジョ・デ・ヌエストラ・ヘンテ(ウチのファンの応援で、ボクらはまるでホームでプレーしているみたいだったよ)」と言っていたように、ロンドンから100キロ程離れたレスターまで、1600人の熱いサポーターが遥々応援に行った甲斐はあったようですねね。

▽その後は私もマドリーの延長戦に集中できるようになったんですが、実は後半38分にビダルが2枚目のイエローカードを出され、そこからバイエルンは10人でプレーしていたんですよ。そこからして、もう結果は見えていましたが、ただ延長前半14分にラモスのパスからロナウドが決めた自身2点目や後半3分のカウンター、マルセロからのボールをもらってのハットトリック達成、CL個人最多の100得点目となったゴールはどちらもオフサイドって、そんな上手い話があっていい?さすがに途中出場したアセンシオがその3分後に独走、敵DFをかわして挙げた4点目は真っ当だったようですけどね。これでは後で、あの温厚なアンチェロッティ監督が「En cuartos de final de la Champions hay que poner arbitros de mas calidad/エン・クアルトス・デ・フィナル・デ・ラ・チャンピオンズ・アイ・ケ・ポネール・アルビトロス・デ・マス・カリダッド(CL準々決勝にはもっと質の高い審判をよこさないといけない)」とカンカンだったのも無理はないかと。

▽うーん、だからって4-2で試合が終わり、総合スコア6-3でマドリーの突破が決まった後、ビダルとチアゴ・アルカンタラ、レバンドフスキまでが審判控室に抗議に行って、警官が来るまでの騒ぎになったというのもあまり感心しませんけどね。マドリー側に言わせると、「El segundo de ellos tambien esta en fuera de juego/エル・セグンド・デ・エジョス・タンビエン・エスタ・エン・フエラ・デ・フエゴ(彼らの2点目もオフサイドだった)」(ジダン監督)ですし、「Alli les pitaron un penalti que no era/アジー・レス・ピタロン・ウン・ペナルティ・ケ・ノー・エラ(あっちじゃ、ペナルティじゃないのにPKをとられた)」と、1週間前の恨みを忘れていないイスコのような選手もいるため、これはこれで仕方ないんじゃないでしょうか。

▽そして翌日は、PSG戦に続いて2度目の奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)はさすがに荷が勝ち過ぎましたかね。ユベントスとカンプ・ノウで0-0と引き分けて、総合スコア0-3でバルサの敗退が決定。並行して行われたモナvsドルトムント戦ではムバッペに続き、アトレティコ時代のゴール嗅覚を取り戻したファルカオも得点し、前者が2連勝でベスト4に入りました。ええ、こちらが準決勝のもう1つの対戦ですが…。

▽なんて話をしているうちに週末が来て、またリーガ戦なんですよ。33節のマドリッド勢の予定は土曜にレガネスがビジャレアルにアウェイで挑んだ後、午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)から、アトレティコが前節、試合終了間際にレオ・バチストンが挙げたゴールで新弟分を破ったエスパニョールとあいまみえます。うーん、レスター戦の後遺症で、フィリペ・ルイスは手にプロテクターをはめてプレーすればいいだけなんですが、問題は太ももを痛め、全治3週間となってしまったファンフランの代役。何せ、ヒザの靭帯を部分断裂したブルサリコもまだリハビリ中ですしね。

▽シメオネ監督も心を決めかねていたか、「」tres atras, Savic a la derecha, Koke como lateral, Gimenez.../トレス・アトラス、サビッチ・ア・ラ・デレッチャ、コケ・コモ・ラテラル、ヒメネス(CB3人制とか、サビッチが右とか、コケがSBやるとか、ヒメネスでも)」と、前日記者会見では適当なことを言っていましたけどね。健脚自慢はいいんですが、とうとうレスター戦では今季CLで通算素行距離ダントツ1位に120キロのコケが、2位にはFWなのに111キロも走ったグリースマンが入ってしまうなど、選手たちの疲労も心配ですしね。4位セビージャが金曜にグラナダに勝って、勝ち点で並んできているため、このビジャレアル、ラス・パルマス戦と続く、リーガの3連戦も疎かにはできないとなると、さて。

▽そして日曜には世界中のサッカーファンが楽しみにしているクラシコ(伝統の一戦、マドリーvsバルサ戦のこと)がやはり、午後8時45分からあるんですが、まだ先が読めないのはこれが3試合の出場停止の2試合目となるはずのネイマールがプレーできるのかどうか。うーん、CL敗退して、コパの決勝は残っていますが、ビッグタイトルを獲るにはリーガに懸けるしかなくなったせいか、バルサの法務部があざとく、金曜午前中のTAD(スポーツ調停法廷)が終わった後、上訴委員会の処分に異議を申し立てる書類を送付。調停員たちが土曜に臨時会合を持つのをイヤがるのを逆手にとって、それが裁かれるまで選手には出場する権利が法的にあると主張しているようですが、そんな無茶苦茶な話、あっていい?

▽まさに藁にもすがる気分なんでしょうが、2nレグでは一矢も報えずユーベに敗退した直後だけに、イニエスタでさえ、「De los Clasicos me quedo con el 2-6 o el 5-0/デ・ロス・クラシコス・メ・ケド・コン・エル・ドス・セイス・オ・シンコ・セロ(クラシコでは2-6のか、5-0の試合がいい思い出だね)」と過去の大勝の記憶に慰めを求めないと、元気が出ないようですからね。もちろんピケを始め、メッシやルイス・スアレスは意地を見せるでしょうが、メンタル的には今回、マドリーがかなり優勢なようです。

▽そのジダン監督のチームでもギリギリまでベンチに入れるかわからないのが、ふくらはぎの軽度の故障が意外と長引いているベイルで、ただこのチーム、ローテーションしても全然、強いですからね。ロナウドも来週のデポルティボ、バレンシア戦、どちらかではCL準決勝を見据えて、お休みをもらうかもしれませんが、ここで2位バルサを叩けば、未消化試合も1つあって、リーガ優勝がかなり近づくこの一戦は欠かす訳にはいきませんって。それでも今季前半のクラシコでは、お馴染み土壇場のラモスのゴールで1-1と引き分けているだけに、油断は禁物。バイエルン戦に続いて、盛り上がること間違いないサンティアゴ・ベルナベウのファンを喜ばせる好ゲームになってくれるといいですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

2017年4月22日(土)10:15

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